フレックスタイム制
フレックスタイム制とは?
フレックスタイム制とは、一定期間に働く総労働時間をあらかじめ決めておき、労働者はその時間内であれば何時に出社・退社してもよいとする仕組みです。英語の「flex=曲げる、柔軟性」に由来します。働き方改革、副業解禁、テレワーク導入により、個々人の働き方が多様化する中、労働者が勤務時間帯を自由に決められるフレックスタイム制に注目が集まっています。
1.フレックスタイム制の歴史と背景
国内におけるフレックスタイム制の歴史は、1987年に労働基準法が改正され、1988年4月に改正法が施行されたことが始まりです。導入の背景には、日本の産業構造の変化や働き方の変化があります。高度経済成長期を経て一定の経済的地位を獲得した日本は、労働基準を国際基準に合わせる必要がありました。
また、第三次産業の成長をはじめとした産業構造の変化により、女性の社会進出の機運も高まりました。ワーク・ライフ・バランスを重視した働き方が求められるようになり、企業側が労働者の能力を生かせる体制をとる必要性があったのです。
近年は日本経済が停滞し、生産性向上が求められるようになりました。2019年には働き方改革関連法が施行され、多くの企業で副業解禁やテレワーク推進といった動きが活発化しています。さらに新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワークを導入する企業が急増。働く人・働き方の多様化により、フレックスタイム制への注目が集まっています。
コアタイムとフレキシブルタイム
フレックスタイム制を導入する際は、「コアタイム」と「フレキシブルタイム」の違いや、それぞれのメリットを理解することが重要です。
コアタイム
コアタイムとは、労働者が必ず勤務しなければならない時間帯のことです。コアタイムを10〜15時と定めた場合、その時間帯は必ず出勤しなければいけません。コアタイムの時間帯は企業により異なります。
コアタイムを設定するメリットは、会議や情報共有、共同作業の必要がある場合において、労働者全員がそろう勤務時間帯の確保が可能になることです。
ただし、採用募集でフレックスタイム制を打ち出す際は、コアタイムの有無やその時間帯を募集要項に記載して、労働者と労使協定を結んであらかじめ通知し、合意を得る必要があります。既存の従業員も同様です。コアタイムの時間帯を変更する際にも都度、労使間の合意が必要であることに注意が必要です。
フレキシブルタイム
フレキシブルタイムとは、労働者自身が始業・終業時刻を自由に決められる時間帯のことです。例えば、8~19時のフレックスタイム制で、コアタイムを10〜15時とした場合は、8〜10時と15〜19時がフレキシブルタイムです。一般的には、コアタイムを挟むようにフレキシブルタイムを設定します。
フレキシブルタイム内であれば、労働者一人ひとりが勤務時間を調整できるため、通勤ラッシュを避けた移動、子どもの送り迎え、通院などに時間を充て、ワーク・ライフ・バランスを保つことができます。フレキシブルタイムを設定するときは、所定労働時間全体に占める割合を短くしないように注意しなければなりません。労働者の裁量が低くなるのは、フレックスタイム制の趣旨に反します。
スーパーフレックスタイム制とは
フレックスタイム制よりも、さらに働き方の自由度を高める勤務体系として、スーパーフレックスタイム制があります。フレックスタイム制にあるコアタイムをなくし、企業が定める月間総労働時間を満たしながら、労働者自身が始業・終業時刻を自由に設定できる制度です。
新型コロナウイルスの感染対策で政府が企業のテレワーク導入を推奨する中、スーパーフレックスタイム制は働く場所や時間を問わない新しい働き方として注目を集めています。しかし労働者の勤務実態を把握する方法には課題もあり、業種や職務内容によっては導入が難しい場合もあります。
さらに労働者に主体性を持たせることになるので、セルフマネジメント能力が高い労働者でなければ、生産性を下げる要因になりかねません。導入を検討する際には、人材採用や教育の観点でも現状を見直す必要が生じるでしょう。
フレックスタイム制と裁量労働制、変形労働時間制の違い
フレックスタイム制を、裁量労働制または変形労働制と混同する人も少なくありません。どのような違いがあるのでしょうか。
裁量労働制との違い
勤務実態の把握が難しい職種に限定された制度
