ボランティア休暇
ボランティア休暇とは?
「ボランティア休暇」とは、企業が従業員のボランティア活動への参加を支援・奨励する目的で、有給の休暇・休職を認める制度のことです。1990年代はじめから、労働時間短縮の流れや企業に対する社会貢献の要請の高まりをうけて、制度を設ける企業が急増。95年の阪神・淡路大震災における市民ボランティアの大活躍をきっかけに、各自治体の公務員にも同様の制度を導入する動きが広がりました。
導入は大企業中心、全体では3%未満
成果主義の職場では利用を控える傾向も
ボランティア休暇を日本で初めて採用した企業は、富士ゼロックスだといわれています。同社では1990年から、テーマを決めて長期ボランティア休暇を活用する「ソーシャルサービス制度」を導入。社会福祉施設や青年海外協力隊などで社会奉仕活動に取り組む場合、3ヵ月から最長2年までのボランティア休職が認められ、休職期間中は給料・賞与相当額が援助金として支給されます。同制度が発表された当時は、CSRを問う社会や市場の目もまだそれほど厳しくはなく、社内から「一企業がそこまでするのか」「なかなか休職する人はいないのではないか」といった声も挙がりました。しかし現在までに40名以上の社員が制度を利用、腰を落ち着けて社会貢献に打ち込むという実績を揚げています。
導入企業によって、休暇の付与条件(対象となる活動・付与日数・処遇)はさまざま。富士ゼロックスのように、休職制度を活かして2年間程度の長期付与を認めるケースもあれば、1日だけ付与するという短期間のケースも存在します。また短期(休暇)・長期(休職)両方を認める制度を導入している企業も少なくありません。INAXでは92年から「ボランティア休職制度」を、95年には「ボランティア休暇制度」を採用しました。後者は、社会貢献・地域貢献活動に対して1回あたり連続5日間以内、年間12日以内の有給休暇を付与するものですが、前者はこれとは別に、2ヵ月以上1年以内の範囲で長期休職を認める制度。無給扱いですが、80%相当の援助金が支給されます。
しかし、こうした制度を導入し継続している企業は、日本企業全体から見るとまだごく一部と言わざるをえません。厚生労働省が発表した「平成19年就労条件総合調査結果の概況」によると、ボランティア休暇制度がある企業は全体のわずか2.8%でした。企業規模による導入率の格差が著しく、従業員1,000人以上の企業では17.7%、30~99人では1.8%と10倍近い開きがありました。また07年に連合総合生活開発研究所(連合総研)が、首都圏と関西圏の民間企業に勤める20~50歳代を対象に実施した調査では、自社でボランティア休暇を導入していると答えた人に、自分がその制度を利用しているかどうかを尋ねたところ、38.8%と低い水準に止まっています。しかも成果主義が浸透している職場ほど、評価への影響を懸念して利用を控える傾向も明らかになりました。制度の導入・整備は遅々として進まず、制度があっても宝の持ち腐れ――残念ながら、それが日本企業におけるボランティア休暇の現状のようです。
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