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【ヨミ】ロウムカンリ

労務管理

労務管理とは?

労務管理とは、賃金や労使関係、労働条件、安全衛生など、組織の労働に関する内容全般を管理することです。「人」に関わる仕事がほとんどであり、心地よい労働環境を整え、従業員がモチベーション高く仕事に取り組むために重要な役割を担っています。適切な労務管理を行うことは組織全体の活性化や生産性向上にもつながるため、企業の成長に欠かせません。

掲載日:2021/03/15

1. 労務管理の意味・定義

1. 労務管理の意味・定義

労務管理は組織の「人」に関する業務

労務管理は、組織の労働者に関わる内容を管理する仕事です。雇用契約や給与計算、社会保険関係の手続き、安全衛生などが代表的な仕事として挙げられます。労働条件の中でも労働時間や休日などの分野をカバーする勤怠管理も労務管理の一部分であり、人材の処遇全体を管理する人事管理とも密接な関わりがあります。

労務管理は、組織全体にとって重要な資産である「人」に関わる業務がほとんどです。従業員が心地よく働くためには職場環境を整えることが不可欠であり、人材を企業に定着させる大きな役割を担っているといえます。

また、労働に関しては、労働基準法や労働契約法、労働安全衛生法、パートタイム・有期雇用労働法、男女雇用機会均等法などのさまざまな法律が関わっているため、労務管理は法的対応が伴う仕事でもあります。

特に近年は、長時間労働による過労死や「名ばかり管理職」といった問題が広がっており、法律を厳守した適切な労働環境がこれまで以上に重要視されています。そのため、労務管理には、コンプライアンスや労働者の立場を守る役割も期待されています。

労務管理・人事管理・勤怠管理の違い

労務管理と混同されやすい分野に、人事管理と勤怠管理があります。適正かつ合理的な労務管理を行うためには、それぞれの分野がカバーする範囲を理解しておくことが重要です。

労務・人事・勤怠の区分けに明確な決まりはありませんが、一般的にはそれぞれ下記のように分類されています。

勤怠管理と人事管理、労務管理との違い
  • 人事管理:人材の処遇全体をカバー
  • 労務管理:労使関係、労働条件をカバー
  • 勤怠管理:労働条件の中でも労働時間や休日などの分野をカバー
労務管理

労務管理は、労使関係や労働条件をカバーする役割を担っています。労働契約や労働条件の管理、給与計算、安全衛生などが主な業務内容です。労務管理は「人」に関する組織全体の管理を行うため、業務の幅が広いことが特徴です。

労務管理が適正に行われていることで労働環境が整い、従業員と組織の生産性アップにつながります。また、多くの業務に法律が関わるため、コンプライアンスを高める上でも重要な役割を担っています。

人事管理

人事管理とは、企業内で人材をより効果的に活用していくために、規則や処遇を定めて適切に運用していくことを指します。人事評価や人材育成のほか、採用・退職の手続きを行うことも人事管理の業務に含まれます。

従業員の処遇も含めた人事に関連する業務の大枠が人事管理だと捉えてよいでしょう。人事管理の中にあるのが労務管理や勤怠管理です。

勤怠管理

勤怠管理は、労働条件の中でも労働時間や休日などの分野をカバーするものです。

勤怠管理では、就業規則や法律に基づいて、従業員が適切な労働時間を守っているかどうかを管理します。労働時間については、労働基準法などによって厳格に基準が設けられています。そのため、労働時間や休日を管理することは、従業員の健康や権利を守る上で大変重要です。

残業や休日出勤が多い従業員または部署には、業務内容を改善する指導や取り組みが必要となる場合があるため、人事管理や労務管理の分野とも密接な関わりがあります。さらに、勤怠管理は給与計算の根拠となるため、正確性が求められる分野でもあります。

労務管理の必要性

柔軟なルール作りが求められている

労務管理は、従業員が心地よく働くための職場作りに欠かせない仕事です。従業員一人ひとりの満足度が高まることは、結果的に組織全体の活性化と生産性向上につながります。

政府による働き方改革や、直近では新型コロナウイルス感染症の影響により、働き方や職場環境のあり方がこれまでと大きく変化しています。激しく様相が変わる社会の中で企業が成長していくためには、従業員が安心して働ける職場環境の整備が不可欠です。

労務管理には、時代や社会の移り変わりを的確に捉えながら、その都度、柔軟なルールを作ることが求められています。

労務管理に関する資格

社会の変化に応じた柔軟なルールを作るため、労務管理における専門スキルを持つ人材が求められています。労務管理の専門スキルを高めて、資格を取得する人事も増えています。