裁量労働制とは、「みなし労働時間制」とも言われ、その日の実際の労働時間に関係なく、あらかじめ取り決めた時間分を働いたとみなす制度です。例えば外回りの営業パーソンの場合、昼休憩の時間も日によって変わりますし、商談先への直行、あるいは商談先から自宅までの直帰があれば、一人ひとりの勤務実態を正確に把握するのは容易ではありません。
このような場合に裁量労働制では、業務の性質上業務を進める手段や時間配分を労働者に委ねて「所定労働時間を働いたとみなす」ことができます。ただし、裁量労働制を採用するためには、あらかじめ雇用主と労働者間で労働時間を決めておく必要があります。また、裁量労働制は全ての業種で適用できるものではなく、19種類の業務に限定されている点に注意が必要です。
項目 | フレックスタイム制 | 裁量労働制 |
時間の自由度 | △(コアタイムありの場合) | ◯ |
職種の自由度 | ◯ | △(19職種に限定) |
労働時間に対する給料 | ◯ | △(実働時間超過の場合有) |
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変形労働時間制との違い
企業目線か労働者目線かが大きな違い
フレックスタイム制は、変形労働時間制の一種とみなすことができます。変形労働時間制とは、繁忙期と閑散期の業務量に差がある場合において労働時間を柔軟に調整する制度のことです。労働時間は、週単位・月単位・年単位で設定でき、設定された時間内であれば、1日の労働時間を自由に決められます。
フレックスタイム制は、変形労働時間制の中でも、労働する時間を労働者が自由に決める点に大きな特徴があります。フレックスタイム制以外の変形労働時間制は、あくまでも繁忙期・閑散期の業務差に対応することが目的で、企業側が時間を決定します。
2. フレックスタイム制における残業時間や休日の考え方
固定された時間で勤務しないフレックスタイム制において、残業時間や休日をどのように考えればいいのでしょうか。
「清算期間内の総労働時間」を超えたら残業代発生
フレックスタイムにおける残業のポイント3点
フレックスタイム制では、清算期間内の総労働時間を超えた分を残業代として支払う必要があります。フレックスタイム制における残業の考え方には三つのポイントがあります。
- 残業時間は「実労働時間-定められた総労働時間(法定労働時間)」として計算する。
- 総実労働時間は、法定内労働+時間外労働の合計で計算する。フレックスタイム制のもとで、休日労働(1週間に1日の法定休日に労働)を行った場合は、個別に計算する。
- 固定残業代を給与に含めている場合は、あらかじめ設定した残業時間を超えた時間分を、超過残業代として別途支払う。
例えば、ある企業で次のようなフレックスタイム制を導入しているとします。
- コアタイム 10:00〜15:00
- フレキシブルタイム 8:00〜10:00、15:00〜20:00
- 標準労働 1日8時間×22日
上記の場合において、ある1日に10時に就業して21時まで残業したとしても、残業代は支給されません。なぜなら、1日だけ標準労働時間8時間を超えても、残業代の支給条件を満たすためには週の平均労働時間が40時間を超えなければならないからです。標準労働時間1日8時間×22日=176時間を超えた分を残業代として支給することになります。
清算期間が1ヵ月を超える場合
事前に36協定の締結が必要
2019年4月以降、清算期間が最長3ヵ月までに延長されました。清算期間が1ヵ月を超える場合には、以下に当てはまると時間外労働としてカウントされます。
- 1ヵ月ごとに、労働時間の平均が週50時間を超える場合
- 清算期間を通じて、法定労働時間の総枠を超えて労働した場合
清算期間を通じて法定労働時間の総枠を超えて労働させる場合は36協定の締結が必要であり、残業時間の上限規制があります。つまり残業代を払うからといって、一人の労働者をいつまでも残業させることはできません。
「1ヵ月の総労働時間」に満たない場合―欠勤控除の考え方―
月間の総労働時間を満たしているかがポイント
1ヵ月の総労働時間に満たない場合については「欠勤控除」という扱いになります。欠勤控除のポイントは以下の2点です。
- 1ヵ月の総労働時間に対する不足時間分の給与はカットされる
- 清算期間中の総労働時間に不足時間分を足し合わせることが可能(ただし法定労働時間範囲内に限る)
つまり、1ヵ月の実労働時間が総労働時間を満たしていない場合は、欠勤に該当するため、企業側は労働者に対し欠勤控除(給与カット)を適用できます。
