キャリア教育
キャリア教育とは?
「キャリア教育」とは、個人が社会人・職業人として自立するために必要な能力や態度、意欲を形成・向上させるための教育のことです。特定の職業に必要な専門能力を養成する教育のほか、広い範囲の職業に通用するスキル(語学やパソコンなど)を修得させる教育やキャリア開発の手法を学ばせる教育も含まれます。近年は、将来を担う若者に望ましい職業観や勤労観を身につけさせ、主体的に進路を選択できる能力を育むといった意味合いが強くなっています。学校教育においてはこうした解釈に基づいて、インターンシップの実施や地域の人材を活用した職業体験などを推進、キャリア教育と呼称しているケースが一般的です。
文科省が高校普通科での“必修化”を検討
将来への目的意識を学習意欲向上の原動力に
新卒者の早期離職の拡大、フリーターやニートの増加・固定化といった若年雇用問題が深刻さを増すにつれ、その対策の一環として、教育段階で就業経験を積むことや進路選択に向けて意識・意欲の向上をはかることの重要性がさかんに叫ばれるようになりました。いわゆる「キャリア教育」です。文部科学省では、キャリア教育を「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」(文部科学省平成22年度 第二次審議経過報告)と定義し、これを学校教育において実施するよう推進しています。
今年1月、同省がキャリア教育を高校の普通科において“必修化”する方向で検討を始めたとの発表がありました。現在、中学と高校におけるキャリア教育としては主に職場体験や企業へのインターンシップ(就業体験)などが実施されています。しかし、その実施状況や実施内容については、学校間で格差が大きいのが実情です。2011年度の調査によると、公立高3年生のうち在学中に1回でも就業体験をした学生は全体(専門学科を含む)で30%、普通科に限ると17.7%にとどまっています。
文科省の理念ばかりが先行し、現場との認識のズレが生じているようにも見えるなか、なぜキャリア教育必修化の議論が浮上してきたのか。その背景を示す一つのデータがあります。財団法人日本青少年研究所の調査では、日本、米国、中国、韓国の高校生のうち、授業と宿題以外での勉強について「しない」と答えた学生の割合は、日本の高1~高3が38.3%~28.9%と、4ヵ国中で最も多いという結果が出ました。要するに日本の高校生は、国際的に見ても自主的に勉強する時間が少ないということです。
高校教育の立て直しをはかるために、学生に将来への目的意識を持たせることによって学ぶ目的を明確化し、学習意欲の向上につなげたい――文科省が、キャリア教育の指針・内容を具体的に示したうえで全学校での実施を目指す大きなねらいは、ここにあります。もっとも、キャリア教育の徹底が勉強不足の解消につながるかについては、経済評論家の山崎元氏が「近隣の企業で体験労働してみたり、生徒同士でディスカッションをしてみたりすることで、平均的に勉強時間が増えるとはとても思えない」(ダイヤモンド・オンライン2013年1月16日配信)と指摘するように、異論も少なくありません。
同省では、早い段階で進路の意識付けが必要なことから、必修化における授業は「高1段階で週1時間程度」とする案が検討されており、今後、中央教育審議会での審議などを経て、次の学習指導要領に盛り込む方針です。
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