トークニズム
トークニズムとは?
「トークニズム(Tokenism)」とは、表面的な対応や象徴的な行為によって、問題を解決しようとしているポーズを取っているが、実質的には問題解決を回避しようとしている状態のこと。「Token(トークン)」には「しるし」や「名目」といった意味があり、トークニズムは「体裁主義」「形式主義」などとも訳されます。例えば、ダイバーシティを推進するために一見マイノリティを包摂しているように見えても、単なる象徴的な行動でしかなく、実際には活躍を支援できていない状況はトークニズムとみなされます。
女性管理職比率に、障がい者の法定雇用率
D&Iの取り組みが空疎になる理由
「ダイバーシティ」や「SDGs」といった言葉が浸透し、それらに対応する企業が増えてきました。「SDGsバッジ」をつけているビジネスパーソンや、障がい者スポーツに協賛する企業。多様性のある社会に近づいているようにも見えます。しかし先進国と比べると、日本は女性や障がい者の議員比率が低く、環境保全の意識も低いなど、対応の遅れが指摘されています。
数々の取り組みが行われながら、成果が表れないのはなぜでしょうか。理由の一つに、トークニズムがあると考えられます。対応策が形式的だということです。
例えば、日本には「障害者雇用促進法」があり、一定数以上の従業員がいる企業は、従業員に占める身体障がい者・知的障がい者・精神障がい者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。マイノリティグループの人々を採用すること自体は歓迎すべきですが、採用するだけで「ダイバーシティへの取り組み」を達成できるわけではありません。採用された人々が職場で十分なサポートを受けられず、活躍できる環境が整っていなければ、障がい者採用は形式的なものになってしまいます。
実際、マイノリティグループの「採用」には積極的でも、「昇進」するための取り組みが不十分なケースは多く見られます。雇用するだけで問題を解決したかのように振る舞うことは、トークニズムとみなされても仕方ありません。これでは、マイノリティグループがダイバーシティ対応の「象徴」に過ぎないと、当事者や周囲は考えるでしょう。本質的な問題解決に至らないだけでなく、マイノリティグループの権利を脅かすリスクもあります。
トークニズムを解決するために、何をすればいいのでしょうか。まずはマイノリティグループの声を聞き、理解することが大切です。その上でマイノリティグループのニーズを満たせるように形式的な政策を見直し、必要なリソースやサポートを提供します。場合によっては、企業としての取り組みを強化するため、経営層を巻き込んだ意識改革や組織風土改革が必要になることもあるでしょう。
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