資格には、労務管理に関する唯一の国家資格である「社会保険労務士」や、専門スキルを証明する民間資格である「労務管理士」「ビジネス・キャリア検定」などがあります。

社会保険労務士

社会保険労務士は、労務管理に関する唯一の国家資格です。労働や社会保険の手続きをはじめとした、労務管理に関する高い専門性とスキルが求められます。

過去の合格率は6%前後と難易度は高くなっていますが、労務管理に関する幅広い領域の専門スキルを身に付けることができます。そのため、労務管理の担当者はもちろん、組織の労務を多角的に捉える必要がある経営者や管理職にもおすすめの資格です。

また、社会保険労務士になると、労働や社会保険関係の法律に基づく書類の作成・提出を代行できるため、資格取得後に開業する人もいます。

社会保険労務士試験における受験者の推移は、下記の通りです。

社会保険労務士試験における受験者の推移
年度 平成28年 平成29年 平成30年 令和元年 令和2年
申込者数 51,953 49,902 49,582 49,570 49,250
受験者数 39,972 38,685 38,427 38,428 34,845
合格者数 1,770 2,613 2,413 2,525 2,237
合格率 4.4% 6.8% 6.3% 6.6% 6.4%
(引用:過去10年の推移と合格者の年齢階層別・職業別・男女別割合|社会保険労務士試験オフィシャルサイト

社会保険労務士の探し方・比較ポイントを解説
外部の社会保険労務士の探し方・比較ポイントについて、助成金代行を例にした解説です。
『日本の人事部』がおすすめする助成金代行サービスについても紹介しています。

助成金活用は二人三脚でうまくいく 申請代行に強い社労士の探し方・比較のポイント|日本の人事部

労務管理士

労務管理士は、労務管理における専門知識の習得と能力向上を目的とした民間資格です。指定された講座を受講した上で講座修了後の試験に合格し、登録をすることで2級労務管理士に認定されます。さらに、資格者研修を受講し、一定の成績を修めた上で昇級審査試験に合格した人は、1級労務管理士となることができます。20歳以上であれば誰でも受験することが可能です。

ビジネス・キャリア検定(労務管理)

ビジネス・キャリア検定は、実務で必要となる専門知識の習得を目的とした検定です。「労務管理」のほかにも、「人事・人材開発」や「経理・財務管理」などのさまざまな分野が用意されています。

「人事・人材開発・労務管理分野」は3級から1級までのコースがあり、レベルに応じてどの級からでも受講が可能です。3級は係長やリーダー向け、2級は課長などのマネジャー職、最難関の1級は部長などのディレクター職に相当する受験者が想定されています。

2. 労務管理の主な業務内容

2. 労務管理の主な業務内容

労務管理に関する主な業務は、労働条件や職場環境の管理、採用・退職にあたっての手続き、給与計算などが中心です。さらに、就業規則や36協定ほか各種労使協定書の作成など、職場のルール作りや法律遵守のための情報収集など多岐にわたります。場合によっては、労災対策や安全衛生の管理、解雇やハラスメントなどのトラブル対応も含まれることがあります。

労務管理の主な業務内容一覧

  1. 労働契約や労働条件の管理
  2. 採用・退職の手続き
  3. 就業規則や労使協定、36協定の作成・管理
  4. 福利厚生の管理
  5. 安全衛生の管理
  6. 給与計算
  7. ハラスメントへの対応

1. 労働契約や労働条件の管理

従業員の入社にあたっては、賃金や労働時間など一定の労働条件を書面で明示しなければなりません(労働基準法第15条、労働基準法施行規則第5条)。従業員はこの労働契約に基づいて就労するため、誤りが許されない重要な業務です。

労働契約を締結する際は、労働基準法や就業規則を遵守することも重要なポイントとなります。また、従業員が契約内容を守って労働できるように、採用後も労働条件の管理をすることが大切です。

2. 採用・退職の手続き

採用時には、その企業の従業員となるための必要な手続きを行います。契約関係以外にも、各種公的保険の加入や給与振込口座の確認などさまざまな手続きが必要です。

また、退職にあたっては、加入している各種公的保険などの資格喪失手続き、退職証明書や源泉徴収票の発行などの業務が必要です。退職金制度を設けている場合は、就業規則などにのっとり退職金の計算を行います。退職関係の手続きは、従業員が気持ちよく職場を去り、次のステップにスムーズに進むための大切な業務です。

