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事業所内保育施設を作る強い味方!内閣府が主導する「企業主導型保育事業」とは

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2016年4月に内閣府が「企業主導型保育事業」をスタートしました。これは、企業が従業員のための保育施設を設置する際に整備費・運営費について助成する制度です。「企業のイニシアチブで同制度を利用できる」「従業員の様々な働き方に応じた、柔軟な保育サービスの展開が可能」「他社との共同設置・共同利用なども可能」などのメリットもあります。
では、具体的にはどのような制度で、どの程度の助成が受けられるのでしょうか。制度を利用するためには、どのような条件があるのでしょうか。内閣府 子ども・子育て本部参事官の竹林 経治さんにうかがいました。

プロフィール
竹林経治氏 プロフィールPhoto
内閣府子ども・子育て本部参事官(子ども・子育て支援担当)
竹林 経治氏
平成4年4月厚生省(現・厚生労働省)入省。
厚生労働省保険局総務課課長補佐、同省保険局医療課保険医療企画調査室長、同省障害保健福祉部障害福祉課障害児・発達障害者支援室長 兼 地域生活支援推進室長等を歴任。途中、社会保険庁、北海道庁、タイ王国保健省等へ出向。平成27年6月より現職。

―― 「企業主導型保育事業」が導入された背景をお教えください。

最も大きな要因としては、「待機児童問題」があります。政府は2016年6月に「ニッポン一億総活躍プラン」を閣議決定し、目標として希望出生率1.8の実現を掲げています。これを実現させるためには「新・三本の矢」の中の第二の矢「夢をつむぐ子育て支援」にも通じますが、結婚から妊娠・出産、子育てまで切れ目のない支援を行うこと、中でも待機児童問題の解消は重要なテーマなのです。

また、政府は、2013年度から2017年度末までの5ヵ年の計画である「待機児童解消加速化プラン」に基づき保育の受け皿整備を推進しており、この過程で2015年秋に、同プランに基づく2017年度末までの保育の受け皿整備量の目標を40万人分から50万人分に拡大しました。この上乗せされた10万人分のうちの5万人分については、企業からの拠出金(※)を財源として事業所内保育施設設置を助成することで確保する案が浮上。それが今回のテーマである、「仕事・子育て両立支援事業」のうちの一つである「企業主導型保育事業」です。

「仕事・子育て両立支援事業」を導入するための「子ども・子育て支援法」の一部改正法が、2016年4月1日から施行されたため、2016年度、2017年度の2年間に最大5万人分の保育の受け皿を確保することを目標として、企業主導型保育事業が実施されることになったのです。

※事業主拠出金の拠出金率は、2016年度は0.2%(+0.05%(約835億円))、2017年度は0.23%(+0.08%(約1,300億円))を予定。

―― 「企業主導型保育事業」の特徴をお教えください。

現在の日本企業では、働き方の多様化が進んでいます。本制度を利用すれば、企業のイニシアチブで保育施設を設置・運営できるため、従業員のさまざまな働き方に応じた、柔軟な保育サービスが展開できます。

竹林 経治氏 インタビューの様子

例えば、小売、飲食、公共交通機関など、夜間や休日に働く従業員が多い企業では、それに対応した保育施設を設置できます。また、非正規社員や短時間勤務の社員についても対応しやすい仕組みです。

さらに、本制度では、複数企業が共同で保育施設を設置することなども可能。助成される整備費・運営費も認可施設並みとなっているので、中小企業でも制度を利用しやすい仕組みです。認可保育所とは異なり、自治体の認可を必要とせず、認可外保育施設の設置について都道府県等に届け出た上で、助成申請を公益財団法人児童育成協会に行うことになります。

このような仕組みにより、「育児休業制度などを活用しつつ、出産後も働くことができる職場環境を整備することにより、企業の人材確保や女性職員の活躍推進につながる」と考えています。

