人事辞典 最終更新日:2020/11/17

【ヨミ】サブロクキョウテイ 36協定

36(サブロク)協定とは、原則1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えて、労働者を働かせる場合に必要となる協定のことです。法定労働時間を超えて働かせる必要がある場合は、使用者と労働者の代表があらかじめ36協定を締結し、労働基準監督署に届け出ておく必要があります。2019年4月(中小企業は2020年4月)から働き方改革関連法が施行されたことを受けて、36協定も改定されました。以下では、36協定で定めることができる時間外・休日労働の上限や、特別条項などの基本的な知識、また新しい36協定の概要などについて、わかりやすく解説します。

1. 36協定とは?

36(サブロク)協定とは、労働基準法で定められている原則1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えて、労働者を働かせる場合に必要となる協定のことです。この協定は、労働者と使用者との間に合意により締結され、労働基準監督署に届け出ることで有効になるものです。

働いている人の中には、法定労働時間を超えて残業や休日出勤をすることは、労働者として当然だと考えている方もいるかもしれません。しかし、36協定を届け出ることなしに時間外労働や休日出勤を命じた場合は、法違反で罰を科されることになります。

しかし、季節ごとに繁忙期と閑散期がはっきりしていたり、急きょ残業をして対応する必要が出てきたりと、1日8時間・週40時間の法定労働時間の範囲で仕事が収まらないことがあります。このような状況に対応するためには、使用者(経営者)と労働者の代表が36協定を締結した上で、時間外労働や休日出勤を行わなければなりません。

36協定は「時間外・休日労働協定」のこと

36協定の語源は、上述のように使用者と労働者の代表がお互いの同意のもとに協定を結び、それを労働基準監督署に届け出ることで、例外的に残業や休日出勤が許可されるという事柄が、労働基準法第「36」条において記されていることに基づきます。労働基準法の第36条に基づき、36協定届には「時間外労働・休日労働に関する協定届」という名称がついています。36協定をひとことで言えば、時間外労働・休日労働について、労働者と使用者の合意に基づいて定められる協定だと言えます。

以下で詳しく解説しますが、2018年6月に労働基準法が改正され、2019年4月に施行されたことを受けて、36協定の様式も様変わりしました。時間外労働の上限が厳格化され、協定を守られない場合は罰則が与えられることになったのです。以前も36協定の知識は使用者の義務として必須でしたが、罰則が設けられたことで、より厳格化されました。このような罰則規定の厳格化には、日本人の労働観の変化や、ブラック企業などによる労働者の健康や生活を無視した労働環境の存在が顕在化したことがかかわっています

日本人の労働観の変化と新しい36協定

2013年に厚生労働省が発表した「平成 25 年(2013)労働時間等総合実態調査結果」によると、「『時間外労働・休日労働に関する労使協定を締結している』とした事業場は 49.7%」でした。

「時間外労働」と「休日労働」のどちらかの労使協定だけは結んでいると答えた数%の事業所を足すと半数は超えますが、36協定を労働者としっかりと結んでいた使用者は、半分に満たなかったことになります。2005年の27.2%に比べれば増えているものの、2013年でもそれほど多くなかったのです。当時の使用者が「時間外労働・休日労働に関する労使協定」(36協定)を結ばなかった理由としては、約35%が「知らなかった」と答えています。

しかし、過労死問題や過労によるうつ病の問題などが世間に知られるようになると、次第に人々の労働に対する意識も変わりました。それを受けて作成された働き方改革関連法では、法律で定められた法定労働時間を超えて労働者を働かせた場合には、使用者が罰せられるなど、労働者のワーク・ライフ・バランスを考慮した改正が行われました。働き方改革関連法では、ほかにも年次有給休暇の年5日取得義務、フレックスタイム制度の見直しなどが定められていますが、36協定の改正もこの一連の流れにおけるものです。

2. 新しい36協定を理解する

36協定を結び、労働基準監督署に届け出れば残業や休日出勤が可能になるとはいえ、上限なくそれらが可能になるというわけではありません。次に、36協定について詳しく解説していきます。

例外的な措置が規定されている「特別条項」でも上限が定められている

上で解説したように、時間外労働時間の上限は月45時間・年360時間です。しかし、使用者と労働者の代表が合意した場合に限り、次の範囲で特別に時間外労働、休日出勤が可能だとされています。この規定以上の労働は、使用者と労働者との間でいくら合意がとれていたとしても、違法になるので注意が必要です。