1ヵ月の総労働時間を満たしていればコアタイムは働かなくてもいい、ということではありません。労働者がコアタイムに就業できない場合は、就業規則で賞与の減給、制裁などのペナルティーを科すことも可能です。
フレックスタイム制における遅刻・早退の扱い方
コアタイムには遅刻・早退が適用
フレックスタイム制では、コアタイムを挟むようにフレキシブルタイムを設定するのが一般的です。労働者は始業時刻・退勤時刻を自由に設定でき、フレキシブルタイムで遅刻・早退という概念は基本的にありません。
ただコアタイムに関しては必ず勤務をしなければならない時間ですから、コアタイム内で遅刻・早退する場合には、ペナルティーを設定することができます。
フレックスタイム制での休日出勤の扱い方
フレックスタイム制における休日出勤には二つの形態があります。
- 法定休日労働:1週間に1日の法定休日に労働すること
- 法定外休日労働:1週間に1日の法定休日を超えて休日に労働すること
労働者が法定休日に出勤すれば休日出勤扱いになるので、法令上の義務として35%の割増賃金が発生します。
法定外休日に出勤する場合の対応は企業に任せられていますが、就業規則や労使協定であらかじめ設定・通知しておく必要があります。
例えば、事前に休日出勤を申請し振替休日設定も可能とする対応も可能です。その場合も、事前に就業規則・労使協定に明記し、労働者に伝えておかなければいけません。
フレックスタイム制における年次有給休暇の扱い方
あらかじめ標準労働時間の設定が必要
フレックスタイム制において年次有給休暇を取得した場合は、あらかじめ定めた「標準となる1日の労働時間」の時間分を働いたものとして扱います。賃金の支払いにおいては、実労働時間に「年次有給休暇を取得した日数×標準となる1日の労働時間」を加えて計算します。
例えば、標準労働時間が8時間で有給を2日取得した場合は、16時間を実労働時間に加えて計算します。
3. フレックスタイム制の導入率
国内企業の導入率を企業規模で比較
国内企業でフレックスタイム制はどの程度導入されているのでしょうか。
厚生労働省が2020年にまとめた就労条件総合調査によると、フレックスタイム制を導入している企業の割合は全体の6.1%となっています。企業規模別では「1,000人以上」が28.7%、「300〜999人」13.8%、「100〜299人」9.0%、「30〜99人」3.7%となっており、企業規模が大きいほどフレックスタイム制の導入率が高くなることがわかります。
中でも従業員数1,000名を超える大企業は4社に1社以上がフレックスタイム制を導入しており、変形労働時間制を採用していない企業(22.1%)に比べて高い割合となっています。コロナ禍でテレワーク導入の機運が高まる中、今後さらに増加が見込まれるでしょう。
一方で、国内企業の9割は中小企業が占めているため、全体で見ればフレックスタイム制が浸透しているとは言い切れません。実際に、2019年の調査によるとフレックスタイム制の導入率は全体の5.0%でした。2020年までの2年間で1.1ポイント伸びてはいるものの、日本の多くの企業に導入されているとは言いがたい状況にあります。
4. データから見る、フレックスタイム制導入のメリット・デメリット
メリット
(1)労働者が働きやすいと感じる
厚生労働省の「令和元年版 労働経済の分析」によると、フレックスタイム制を導入した企業の労働者は、勤務時間制度を設ける会社の労働者に比べて、現在の会社で働き続けたいと希望する割合が高いことがわかっています。
理由としては、ラッシュ時間帯を避けた通勤やワーク・ライフ・バランスの実現、その他主体性を持った働き方の実現によって、ストレスをためることなく働けることなどが挙げられます。
従業員が自社に働きがいを持つことは、従業員満足度の向上や定着率向上につながります。また、従業員を通して企業の外部にメリットを伝えられれば、優秀な人材獲得にもつながり、好循環をもたらすでしょう。
(2)イノベーションが起こりやすい環境
厚生労働省の「平成29年版 労働経済の分析」によると、EU諸国においてフレックスタイム制や裁量労働制といった柔軟な働き方の導入が進んでいる国ほど、イノベーションの実現割合が高いことがわかっています。