3. 就業規則や労使協定、36協定の作成・管理

就業規則とは、従業員に適用される労働に関する企業のルールを定めたものです。一つの事業所でパートやアルバイトを含めた従業員が常時10人以上働いている場合は、就業規則を作成し、それぞれの事業所を管轄する労働基準監督署に届出をする義務があります(労働基準法第89条)。

従業員は、就業規則の内容に基づいて勤務するので、良好な職場環境を保つために正しく管理することが重要です。労働基準法を守ることは当然ながら、労働契約の具体的な内容を定めたものなので、実態に合わせた管理が必要です。労使のトラブル防止やコンプライアンスの面でも大切な業務となるでしょう。法律が改正された場合などは、その都度、就業規則の変更の届出が必要です。

使用者と労働者が話し合った結果をまとめる労使協定の作成・管理も、労務管理における重要な業務です。例えば、従業員に法定の労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて労働させる場合は、労使協定の一種である36協定の締結と届出が必要です(労働基準法第36条)。

4. 福利厚生の管理

福利厚生の管理をすることも労務管理の仕事です。福利厚生は、大きく法定福利厚生と法定外福利厚生の二つに分けられます。

法定福利厚生は、社会保険や労働保険など、法律によって企業に義務化されているものです。従業員の入退社や労働条件の変更に応じて、必要な手続きを行います。法定外福利厚生は、法律で定められておらず、企業で独自に設定する福利厚生制度です。従業員の満足度を高めるために必要な福利厚生を検討し、導入や運用を行います。

5. 安全衛生の管理

安全衛生は、従業員の健康保持や良好な職場環境を保つための仕事です。労働安全衛生法では、健康診断の実施をはじめとしたさまざまな安全衛生に関する義務や配慮が定められています。主な業務には、安全衛生委員会の実施や健康診断、ストレスチェックなどがあります。必要に応じて、長時間労働の是正や健康状態が思わしくない従業員への健康増進の取り組み、保健指導のあっせんなども行います。2015年からストレスチェックが義務化され、メンタルヘルスケアの必要性が高まっているため、特に重要な業務の一つです。

企業は従業員への民事上の安全配慮義務があり、精神面も含めて安全で健康的に働ける職場環境を作るよう、必要な措置や配慮をします(労働契約法第5条)。

近年では、パワーハラスメントによって従業員の安全や健康が損なわれることが大きな問題となっています。働き方改革の推進や新型コロナウイルス感染症の拡大といった影響もあるため、働き方や職場環境のあり方の変化にしっかりと対応することが重要です。

少し専門的な分野にはなりますが、安全衛生は企業で安心して働くために欠かせない業務です。こちらで安全衛生で行うべき業務について詳しく解説しています。

安全衛生とは|日本の人事部

6. 給与計算

従業員との労働契約に基づき、毎月の給与や賞与を支払う事務を行います。給与は従業員の生活に直結する要素です。残業や休日出勤など、従業員一人ひとりの労働実態を踏まえて金額を間違わないように支給する必要があるため、正確性が求められます。

従業員の給与から天引きした税金や社会保険料は、忘れずに納付します。生命保険など民間企業の保険料や社宅費用、組合会費などを徴収する場合には、賃金控除の協定を締結する必要があります。年末調整を外注していない場合は、毎年11~12月に年末調整関係の業務が発生します。

7. ハラスメントへの対応

ときにはパワハラやセクハラなど、ハラスメントへの対応を担当する場合もあるでしょう。従業員が働きやすい職場環境を作るためには、良好な人間関係を保つことも重要です。必要に応じて人事などと連携し、指導や配置転換などの解決策を検討します。

ハラスメント対策は「ハラスメントの本質」をつかむことが第一歩
○○ハラという言葉が氾濫する今日、ハラスメントの本質をつかんで、対応を定めておく必要があります。

ハラスメントとは|日本の人事部

「労務管理システム」導入ポイントまとめ
労務管理の業務を効率化する「労務管理システム」を外部から導入する場合に役立つ記事です。代表的な機能と選定ポイントを解説しています。

