日本の景況感に回復の兆し。米国、中国、日本の景況感が改善する中、英国は低下傾向が止まらず~第29回「中堅企業経営者『景況感』意識調査」(世界36ヵ国同時調査):太陽グラントソントン
太陽グラントソントンは、2016年11月に実施した非上場企業を中心とする中堅企業経営者の意識調査の結果を公表した(従業員数100人~750人)。この調査は、グラントソントン加盟主要36ヵ国が実施する世界同時調査の一環である。
・日本の景況感はDI -45と小幅ながら改善を示す。
・世界36ヵ国の平均の景況感はDI 38とやや上向く。
・米国の景況感が前期比10ポイント増のDI 54と改善に転じる。
・英国の景況感はDI 26となり、前期比-14、前年同期比では-47ポイントの悪化。
<結果抜粋>
■日本の景況感に回復の兆し
世界36ヵ国の中堅企業経営者に対して行った、自国経済の今後一年の見通しに関する2016年第4四半期(調査実施期間2016年11月、以下今回)の調査において、日本の景況感DIが小幅ながら改善していることが明らかになった。日本の景況感は、2016年第2四半期に大幅に悪化しDI -51となっていたが、今回はDI -45となり、依然としてマイナスの値ではあるものの、前期比では6ポイント増となり、景況感に回復の兆しが見られた。
■米国、中国、日本の景況感が改善する中、英国は低下傾向が止まらず。
世界36ヵ国の平均の景況感DIは、前期比6ポイント増のDI 38となった。
主要国の景況感を見ると、中国は2015年第3四半期から緩やかな上昇が続き、今回は前期比2ポイント増となるDI 46、米国も前期比10ポイント増のDI 54となった。一方、英国は今回大幅に低下し、前期比-14ポイント減となるDI 26となり、2015年第4四半期からの低下傾向が明確に現れる結果となった。
<調査実施期間>(インターナショナル)
2016年第4四半期:2016年11月(36ヵ国)
2016年第3四半期:2016年 8月(36ヵ国)
2015年第4四半期:2015年 11月(36ヵ国)
■日本における動向:
日本経済の見通しについては依然として厳しい見かたが多いが、日本の景況感DIは前期より6ポイント改善しており、背景として東京オリンピックの開催やインバウンド消費への期待がうかがえる。
また、悲観的にとらえている理由として、「人材不足」や「内需減少」など日本の少子高齢化に関連する項目は継続的に多く挙げられている。また「世界経済の影響」を理由に上げている割合も近年増加の傾向が見られる。
<外国人従業員>
自社の外国人従業員に関して、今後の外国人の従業員採用計画ついて尋ねたところ、もっとも回答が多かったのは「採用計画はない」で、54%と過半数を超えた。一方、「正社員の採用計画がある」は12.5%にとどまり、「わからない」を除いた正社員、派遣、アルバイトのいずれかの採用計画があるとした回答の合計でも27.2%にとどまった。
また「正社員の採用計画がある」とした回答の中で、どのような職種の採用を検討しているかを尋ねたところ、もっとも多かったのは「技術職」で53.5%に達し、専門的な分野での採用計画が高いことが分かった。
同様に「正社員の採用計画がある」とした回答の中で、どのような役職の採用を検討しているかを尋ねたところ、もっとも多かったのは「一般職」で82.1%、次いで管理職が25.6%となった。
※外国人従業員の調査のみ、2016年第2四半期から同年第4四半期の3期分の集計データに基づく。
第29回「中堅企業経営者の意識調査」コメント
太陽グラントソントン広報担当パートナー 美谷 昇一郎
今回の2016年第4四半期調査(2016年11月)では、対象36ヵ国の今後1年の景況感見通しが前回(2016年第2四半期)から6ポイント上昇してDI38となった。
今回の調査結果では、日本の景況感DIは-45となり、依然マイナスではあるものの、前回と比べて回復の兆しが見られた。他国の調査結果を見ると、経済状況が低迷を続けるギリシアが最下位となった一方、8月にオリンピックを終えたブラジルは前回比で41ポイント改善のDI59となり、今回調査対象の36カ国中で最も大きな改善を示した。
新興国の景気減速や英国のEU離脱、原油安を背景にした日本の経常黒字の増加などにより、安全資産と見なされる円買いが進み、円高(2016年10月の月間平均レート103.82円)が進行した。そのため、原油や木材・木製品などでは原材料輸入コストの抑制につながり景況感を押し上げたが、自動車・造船・重機等や生産用機械では輸出採算の悪化から景況感が後退した。また、中堅企業ほど人手不足感が強く、欠員補充の困難さ、採用などの人件費の上昇によるコスト増、投資事業計画の見直しなど雇用環境の悪化懸念などから、今後一年間の日本経済の見通しについて「悲観的だ」と考える理由に、「人材不足」を上げる回答が67.5%と最も多くなっている。消費関連では、小売の下支えとなってきたインバウンド需要に陰りがみられる他、タイトな雇用環境にもかかわらず賃金水準の上昇の勢いが鈍く、消費マインドが改善するまでには至っていない。もっとも、11月8日に行われたアメリカ大統領選挙により共和党候補のドナルド・トランプ氏が当選したことを受けて、大幅な法人税率の引き下げや総額5,500億ドルのインフラ投資、規制緩和などにより4%の経済成長を目指すというトランプ政権の経済政策による景気回復への期待感からドル買いが進み、急激に株高・円安が進んだ。また11月末の石油輸出国機構(OPEC)の減産合意による原油高など国際商品市況の改善で、石油・石炭製品、汎用機械、電気機械、自動車などで景況感は上向き始めている。また、中堅企業でも20年の東京五輪・パラリンピックに向けた素材需要の盛り上がり期待などを受けて、素材関連、サービス不動産関連などで景況感の改善の兆しが出ている。
ただし、人手の不足感は中堅企業ほど深刻なものがあり、受注はあっても仕事をこなし切れない状況が出始めているため、外国人人材の積極的な活用の模索など抜本的な対応策が迫られている。さらに、大手広告代理店での過酷労働を苦にした自殺事件を端に発した長時間労働の見直しの動きが中堅企業まで広がるにつれて、今後は労働環境の改善が主な経営課題になってくるものと見られる。安倍政権では、9月に「働き方改革実現会議」を発足させ、政府を挙げて労働環境の見直しに取り組む姿勢を明確にしている。
当面は、急激な円相場の変動、人手不足、新興国の経済減速など中堅企業の経営に影響を与える懸念材料は少なくなく、引き続き慎重な企業経営を余儀なくされるだろう。
【この件に関するお問い合わせ先】
太陽グラントソントン マーケティング・コミュニケーション 担当 田代
TEL:03-5770-8829(直通) FAX:03-5770-8820 email:mc@jp.gt.com
◆ 本リリースの詳細は、こちら(PDF)をご覧ください。
(太陽グラントソントン http://www.grantthornton.jp/ /1月26日発表・同社プレスリリースより転載)