ガスライティング
ガスライティングとは?
「ガスライティング」とは、意図的に誤情報を与えるなどして相手が「自分の記憶や判断がおかしいのでは」と疑うように仕向け、心理的に支配しようとする行為。語源は1940年代の映画『ガス燈』で、夫が妻を精神的に追い詰める筋書きに由来します。家庭などのプライベートなシーンだけでなく、職場でも起こり得るもので、上司や同僚が被害者を心理的にコントロールし、自尊心を削り、正常な判断ができなくなるケースなどがあります。被害者自身が気づきにくいため、第三者がいかに介入するかがポイントです。
もしガスライティングに遭ったら
被害者・周囲・企業ができる対策
「昨日のミーティングで決まったじゃないか!」——ある開発会議で上司が部下を叱責しました。しかし、議事録にはその意思決定が残されていません。それなのに、同席したメンバーは沈黙したまま。部下は「自分が聞き漏らしたのかもしれない」と反省し、ミスを謝罪しました。これは、ガスライティングの典型例。加害者は過去の行動や発言を都合よく書き換え、弱い立場の人の認知を揺さぶりながら支配関係を強めようとしています。
健全な職場で働いている人には信じられないかもしれませんが、常習的に標的を作って追い込む人が存在するのが現実です。個人による行為だけでなく、周囲が「君の被害妄想だ」「みんなが困っている」などと加担することもあります。また、故意に資料を書き換えて被害者のミスを捏造するなど、さらに悪質な手口も見られます。
「自分は被害に遭っているのでは」と感じることがあれば、日時・発言・資料など客観的な事実を記録するのが第一歩。次に、信頼できる同僚や産業医、人事担当者に共有して、外部の視点で事実関係を整理します。事実を第三者に共有することで、「自分がおかしいのでは」という思い込みを弱められます。
ガスライティングを目撃した場合は、被害者と加害者だけの問題にしてはなりません。会議などで起こった場合は、議事録を示しながら場の中立性を保ち、被害者を孤立させない空気をつくります。その上で、社内や外部の相談窓口へ報告し、証拠保全と専門家の介入を促すことが重要です。
企業側は、ガスライティングを「指導の域を超えた心理的虐待行為」と明確に定義して加害者に処分を下すなど、ハラスメントは許さないという断固とした姿勢を示す必要があります。同時に、加害者を生まない仕組みづくりを検討しなければなりません。ハラスメント研修はもちろん、360度フィードバックやAIの自動文字起こしによる議事録作成も適しています。
ガスライティングは、相手を疑心暗鬼に陥れるハラスメント行為。事実を可視化し、周囲が小さな違和感を覚えた段階で声をかけ、正式な相談ルートへつなぐことが重要です。相談しやすい環境と明快な対処方針を整えることで、安心して意見を交わせる健全な職場が戻ってくるはずです。
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