労務管理システムの導入メリットと比較ポイント 『日本の人事部』おすすめの労務管理システム|日本の人事部

3. 労務管理にかかわる法律上のルール

3. 労務管理にかかわる法律上のルール

労務管理は、法的対応を要する仕事であるため、分野ごとに関連する法律やルールを理解しておくことが重要です。

ここからは、業務のカテゴリごとに、特に覚えておくべきルールと法律の根拠を紹介します。

※この章は、「やさしい労務管理の手引き|厚生労働省」をもとに作成しています。

労働時間

労働時間や労働契約については、主に労働基準法と労働契約法で定められています。理解しておくべきルールは下記の通りです。

理解しておきたい「労働時間や労働契約」のルール

  • 従業員の労働時間の上限は、1日8時間、1週間40時間。(労働基準法第32条)
  • 使用者は、労働者の1日の労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を取らせること。(労働基準法第34条)
  • 使用者は労働者に毎週1日以上の休日、もしくは4週間に4日以上の休日を与えなければならない。(労働基準法第35条)
  • 法律で定められた労働時間を超えて労働させる場合は、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者と36協定を締結し、労働基準監督署に届け出なければならない。(労働基準法第36条)
  • 使用者と労働者の間で合意があるときには、労働時間などの労働条件を変更することができる。(労働契約法第8条)
  • 使用者は労働者の合意なしに、就業規則の変更によって労働条件を労働者の不利益に変更することはできない。(労働契約法第9条)
  • 就業規則の変更によって労働時間を変える場合、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ就業規則の変更が以下の事情などに照らして合理的でなければならない。(労働契約法第10条)
    ①労働者の受ける不利益の程度
    ②労働条件の変更の必要性
    ③変更後の就業規則の内容の相当性
    ④労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情

出典

年次有給休暇

年次有給休暇は、労働基準法に定められています。従業員の勤続年数によって取り扱いが変わるので、しっかりと理解しておきましょう。

理解しておきたい「労働基準法」

  • 雇用した日から6ヵ月間継続して勤務し、かつ全労働日の8割以上出勤した労働者には、10日間の年次有給休暇を付与しなければならない。その後、1年ごとに下表の通り休暇を付与しなければならない。なお、この場合も1年間の全労働日において8割以上出勤した労働者が付与対象である。(労働基準法第39条1項、2項)
    勤続年数 6ヵ月 1年6ヵ月 2年6ヵ月 3年6ヵ月 4年6ヵ月 5年6ヵ月 6年6ヵ月以上
    有給の付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日
  • 年次有給休暇は基本的に1日単位での取得となるが、あらかじめ労使協定を結んでいる場合は、5日分を限度として時間単位で取得できる。(労働基準法第39条4項)
  • 年次有給休暇は、労働者の指定する時季に与えなければならない。ただし、労働者が指定した時季に年次有給休暇を与えることで事業の正常な運営を妨げる場合は、使用者は他の時季に変更することができる。(労働基準法第39条5項)
  • 労使協定で年次有給休暇を与える時季についての定めをしたときは、年次有給休暇日数のうち5日を超える分について、使用者が時季を指定して取得させることができる。(労働基準法第39条6項)

出典

採用

採用にあたっては、特に労働契約を結ぶ際に注意すべきルールがあります。詳細は下記の通りです。

理解しておくべき「労働時間や労働契約」のルール

  • 労働契約には下記の項目を盛り込まなくてはならない。(労働基準法施行規則第5条)
    (1)労働の契約の期間
    (2)労働契約に期限の定めがある場合、更新の基準
    (3)労働者が就業する場所や従事する業務について
    (4)始業及び終業の時刻、残業の有無、休憩時間、休日、休暇など
    (5)賃金の決定、計算および支払方法、締切および支払日、昇給について
    (6)退職についての決まり(解雇の事由を含む)
  • 期間の定めがある契約は原則として3年を超えてはならない。(労働基準法第14条)
  • 労働者を採用する場合には、上記(1)~(6)(昇給に関する事項を除く)について書面で交付しなければならない。(労働基準法第15条)
  • 指定された項目以外についても、労働契約の内容についてはできる限り書面で確認すること。(労働契約法4条2項)

出典

参考

退職

職については、さまざまな法律が影響します。従業員が気持ちよく次のステージに移れるよう、しっかりとルールを理解しておく必要があります。

「退職」で押さえておきたいルール

  • 雇用の期間に定めがない場合、労働者はいつでも退職を申し出ることができる。この場合、申し入れから2週間を経過することによって雇用は終了する。(民法第627条第1項)
  • 従業員の性別を理由とした解雇や退職の勧奨をしてはならない。(男女雇用機会均等法第6条の4)
  • 女性従業員が婚姻や妊娠、または出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。(男女雇用機会均等法第9条)
  • 労働者の解雇は、客観的かつ合理的な理由がなく、社会通念上相当な理由がなければ、権利の濫用として無効とする。(労働契約法第16条)
  • 労働者の定年を定める場合、60歳を下回ることはできない。(高年齢者雇用安定法第8条)

