静かな退職(Quiet Quitting)
静かな退職(Quiet Quitting)とは?
「静かな退職」とは、組織に在籍しながらも契約通りの仕事だけを淡々と行い、退職したかのように精神的な余裕を持って働くこと。米国を中心にトレンドになっているキーワードで、仕事とプライベートの境界線を明確に引き、「仕事は仕事」と割り切ってやりがいや自己実現を求めない働き方のことを指します。米国では「Quiet Quitting」という言い回しで広まりましたが、日本語に訳すと「静かな退職」「がんばりすぎない働き方」などと表現されます。
米国で注目される「Quiet Quitting」
実は、静かな退職者は日本のほうが多い?
「仕事は自分を成長させてくれるもの」「仕事で社会をよりよくしたい」「昇進して多くのお金を得たい」。労働者はそれぞれ働く上でのモチベーションを持っているもの。入社面接では志望理由を聞かれ、入社後に定期的に行われるキャリア面談ではどのように成長していきたいかを確認されます。現代社会では、仕事において成長を目指すことが当然のように思われているようです。
しかし、本当にそうなのでしょうか。成長意欲がなく、言われた仕事だけを淡々とこなす人は、「困った社員」のように扱われます。しかし、成長を目指さない働き方はそう目新しいものではないかもしれません。
「静かな退職」と聞くと、社会や組織に対する強い反抗心を持っている様子を思い浮かべる人もいるでしょう。しかし、静かな退職者はどちらかというと、熱意もないが不満もない、ある意味で“冷めた”層を指します。最近は、仕事よりも家族や自分の趣味の時間を大切にする人が増えており、そういう人たちが「静かな退職」を選んでいることも考えられます。
米国の調査会社ギャラップによると、米国で仕事に熱意のある社員の割合は32%で、会社への不満を強く持つ人は18%でした。同社は残りの半数を、熱意も不満も持たない静かな退職者になりうる存在と見ています。
では、日本はどうでしょうか。同じくギャラップ社が2017年に実施した、世界各国の企業を対象にしたエンゲージメント調査によると、日本で「熱意ある社員」の割合は6%で、米国の32%と比べてはるかに低い水準でした。強い不満を持つ人は24 %で、それ以外の「やる気のない社員」は70%。実は日本のほうがエンゲージメントの低下は顕著なのです。
労働者からすれば、がんばりすぎない働き方も生き方の一つですが、企業からするとそのようなマインドの従業員が増えることは歓迎できません。“冷めた”層をこれ以上増やさないためには、何ができるのでしょうか。
「やる気のない社員」は、もともとそういう価値観である場合と、社会や企業への諦めからくる場合があるのではないでしょうか。そう考えると、不満のある社員は職場改善のヒントを持っている可能性があります。企業は従業員が持つ不満に耳を傾け、改善策を検討すると良いでしょう。従業員からモチベーションを奪っているものがわかれば、失われたやる気を取り戻すための手がかりが見えてくるかもしれません。
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