調査では、各制度の導入実績をもとにフレックスタイム制で働く労働者の割合を「低い」「平均的」「高い」の三つのグループに分類してイノベーションの実現割合を明らかにしています。フレックスタイム制で働く労働者の割合が低い企業では、イノベーションの実現割合が15.4%だったのに対し、フレックスタイム制で働く労働者の割合が高い企業では実現割合が28.4%と倍近い結果となっています。
労働時間が固定されていないことが労働者のストレスの緩和につながり、気持ちに余裕がある状態で仕事に臨むことで、業務に対する創意工夫や改善立案、新たなアイデアを生み出すきっかけとなっていると考えられます。
デメリット
(1)個別対応があるため、総務・人事に負担がかかる
フレックスタイム制は、労働者一人ひとりの始業時刻・終業時刻が異なり、勤務時間を個別に計算するため、固定時間労働に比べて総務・人事部門に負担がかかります。
厚生労働省のデータでも企業規模が大きいほどフレックスタイム制の導入率が高くなっていますが、大企業においては総務・人事部門において体制構築やシステム導入が進んでおり、これが大企業のフレックスタイム制の導入が進む要因と考えられます。
対して中小企業の場合は、一人の担当者が複数の仕事を掛け持つケースも少なくありません。勤務時間を個別に計算する対応が難しいことが、中小企業にフレックスタイム制の普及が進まない原因と考えられます。
2019年4月から清算期間が1ヵ月から3ヵ月まで選択できるようになり、ますます計算が複雑になっていることも、中小企業でフレックスタイム制導入が進まない要因の一つとなっています。
(2)従業員の時間意識低下・従業員自身による自己管理のリスク・社内コミュニケーションの低下
厚生労働省の「裁量労働制等に関するアンケート調査」では、フレックスタイム制を導入している事業所に、職場でどのような問題点が生じているのかを問いました。これによると「従業員の時間意識がルーズになること」と回答した割合が最も高く、28.5%に上りました。
ほかにも、「社内のコミュニケーションに支障が出ること」が14.5%に達しました。労働者の時間意識低下やセルフマネジメント、社内コミュニケーションに関してリスクを感じるケースが少なくないことがわかります。
一方で、「特に問題ない」という回答が47.2%と最も高い割合を占めています。フレックスタイム制導入を成功させるためには、いかに労働者のセルフマネジメント意識を高め、生産性向上につなげるかがポイントです。
フレックスタイム制のデメリットを解消するためのソリューションが多く提供されています。本制度を導入するならば、知っておくことが重要です。
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5.フレックスタイム制を導入するために ―就業規則と労使協定―
フレックスタイム制を導入するためには、あらかじめいくつかの要件を満たす必要があります。ここではフレックスタイム制の導入に向けた具体的な方策について解説していきます。
就業規則
規則内に明記し労働者へ通知が必要
就業規則は、労働条件などに関する具体的な項目を定めた規則集のことです。フレックスタイム制を導入する際は、始業時刻・終業時刻を労働者の決定に委ねることを、あらかじめ就業規則内に明記する必要があります。
また、清算期間や清算期間内の総労働時間についても、あらかじめ設定をした上で就業規則内に明記します。コアタイム、フレキシブルタイムを設定した場合は、合わせて明記する必要があります。
就業規則のテンプレートは以下よりダウンロードできるので、ぜひ活用してください。
フレックスタイム制就業規則の例│日本の人事部
労使協定
労使協定に記載すべき必要事項は五つ
フレックスタイム制を導入する際はあらかじめ労使協定を結び、対象者や時間などを定めておく必要があります。労使協定に入れるべき必要事項は五つあります。
1. 対象となる労働者の範囲
誰が対象になるのかを明確にする
フレックスタイム制の対象となる労働者の範囲について「全労働者」または「特定の職種の労働者」と定めることが可能です。「特定の職種の労働者」は個人、部署、役職などが考えられます。
勤務時間を固定する必要のある職種に従事する労働者(警備員、受付など)や、精勤手当・皆勤手当を支給している労働者はフレックスタイム制の対象にならないことに注意が必要です。
2. 清算期間の起算日と長さ(3ヵ月以内)
2019年4月より最長3ヵ月に延長
清算期間とは、フレックスタイム制において労働者の実労働時間と、あらかじめ定めた総所定労働時間を清算するための期間のことです。つまり、労働者が働くべき時間を選択できる枠の単位を指します。