出典

賃金

賃金は従業員の生活に直結する要素です。ルールを理解した上で正しく運用することが重要です。

理解しておくべき「労働時間や労働契約」のルール

  • 賃金とは、名称を問わず、労働の対償として労働者に支払う全てのものをいう。(労働基準法第11条)
  • 賃金は、「通貨で」「労働者に直接」「全額を」「毎月1回以上」「一定期日を定めて」支払わなければならない。ただし、法令や労使協定で定めている場合は、賃金の一部控除が可能となる。なお、ボーナスなどの臨時的に支給する賃金は例外である。(労働基準法第24条)
  • 労働者の同意を得た場合には、銀行振込みなどの支払いも可能になる。(労働基準法施行規則第7条の2)
  • 下記の条件を満たす場合、時間外労働や休日労働に対して割増賃金を支払わなければならない。(労働基準法第37条)
    ①法定労働時間を超えたとき:割増率25~50%
    ②1ヵ月の時間外労働が60時間を超えたとき:割増率50%以上(中小企業は猶予期間あり)
    ③22時~5時の深夜帯に勤務したとき:割増率25%以上
    ④休日に勤務したとき:割増率35%以上
  • 使用者は賃金台帳を作成し、賃金計算の基礎となる事項や賃金の額などを記入しなければならない。(労働基準法第108条)
  • 労働者に対しては、最低賃金額以上の賃金を払わなければならない。(最低賃金法第4条)

出典

身体の健康、メンタルヘルス

受診させる義務のある健康診断や、ストレスチェックなど、身体の健康やメンタルヘルスに関するルールも外せません。

理解しておくべき「労働時間や労働契約」のルール

  • 使用者は労働者に対して、生命および身体などの安全を確保した上で労働できるよう、安全配慮義務がある。(労働契約法第5条)
  • 事業者は労働者に対し健康診断を行う義務がある。(労働安全衛生法第66条1項)
  • 常時雇用する従業員が50人以上の事業所では、労働者に対し、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者によるストレスチェックを実施する義務がある。(労働安全衛生法第66条の10)
  • ストレスチェックの結果は、実施者である医師などから労働者に対して結果が通知されなければならない。なお、ストレスチェックの結果は本人の同意なく事業者に提供してはならない。(労働安全衛生法第66条の10第2項)
  • ストレスチェックの結果、高ストレスと判断された従業員が面接指導の希望を申し出た場合、医師による面接指導を行わなければならない。(労働安全衛生法第66条の10第3項)
  • 面接の結果、医師の意見を勘案して、労働者の実情を考慮した上で必要に応じて就業場所の変更や作業の転換などの適切な措置を講じなければならない。(労働安全衛生法第66条の10第6項)

出典

ハラスメント

従業員が安心して働くためには、良好な人間関係が不可欠です。労務管理ではハラスメントに対応することも業務の一つであるため、しっかりと理解しておかなければなりません。

理解しておくべき「労働時間や労働契約」のルール

【パワーハラスメント】

  • 事業者は、職場での優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの(パワハラ)により、従業員の労働環境などに問題が生じないよう、適宜相談に応じなければならない。また、適切に対応するために必要な体制の整備とその他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。(労働施策総合推進法第30条の2第1項)
  • 事業者は、パワハラに関する相談を行ったことや事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該従業員に対して解雇などの不利益な取り扱いをしてはならない。(労働施策総合推進法第30条の2第2項)

【セクシャルハラスメント】

  • 事業者は、職場での性的な言動(セクハラ)によって従業員の労働環境などに問題が生じないよう、適宜相談に応じなければならない。また、適切に対応するために必要な体制の整備とその他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。(男女雇用機会均等法第11条1項)
  • 事業者は、セクハラに関する相談を行ったことや事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該従業員に対して解雇などの不利益な取り扱いをしてはならない。(男女雇用機会均等法第11条2項)
※これらのルールは、事業者に対する措置義務として定められています。

出典

教育訓練、特別休暇、その他福利厚生

教育訓練や特別休暇、その他の法定外福利厚生については、基本的に企業が独自で設定してもよい制度です。ただし、公正で適切な労務管理のためには、影響を受ける法律をしっかり理解しておくことが重要です。

