成長過程にある企業では、現状に合う組織づくりや人の育成が後追いになってしまうことも少なくありません。必要な人材は外部からも採用し、社内の人材を含めて個々の資質を見極めて配置、育成を行いながら、できる限り早く企業の成長に寄与する組織をつくることが求められます。そのためには計画的に人材を育成、投資し、人材の適材適所に役立つタレントマネジメントが重要です。加えて、現在は働き方改革が重要なテーマとなっており、残業削減などへの対応も必要となっています。これらの課題に対し、企業はどのように取り組んでいけばいいのでしょうか。この1年で株価が10倍と急成長を遂げ、現在、組織体制の変革に取り組んでいるヤマシンフィルタ管理本部長の井岡周久氏と、SAPジャパンの南 和気氏が語り合いました。
南:貴社の近年の成長が大変話題になっていますが、あらためてヤマシンフィルタの現在の状況についてお聞かせください。
井岡:私はこの会社に来て5年目ですが、まさにこの5年間は、会社にとって大きな変革期でした。弊社の主力製品は、建設機械の油圧回路に用いるフィルターです。世界の建設機械の主要メーカーの製品には、標準品として入っています。マーケットは日本、北米、ドイツを中心とした欧州。シェアは7割以上を占め、グローバルトップニッチのポジションにあります。油圧で使うフィルターは、人間でいえば腎臓の働きをする機能性部品です。そのフィルターが取るゴミは、数マイクロミクロンといったごく小さなもの。弊社では素材から自社で開発し、川上から川下まで一気通貫ですべてを自社で製造しています。グローバルでも類を見ない、製造メーカーだと思います。
弊社は2014年10月に東証二部に上場し、2016年3月に第一部銘柄に指定されました。私は入社以来、社長に対して「早いうちに時価総額300億円を目指す経営をしてほしい」と伝えてきました。それを実現しない限りはIPOをする意味がない、とも言いました。そして、一部に上がって今何が起きているかというと、東証上場会社が3500社以上ある中で、1年間の株価の上昇率は弊社がトップでした。2016年3月で時価総額50億円だったのが、その1年後には500億。なんと10倍です。
その理由は、会社が置かれている外部環境が好転しているというポジティブな面もありますが、第1四半期を踏まえて利益収益性が上がっているだけではなく、近い将来、中期的な成長の中で1000億円というコミットメントに対する可能性をアナリストが見てくれているからです。まさにIRの成果であり、会社がここまで成長していくと、経営陣も以前のように無借金経営を目指すのではなく、きちんとレバレッジをきかせた経営をしていかなければなりません。