2019年3月31日までは最長期間1ヵ月と定められていましたが、働き方改革関連法が施行された2019年4月以降は3ヵ月と期間が延長になりました。清算期間を労使協定に記載する際は、期間の長さと起算日を定める必要があります。
例えば「3ヵ月」と記載するのではなく「4月、7月、10月、1月の1日から翌々月の月末まで」などと記載します。また、清算期間を1ヵ月以上に設定する場合は、あらかじめ労働基準監督署に届け出るよう義務付けられています。これに違反した場合は、罰則(30万円以下の罰金)が科される場合もあります。
3. 清算期間の総労働時間(所定労働時間)
暦の日数によって異なるため計算が必要
清算期間内における総労働時間や標準となる所定労働時間は、1週間の労働時間が法定労働時間の範囲内に収まるように定めなければなりません。
清算期間における総労働時間は、次の計算式で求めることができます。
例えば1ヵ月を清算期間としたフレックスタイム制の場合、清算期間中の法定労働時間は次のようになります。
- 1ヵ月の暦日数が31日 177.1時間
- 1ヵ月の暦日数が30日 171.4時間
- 1ヵ月の暦日数が29日 165.7時間
- 1ヵ月の暦日数が28日 160.0時間
4. 1日の標準労働時間
有給取得時や勤務実態が把握できない場合に設定
清算期間における法定労働時間の総枠の範囲内で、所定労働日1日あたりの労働時間を定めることもできます。標準労働時間を定めておかなければ、フレックスタイム制を導入する企業に勤める労働者が取得した、有給休暇の時間計算ができなくなります。
例えば、標準労働時間8時間と定めておけば、労働者が有給休暇を取得した際に8時間相当の労働をしたとみなすことができます。また、テレワークや営業パーソンの外回りなど事業場外労働をし、労働時間の算定が難しい場合にも8時間労働したものとして計算することが可能です。
5. コアタイムやフレキシブルタイムの時間帯
コアタイムの占める割合が多い場合は注意
フレックスタイム制を導入し、コアタイムやフレキシブルタイムを設定する場合は、それらの時間を明らかにする必要があります。
例えば、
- コアタイム 10:00〜15:00
- フレキシブルタイム 8:00〜10:00、15:00〜19:00
などとします。
フレックスタイム制において、コアタイムを設定するのは必須ではなく、スーパーフレックスタイム制として1日の勤務時間をすべて自由に設定することも可能です。
労使協定のテンプレートは以下のリンクからダウンロードできます。ぜひ活用してください。
フレックスタイム制の労使協定の例│日本の人事部
6.フレックスタイム制が適している業界・職種とは
個人裁量で完結できる職種がフレックスタイムに適している
厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査」では企業にフレックスタイムを採用しているか、業種別にまとめました。これによると「電気・ガス・水道」が29.6%と最も高い導入率を示し情報通信業(24.0%)、専門・技術サービス業(14.1%)、製造業(13.8%)と続きました。一方、医療・福祉(0.2%)、教育・学習支援業(0.7%)、複合サービス事業(2.1%)、宿泊・飲食サービス(2.5%)で、人と接する機会の多い業界ではフレックスタイム制が浸透していないことが浮き彫りとなりました。日によって業務量が変わるような業界では、個人の裁量で業務時間を調整することが難しいこともわかります。
職種についても同様で、個人の裁量で進められるような仕事であればフレックスタイム制が適しています。具体的には、IT関連職であればWebデザイナー、開発エンジニアなどが挙げられますし、研究職など技術系の職種も個人の裁量が大きく、フレックスタイム制に向いているでしょう。
一方でチームでの共同作業や情報共有の頻度が高い場合は、IT関連職であってもフレックスタイム制がなじまない場合もあります。一概に職種のみで判断することは難しいといえるでしょう。フレックスタイム制を導入したことで生産性が下がってしまえば本末転倒です。仕事の内容や現場の実態を踏まえて、個人が裁量をどれだけ持てるかが、フレックスタイム導入の判断の分かれ目となります。
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