(1)時間外労働が年720時間以内
(2)時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
(3)時間外労働と休日労働の合計時間の「2ヵ月平均」「3ヵ月平均」「4ヵ月平 均」「5ヵ月平均」「6ヵ月平均」がすべてひと月当たり80時間以内
(4)時間外労働が月45時間を超えた月が、合計6ヵ月を超えない

さらに2019年からは、「特別条項」を定める際に労働者の健康確保措置も採用する必要が出てきました。具体的な方法としては、「労働時間が一定時間を超えた労働者に医師による面接指導を実施すること」や「労働基準法第37条第4項(深夜業)に規定する時刻の間において労働させる回数を1ヵ月について一定回数以内とすること」などがあります。これらは、特別条項の届出記載の2枚目に記載します。

36協定に違反したらどうなる?「6ヵ月以下の懲役、 または30万円以下の罰金」

では、36協定の罰則規定はどのようになっているのでしょうか。端的に言えば「6ヵ月以下の懲役、 または30万円以下の罰金 」を課せられることになります。36協定違反による労基署などからの監督指導に応じない場合や、違反が改善されなかった場合は、書類送検され、会社名が全国に知られる可能性もありえます。今後は少子化の影響で、人手不足が深刻化するといわれています。36協定違反という不名誉な形で会社名が世に知られることになった場合、必要な人員を確保することができなくなり、経営状態が悪化するかもしれません。

労働時間の超過以外の36協定違反

36協定を守る上で重要なのは、36協定の違反が上限時間を超過させて働いたケースにだけ当てはまるわけではない、ということです。責任者は以下の知識を身につけて、会社の体制を整える必要があります。どのケースが違反に当たるのかは、36協定が「時間外・休日労働をさせるのに必須となる、使用者と労働者の代表との合意による協定」だというポイントを押さえて考えるとよいでしょう。労働時間の超過以外の違反の例は、次のようなものです。

(1)36協定の届出が行われていないケース

36協定は、労働基準監督署に届け出ておかなくてはなりません。労働者の代表との間に合意が成立していたとしても、届け出ずに時間外労働をさせた場合は違法となります。

(2)労働者の代表が労働者によって選ばれていないケース

36協定は、使用者と労働者の代表が合意を形成して結ぶ協定のことです。労働者の代表を使用者が恣意的に選んだり、正社員のほか、パートやアルバイトの意見を反映させる配慮がなかったりした場合は、その協定は無効になる可能性があります。そのため、無効となった場合、時間外労働はすべて法律違反と判断されるでしょう。代表を選出する最も代表的な方法は、投票、挙手などによるものです。労働者の代表が、その人を選出していることが明確になるよう、民主的な手続きをふむことが重要です。

(3)36協定の内容を周知しなかったケース

さらに36協定は、届出を出した後に労働者に周知させる必要があります。周知されていない場合、労働者が36協定の内容を知らずにこれらを強制されれば、違法とみなされる場合があります。

36協定の締結方法

36協定の締結方法は、労働者の代表者との合意、協定書ないし協定届の記載、労働基準監督署への届け出、労働者への周知という手続きをとります。最後の「周知」まで、しっかり行うことがポイントです。また、上でも「労働者の代表者」と締結することが重要であることに触れましたが、ここでの代表者とは、次の者のことを指しています。

■「労働者の代表者」とは
(1)労働者の過半数で組織する労働組合の代表者
(2)労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者

また先ほど触れたように、投票制など民主的な方法をとって選ばれた者であり、監督や管理の立場の者ではないことが条件となります。

なお、36協定は、本社、支店、営業所などの事業場ごとに締結しなければならず、本社の36協定を支社で使用することはできません。36協定を事業所ごとに締結したら、管轄の労働基準監督署へ届け出を行います。

36協定の新様式

2019年4月から、36協定の書式も変更になりました。書き方のポイントを、下記に簡単にまとめます。

(1)法定上限時間の範囲内で、労働者の代表者と合意がとれた時間だけを記載する
(2)新しく設けられたチェックリストにチェックを入れる
(3)臨時で法定上限時間を超えそうな場合は「特別条項」を新たに締結し、定められた時間の範囲内で合意を得て時間を記載する

なお、詳しい記載例は厚生労働省のホームページに掲載されています。

新36協定の上限規制が適用されない例外的な業務

以下の事業・業務に関しては、「新技術・新商品等の研究開発業務」を除き、新しく定められた上限規制の適用が5年間猶予されるとされています。つまり、以下の仕事に関しては、2024年の4月1日以降に上限が設けられることになります

(1)建設事業

2024年4月1日以降、建設事業でも上記の上限規制がすべて適用されます。しかし、災害時の復旧・復興の場合は、例外的な措置として上限が緩和されており、「月100時間未満」「2~6ヵ月平均80時間以内」という規制が適用されません。