―― 制度を利用できるのはどのような方でしょうか。

主に三つのパターンに分かれます。

一つ目が、子ども・子育て拠出金を負担している事業主(厚生年金の適用事業所など)が、自ら事業所内保育施設を設置し、本制度を利用する場合です。複数企業による共同設置や、ある企業が設置した保育施設を、他の企業が設置企業との間で利用契約を交わして、自社の従業員の子どもを受け入れてもらうといった共同利用も可能です。

二つ目が、保育事業実施者(保育所などを運営している事業者)が設置した認可外保育施設を、子ども・子育て拠出金を負担している事業主が活用する場合です。

三つ目が、既存の事業所内保育施設の空き定員を、設置者以外の子ども・子育て拠出金を負担している事業主が活用する場合です。

企業主導型保育事業:事業の実施者

ただし、国・地方公共団体や、子ども・子育て支援法に基づく施設型給付費、特例施設型給付費などを受けている施設・事業所、「地域医療介護総合確保基金」「事業所内保育施設設置・運営等支援助成金」、その他、公的助成を受けて実施している事業、申請前5年間に保育施設の閉鎖命令や助成の取り消しなどを受けていた場合は本制度の対象外です。

また、本制度を利用して設置された保育施設は、認可外保育施設として児童福祉法に基づき、都道府県等の指導・監督を受けることになります。そのため、児童福祉法第59条の2第1項の規定に基づき、都道府県等に対し届出を行う必要があります。

―― 制度を利用した場合の保育施設の定員枠についてお教えください。

これについては各事業者が、ニーズを見込んでどのように定員を設定するかによりますが、二つの種類があります。

一つ目は、「従業員枠」。制度を利用する企業、すなわち保育施設を設置した企業の従業員の子ども、または設置企業と利用契約を締結した企業の従業員の子どもを受け入れるための枠です。

二つ目は、「地域枠」。地域の住民など、従業員枠の対象外の児童を受け入れるための枠です。設定するかどうかは任意ですが、地域枠を設ける場合は、総定員の50%以内の範囲で設定できます。

ただし「従業員枠」も、「地域枠」も、保護者のいずれもが就労要件などを満たすことが必要です。

企業主導型保育事業:利用対象者等

改めて今までお話しした内容をイメージしやすいように、図にまとめましたのでご参照ください。

企業主導型保育事業の設置イメージ
企業主導型保育事業の設置イメージ

要点をまとめると、イメージ図の左上のA社が設置者として保育施設を設置し(複数社での共同設置も可能)、A社の従業員の子どもを受け入れます。この場合、B社との間で利用契約を締結し、B社の従業員の子どもを受け入れることもできます。

また、A社が自ら保育施設を運営することも、保育事業者に運営を委託することも可能です。

「従業員枠」を利用できる事業者は、子ども・子育て拠出金を負担している事業主(厚生年金の適用事業所など)です。拠出金を負担していない企業の子どもは、「地域枠」の利用が可能です。

―― 保育従事者の配置基準などについてお教えください。

配置しなければならない保育従事者の人数の基準は、子どもの年齢によって異なります。

乳児の場合は、おおむね3人につき1人。満1歳以上満3歳に満たない幼児の場合は、おおむね6人につき1人。満3歳以上満4歳に満たない児童の場合は、おおむね20人につき1人。満4歳以上の児童の場合は、おおむね30人につき1人。これらの基準に応じて定める従事者の配置数の合計に「1」を加えた人数以上が必要で、最低2人配置しなければなりません。

企業主導型保育事業:職員配置基準

職員資格については、保育従事者数の少なくとも半数以上は、保育士資格を有している必要があり、保育士以外の保育従事者は、地方自治体や児童育成協会が実施する「子育て支援員研修」等を修了する必要があります。

※「子育て支援員」とは、国で定めた「基本研修」および「専門研修」を修了し、「子育て支援員研修修了証書」の交付を受けたことにより、子育て支援員として保育や子育て支援分野の各事業などに従事する上で必要な知識や技術などを修得したと認められる方のことを指します。

