エクスパッツ
エクスパッツとは?
エクスパッツ(Expats)とは、Expatriate(国外居住者)の略称。海外の本社や親会社、関係会社などに所属し、転勤などの理由で日本に派遣されている駐在員のことです。日本で就労する外国人のうち、国内で現地採用された従業員(一般にローカルと呼ばれる)については、労務関係の各種法令が日本人従業員と同様に適用されますが、エクスパッツの場合はその限りではありません。社会保険や給与計算の取り扱いに注意が必要です。
ローカル社員とは法令適用に大きな違いが
社会保険の二重加入や給与計算の扱いに注意
世界各国の社会保障制度は原則的に、内外国人を問わず、その国の領域内にいる限り、現地の法制度に服するという「属地主義」の考え方をとっています。しかし、グローバルな企業活動に伴って社員が二国間を往来する場合は、両国制度への二重加入による保険料の二重払いや掛け捨ての問題が発生します。こうした問題を解消するために、各国との間で締結されているのが社会保障協定です。
同協定の締結国から日本にエクスパッツが派遣される場合、派遣期間が5年以内の要件を満たし、派遣元の国で社会保障協定適用証明書が発行されれば、派遣元の国の社会保険制度にのみ加入することになります。すなわち、日本の各制度への加入は免除されます。
派遣元の国が締結国でないために協定が適用されない場合の取り扱いは、大きく二つに分かれます。個々のエクスパッツが国内法の被保険者に該当するか否かは、勤務先となる日本の事業所からの報酬の支払いの有無が判断基準となるためです。報酬が海外の派遣元から直接本人に支払われていて、日本の事業所から支払われていない場合は、健康保険や厚生年金の保険料の納付ができないので、事業所経由での加入はできません。一方、日本の事業所がエクスパッツに直接報酬を支給している場合は、事実上の使用関係が成立するとみなされ、国内での加入義務が発生することになります。ただしこれは原則的な解釈であり、最終的な判断については保険者である健康保険組合や全国健康保険協会、あるいは年金事務所などへの個別の確認が必要です。
またエクスパッツを受け入れている日本企業では、国内で発生するエクスパッツ個人の所得税、住民税、社会保険料を、本人に代わって負担している事例が多く見られますが、税金や保険料(個人負担分)は本人負担が原則です。したがって派遣先の会社が支払っている負担金は経済的利益とみなされ、支払分が課税の対象となります。会社はエクスパッツの税金を負担した上で、さらにその負担した金額分に対する税金も負担する処理、いわゆる「グロスアップ計算」が必要になります。
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