LMX理論
LMX理論とは?
LMX (Leader Member Exchange)理論とは、「一人のリーダー」と「一人のメンバー」という関係に焦点を当てたリーダーシップ論です。従来のリーダーシップ理論では、リーダー(上司)の素質や行動特性に着目され、メンバー(部下)は一方的にその影響を受ける存在として扱われてきました。「一人のリーダーと複数のメンバー」という関係性ではなく、「一人のリーダーと一人のメンバー」の関係に焦点を当てたのがLMX (Leader Member Exchange)理論です。「リーダー・メンバー交換理論」とも呼ばれており、グラーエン氏とウルビエン氏によって提唱されました。
同じ行動でも好意的な関係性か否かで
上司・部下間で与える評価が変わる
LMX理論は、リーダーシップを「人間関係は報酬の交換で成立する」という交換理論から捉えたものです。「リーダーが提供する報酬」には給料や昇進、重要な仕事の割り当てといった目に見えるものだけでなく、信頼や尊敬、注目などの心理的な報酬も含まれます。同様に「メンバーが提供する報酬」も業務の遂行だけでなく、リーダーへの信頼や忠誠などが含まれます。リーダーとメンバーはお互いが与える報酬に報いるように、ギブアンドテイクの関係を結んでいるのです。
LMXが高い、つまりお互いに信頼し合い好意的な関係のときにリーダーは高いリーダーシップを発揮し、メンバーは高いエンゲージメントやパフォーマンスを生み出します。
この研究では、同じリーダーの元で働くメンバーであっても、リーダーとメンバー一人ひとりの関係性に応じて、報酬交換の質に差があることに注目しました。リーダーにとってはメンバー全員と密な信頼関係を構築することが理想ですが、現実的には不可能です。そのため、LMXが高いメンバーとLMXが低いメンバーとに二分されることとなります。
メンバーが同じ行動をしても、その関係性によってリーダーが与える評価は異なります。例えば、部下が残業をしたとき、LMXが高いメンバーには「定時後まで仕事をしているなんて熱心だね」という好評価を下し、LMXが低いメンバーには「もっと効率よく仕事をこなしなさい」と否定的な評価を下します。
その逆もまたしかりです。上司が部下に対して厳しい指導をした場合、LMXが高いメンバーは「自分のことを思って言ってくれた」と好意的に捉えますが、LMXが低いメンバーは「こんなことを言われるなんて不当だ」と否定的に捉えてしまいます。
この関係性の分類は、初期段階(数日から数週間)で行われます。一度決まった関係性は変えることが難しいため第一印象や関係構築の初期で「信頼できる相手だ」と印象づけることが重要です。
リーダーは配慮せずに過ごしていれば、気に入ったメンバーとそうでないメンバーとの間に仕事の面で差をつけたり、熱心で能力が高いメンバーを重宝したりしてしまいがちです。チーム内でLMXにばらつきが生まれると、チーム全体のパフォーマンスが低下します。メンバーごとにLMXの差があることを自覚して、リーダーシップがとることが重要です。
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