(2)自動車運転の業務

一般には時間外労働は「年720時間以内」とされていましたが、2024年4月1日以降、自動車運転の業務にかかわる方の時間外労働は「年960時間以内」の制限が設けられると定められています。また、「月100時間未満」「2~6ヵ月平均80時間以内」という規制が適用されないばかりか、「時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヵ月まで」という規制も適用されません。

(3)医師

医師に関しては、現在具体的な上限が決められていません。2024年以降の上限に関しては、今後定められていくようです

(4)鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業

これらの業種に関しては、上記の制限が設けられていますが、2024年3月31日までは「月100時間未満」「2~6ヵ月平均80時間以内」という規制が適用されないとされています。2024年4月1日以降は、一般と同様すべての規制が適用されます

(5)新技術・新商品などの研究開発業務

新技術・新商品などの研究開発業務に関しては、時期関係なく上限規制が適用されません。しかし「1週間当たり40時間を超えて労働した時間が、月100時間を超えた労働者」に対しては、2019年4月1日からすでに医師の面接指導が義務付けられています。医師との面接が行われなかった場合は、使用者が罰せられることになります。使用者は面接指導を行った医師の意見を勘案し、必要があるときは労働環境が改善されるよう、措置を講じなければなりません。

3. 36協定の電子手続きについて

36協定についても、電子申請が可能です。2019年7月1日からは、以下の電子申請の手続きに関して、電子署名を付した電子公文書として審査完了後の控え文書等が発行され、ダウンロードが可能となりました。

  • 時間外労働・休日労働に関する協定届(本社一括届)
  • 時間外労働・休日労働に関する協定届(本社一括届)(特別条項付き)
  • 時間外労働・休日労働に関する協定届(本社一括届)(研究開発)
  • 時間外労働・休日労働に関する協定届(本社一括届)(適用猶予)
  • 時間外労働・休日労働に関する協定届(本社一括届)(一般条項のみ)
  • 時間外労働・休日労働に関する協定届(各事業場単位による届出)
  • 時間外労働・休日労働に関する協定届(各事業場単位による届出)(特別条項付き)
  • 時間外労働・休日労働に関する協定届(各事業場単位による届出)(研究開発)
  • 時間外労働・休日労働に関する協定届(各事業場単位による届出)(適用猶予)
  • 時間外労働・休日労働に関する協定届(各事業場単位による届出)(一般条項のみ)
  • 時間外労働・休日労働に関する協定届(事業場外労働に関する協定付記)
  • 時間外労働・休日労働に関する協定届(事業場外労働に関する協定付記)(適用猶予)

これにより、電子申請を経由しても文書上の保存が可能になりました。

4. 新しい36協定を踏まえた環境づくりへ

まとめ

36協定とは、原則1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えて、労働者を働かせる場合に必要となる協定のことです。もし、36協定の締結なしに労働者を働かせた場合は、法律違反となり、「 6ヵ月以下の懲役、 または30万円以下の罰金 」を課せられることになります。さらに、労基署などの監督指導に応じなかったり、違反が改善されなかったりした場合は、書類送検をされて新聞などに社名が掲載されてしまう可能性もあります。

36協定の締結の際に重要なのは、「労働者の代表者」との合意を得なければならないことです。この労働者の代表者とは、労働組合か、労働組合がない場合は労働者の過半数を得た代表者のことを指します。代表者と合意を形成し、その旨を記載した36協定届を労働基準監督署に提出して、さらにその内容を周知させるところまでがセットになります。臨時的に月45時間・年360時間の限度時間を超えて対応する必要性が出てくる可能性があるなら、特別条項を定めておく必要があります。さらに、事業・業務によっては、例外的に一般的な上限が適用されないケースもあるので注意が必要です。

もっと具体的なケースを知りたい場合や、個別の状況について専門家の意見を聞きたい場合は、「人事のQ&A」をご利用ください。

労働環境の整備は、36協定の範囲内ですること

会社を成長・発展していくため、あるいは自己実現のために、働く時間が長くならざるを得ない場合もあるかもしれません。しかし、雇用される立場の労働者側には、働く時間と日常生活とのバランスをより大切にしようとする人が増えています。法律で定められた範囲内で仕事を終わらせることができないなのであれば、新しい人を雇う工夫をしたり、最新技術を利用して業務の効率化を計ったりするなど、経営者の努力が必要でしょう。現在、労働者のワーク・ライフ・バランスを考慮した労働環境の整備が急務になっています。新しい36協定の作成は、そのための第一歩といえます

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