関連する法律は下記の通りです。

理解しておくべき「労働時間や労働契約」のルール

【教育訓練】

  • 教育訓練の実施にあたって、性別を理由として差別的な取り扱いをしてはならない。(男女雇用機会均等法第6条)
  • 使用者は、段階的かつ体系的に派遣労働者が業務に必要な技能や知識を習得できるように教育訓練を実施しなければならない。(労働者派遣法第30条の2)

【特別休暇】

  • 特別休暇も休暇であり、導入する場合には、就業規則にその内容を定める必要がある。(労働基準法第89条)
  • 特別休暇について明記した就業規則を、労働者に周知しなければならない。(労働基準法第106条)
  • 一度定めた特別休暇の制度内容を変更する場合、変更が労働者の不利益とならないよう、法律で指定された手続きにのっとって就業規則の改正手続きを行わなければならない。(労働契約法第9条、10条)

【その他の福利厚生】

  • 事業者は、労働者の性別を理由として、福利厚生の措置に関する差別的な扱いをしてはならない。(男女雇用機会均等法第6条)
  • 労働契約に、貯蓄の契約や貯蓄金の管理についての内容を付随してはならない。(労働基準法第18条)

出典

労務管理を学ぶ本

労務管理を適切に学ぶためには、書籍から知識を得ることも有効な方法です。ここでは、労務管理を勉強するためにおすすめの3冊を紹介します。

『「労務管理」の実務がまるごとわかる本』 

特に労務管理の初心者におすすめしたい書籍です。労務管理を網羅した内容となっており、基礎知識からリスクを抑えるために覚えておきたい実践的な内容まで、この一冊で幅広く学べる点が魅力的です。経験・実績ともに豊富な5名の社会保険労務士により、説明が非常にわかりやすく書かれています。

『2020年版 まるわかり給与計算の手続きと基本』

労務管理の中でも、複雑でミスが生まれやすい業務が給与計算です。この書籍は、給与計算に特化して、基礎知識や事務の流れ、関連する法律などを明解にまとめています。給与計算に関する入門書といえるでしょう。フローチャートや図解を用いて説明されているので、給与に関する知識が浅い人でも、わかりやすく学ぶことができます。

『管理職になるとき これだけは知っておきたい労務管理』

管理職の役割と責任を踏まえた、労務管理との関わり方について学べる書籍です。管理職が必ず知っておくべき法律上のルールから、法律に即した実践的な労務管理の方法まで、図解なども用いてわかりやすく説明しています。

まだ労務管理への理解が十分でない新任管理職はもちろん、これまでのやり方を見直したいベテランの管理職にもおすすめです。

業務整理のお供に『日本の人事部』人事カレンダー

労務管理をはじめ人事(HR)の業務を整理するためツールとして、『日本の人事部』では業務カレンダーを用意しています。事労務担当者が行うべき手続きや業務を月別に掲載し、各業務に「完了」「未完了」のチェックをつけることができる機能を設置しています。ぜひ日々の業務にお役立てください。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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・法令に違反する、または違反のおそれがある記載のあるもの
・差別につながるもの
・事実に反する情報を記載するもの
・営利目的の宣伝・広告を含んだもの
・その他、内容が不適切と判断されるもの
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「労務管理」のテーマ一覧

就業規則

就業規則とは、賃金、労働時間、休日・休暇などの労働条件や服務に関する事項など、職場内で労働者が守るべき規律について定めた規則の総称をいいます。企業の健全な事業維持・発展のために重要であり、その内容は法律で定められた記載事項や義務に基づいていなければなりません。 就業規則の法的根拠は、労働基準法第89条の規定にあります。常時10人以上の労働者を使用する使用者は定められた事項の就業規則を作成することが義務付けられています。その後の法改正に応じ、就業規則作成義務に付随する関連事項も変更されています。

懲戒

懲戒とは、使用者(事業主・企業)が従業員の企業秩序違反行為に対して科す制裁罰のことです。企業は従業員の問題行動に適切に対応することで、企業秩序を維持できます。 懲戒処分には、問題行動の重要度に応じて七つの種類があります。問題行動の内容に応じて、法律や就業規則に沿って処分しなければ、処分そのものが無効になる可能性があります。就業規則に定められた懲戒処分の事由に該当するかどうか、過去の同様の事例と比べて処分が重すぎることはないか、問題行動の程度と処分の重さが合っているかといった点に注意し、明確な判断基準をもとに適切な手順を踏んで処分を行わなければなりません。