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【ヨミ】ダイバーシティ ダイバーシティ

ダイバーシティ(diversity)とは、人種・性別・嗜好・価値観・信仰などの違いを受け入れ、多様な人材が持つ可能性を発揮させようとする考え方です。日本語に訳すと「多様性」という意味になります。1960年代のアメリカに端を発し、現在では日本においても広く浸透しています。

1. なぜダイバーシティが必要とされるのか

ダイバーシティが必要とされる背景には、グローバル化や顧客ニーズの多様化があります。ビジネス環境の変化に対する迅速かつ柔軟な対応には、多様な人材によるさまざまなアイデアが必要です。性別や年齢、国籍など、さまざまなバックグラウンドを持つ多様な人材の能力を活用するダイバーシティの考え方は、現代において企業の成長に欠かせない要素になっているといえます。

現在では、多様な視点を製品開発やイノベーションに生かすという点においても、ダイバーシティ経営の取り組みが重視されています。

2. アメリカにおけるダイバーシティの歴史と背景

ダイバーシティの考え方はアメリカから始まりました。歴史とその背景にあるものを年代ごとに見ていきます。

1960年代から1970年代~発生期

人種差別・女性差別の解消が始まり

アメリカでダイバーシティが推進され始めたのは、1960年代のことです。当時のアメリカは、公民権運動や女性運動などが活発化した時期でした。公民権運動とは、主に黒人が人種差別の撤廃と法の下での権利・自由を求めて起こした社会運動のことです。女性運動では、男性社会における不平等に対して、女性たちが立ち上がりました。

人種や性別といった差別解消の機運の高まりを受け、1964年にアメリカで公民権法が成立。さらに米国雇用機会均等委員会(EEOC)が設置され、ダイバーシティ(多様性)による雇用差別を受けた人は、誰でも訴えを起こせるようになりました。

企業のダイバーシティの取り組みは、賠償のリスク軽減から

しかし、法律ができたからといって、すぐに社会情勢が変化したわけではありません。実際には法的強制力に乏しく、公民権法の施行当初は雇用慣行が改められるまでには至りませんでした。それでも、差別に関する訴訟は少なからず起こり、黒人女性などへの差別に対する告訴で企業が敗訴し、多額の賠償金が発生した事案もあります。

訴訟の増加とともに、企業も少しずつダイバーシティを認めるようになっていきますが、当時は訴訟による多額の賠償金を払わないようにするためのものという考えが色濃く、いわば、ダイバーシティに関するリスクマネジメントという意味合いが強いものでした。

しかし、ダイバーシティの考え方を企業が受け入れ始めたことは、その後の大きな潮流をもたらすに十分なきっかけだったといえるでしょう。

1980年代から1990年代前半~定着期

CSRの認識からダイバーシティが推進される

1960年代から1970年代がダイバーシティの考え方を企業が受け入れ始めた時代であるのに対し、1980年代から1990年代前半は、ダイバーシティ・マネジメントを企業の社会的責任(CSR)として捉える潮流が起こった時代といえます。

この時代になると、アメリカ企業は国内だけでなく、海外でも商品の販売やサービスの提供を展開し始めます。また、アメリカ国内の消費傾向を見ると、大量生産品からオリジナリティーのある商品が求められるという変化が起こります。こうした市場の変化は、マイノリティーならではの価値観や視点が商品・サービスの開発に役立つとして、多くの企業がダイバーシティを推進するきっかけになりました。

「Workforce 2000」の衝撃

加えて、企業に衝撃を与えたのが「Workforce 2000」での、21世紀のアメリカの労働力人口構成予測に関するレポートです。このレポートは、アメリカ労働省とハドソン研究所によるもので、1985~2000年の新規労働力のほとんどはアメリカ生まれの白人女性とマイノリティー人種および移民である、という内容でした。この報告は、これまでダイバーシティに否定的だった企業にも、現状を見直すべき時期にきていることを示しました。

これを機に、ダイバーシティを取り入れる企業が増加します。しかし、多くの企業では既存の企業文化は変えず、多様な人材に対して企業への同化を要求するものであったため、離職率の高さという問題が生じます。

1990年代後半から現代~発展期

ダイバーシティ=競争優位へ

1990年代からは、多様性を受け入れることが組織にとってもプラスに作用し、競争優位につながるベネフィットをもたらすという認識が広がりました。

また、多様性に対応する商品・サービスがますます求められるようになったことも影響し、既存の枠組みにはめるのではなく、個々の人材が持つ多様な可能性を企業の成長に生かそうとする動きが活発化します。個性を尊重することで、新しい価値を創り出そうとするフェーズに入ったともいえるでしょう。

ダイバーシティに「インクルージョン」が加わる

1990年代後半になると、ダイバーシティの考え方を発展させた「ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉が登場します。「インクルージョン」には包括という意味があり、「従業員がお互いを認め合いながら一体化を目指していく」という組織のあり方を示しています。

現在では「組織の中に違いがあるからこそ、それが力になるのであり、企業が持続的な成長をするためにはダイバーシティ&インクルージョンは不可欠なもの」という考えが、アメリカ企業の中に定着しつつあります。

3. 日本におけるダイバーシティの歴史と背景

アメリカにおけるダイバーシティは、簡単にいうと、1960年代から1970年代が発生期、1980年代から1990年代前半が定着期、1990年代後半から現代が発展期でした。

では、日本におけるダイバーシティはどのような変化があったのでしょうか。

1980年代から1990年代

男女の雇用差別が始まり

日本でダイバーシティの考え方が認識され始めたのは、1980年代から1990年代にかけてです。日本では男女の雇用差別などが問題になっていた時期で、差別を是正するための法律が次々と制定されました。

1985年には「男女雇用機会均等法」が制定され、職場における男女の雇用の差が禁止されました。1999年には「男女共同参画社会基本法」が制定され、企業において男女の人権を尊重することが義務化されます。男女の待遇の平等が義務化される中、日本でも少しずつダイバーシティについて考える機運が高まっていきました。

2000年代から現代

2000年代から現代においては、ダイバーシティ・マネジメントを取り入れた経営が広がりを見せます。

少子高齢化がダイバーシティ推進を加速

アメリカでは、21世紀のアメリカの労働力人口構成予測に関するレポートを機にダイバーシティを取り入れる企業が増えましたが、日本では「少子高齢化」がダイバーシティ推進へのきっかけとなりました。

少子高齢化による労働力人口の減少が進むと、女性や障がい者、外国人といった多様な人材を採用しなければ、近い将来、労働力の確保が困難になることは明白です。また、企業の成長においては、海外を視野に入れた商品・サービスの展開を検討する必要性も生じています。

現在の日本では、多様な価値観を企業にもたらすダイバーシティの考え方は、イノベーションを創出しやすい環境づくりに貢献するという認識が定着しつつあります。今後は、多様な人材を受け入れるというダイバーシティをさらに発展させ、従業員一人ひとりが多様性を受容し、良い刺激を与えあえる組織づくりを進める「ダイバーシティ&インクルージョン」への取り組みが広がっていくといえるでしょう。

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