広がる出戻り社員の受け入れ 優秀な人材の獲得手段となるか
パナソニックは、日本マイクロソフトなどの社長を務めた樋口泰行氏(59)を代表取締役に招く人事を発表した。6月29日付で取締役に就任し、新体制が本格的に始動する予定。
樋口氏は1980年に松下電器産業(現パナソニック)に入社したOB社員だ。退職後はコンサル会社などを経たのち、2003年に45歳の若さで日本ヒューレット・パッカードの社長に抜擢。ダイエー社長として経営再建にも携わり、2008年には日本マイクロソフト社長に就任。現在は同社会長を務めている。
パナソニックのように経営幹部として古巣へ戻るケースはまだ少ないが、一度退職した社員の再雇用を受け入れる企業が増えつつある。エン・ジャパンが2015年に発表した「出戻り社員(再雇用)」についてのアンケート調査では、72%もの企業が「出戻り社員(再雇用)の受け入れを行ったことがある」と回答した。
以前在籍していた社員には即戦力としての活躍が期待できるほか、その社員の人となりがわかっているため安心でき、会社風土にもなじみやすい。メリットの多い優秀な出戻り社員(再雇用)の受け入れを促進するため、独自の制度を設ける企業も増えている。
ワークスアプリケーションズでは退職する社員に「カムバック・パス」という認定書を渡し、退社後3年以内であれば再入社を認めている。同様にサイバーエージェントでは、退職する優秀な社員を対象に、会社に戻ってくる場合の待遇を2年間保証する「ウェルカムバックレター制度」を導入している。「育自分休暇制度」を導入しているサイボウズでは、転職や留学等、環境を変えて自分を成長させるために退職する社員を対象に最長6年間の復帰を認めている。
制度導入によって、退職した優秀な社員の再雇用が期待できる一方、全ての社員に出戻りを認めれば継続して在籍する社員の不満にもつながりかねない。出戻りを認める基準をどう設定するかなど、導入企業ならではの課題もあるようだ。優秀な人材獲得の手段として、一度退職した社員の再雇用はさらに広く受け入れられるのか、今後の動向が注目される。
『日本の人事部』編集部