以下の図をご覧ください。企業主導型保育事業における保育従事者については、真ん中の「地域保育コース」のうちの「地域型保育」の研修等を修了しなければなりません。

子育て支援員研修の体系
子育て支援員研修の体系

保育の質を向上させるため、保育士の割合が75%、100%と高くなるほど、補助単価が高くなる仕組みにしています。また、本制度の運営・設備基準は、児童福祉法上の事業所内保育事業と基本的に同様の基準です。なお、「認可外保育施設指導監督基準」については当然遵守しなければなりません。保育の質を確保するため、その点のルール作りには注意を払いました。

―― 制度を利用するにあたり、企業としてどのような点に留意すべきでしょうか。

これから述べる七つの点に留意してほしいと考えています。

一つ目は、本制度を利用して設置された保育施設は、児童福祉法第59条の2第1項の規定に基づき、都道府県等への届出を行い、認可外保育施設として都道府県等の指導・監督を受けるということです。

二つ目は、共同利用に当たっては、設置企業と利用企業の間で「利用定員」や「費用負担」を契約上明確化しておく必要があることです。

竹林 経治氏 インタビューの様子

三つ目は、運営費の助成額は、基本分単価から「利用者負担相当額」を控除した額になること。この「利用者負担相当額」は、子ども・子育て支援新制度の利用者負担額の平均的な水準として設定され、所得にかかわらず一人当たり月額で、4歳以上児 26,600円、3歳児 29,500円、1、2歳児 34,200円、0歳児 34,300円とされております。保育料の設定については、この水準を必要以上に超えない範囲で設定することが必要です。なお、認可保育所と同様、通常の保育の範囲に収まらない特別な教育を行う場合の上乗せ徴収や、日用品・文房具などについての実費徴収も可能です。

四つ目は、定期的な第三者評価の受審に努め、必要に応じ国や児童育成協会による助言・指導に応じることが規定されていることです。

五つ目は、利用者または保護者からの苦情の窓口などを設置する必要があることです。

六つ目は、保育の質の確保と重大事故防止の観点から、「保育所保育指針」を踏まえ、保育を実施するとともに、2016年3月に公表された「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」を参考に適正な対応を行うことです。このガイドラインには、例えば、事故が発生しやすい場面ごと、すなわち睡眠中、プール活動・水遊び、誤嚥(ごえん)、食物アレルギーなどごとの注意事項や、緊急時の対応方法などについて記載されています。また、不幸にして事故が発生した場合には、認可施設等と同様に都道府県等へ報告が必要です。賠償責任保険などに加入し、賠償事由が発生した場合には、速やかに対応する必要があります。

七つ目は、利用者または保護者への情報提供に努めることです。

本制度では、認可の保育所を設置する場合と違って、保育施設の設置に当たって自治体の認可を必要としない仕組みになっていますが、認可の保育所と同様に建築基準法、消防法などの関係法令が適用されますし、また、特に「地域枠」を設定するような場合など、地域の待機児童の状況などを把握しておくことも重要です。そのため、助成金の申請に当たり、保育施設の設置について、あらかじめ地元の自治体に相談することが重要です。

―― 制度を利用すると、具体的にはどのような助成が受けられるのでしょうか。

助成対象のイメージ
企業主導型保育事業:助成対象のイメージ

「整備費」と「運営費」が助成されます。

「整備費」については、施設整備に必要な費用の4分の3相当分が助成されます。「運営費」については、通常の保育に必要と考えられる額から、企業の自己負担相当分および利用者負担相当分を除く部分が助成されます。

参考例として、保育施設を新設し、定員12人(0歳児3人、1・2歳児9人)、東京都特別区、11時間開所、保育士比率50%で事業を行う場合、「運営費」は約2,600万円(年額)が助成されます。この他、延長保育、病児保育などを行った場合には加算があります。「整備費」は約8,000万円が助成されます。このほか、病児保育スペース、一時預かりスペースなどをつくった場合には加算があります。

既存の事業所内保育施設の場合は、定員を増員した場合、空き定員を活用した場合の2パターンのみが助成の対象になります。

―― 整備費と運営費の助成の仕組みについて、さらに詳しくお教えいただけますか。

まず、整備費について、以下の図をご覧ください。

整備費のイメージ
企業主導型保育事業:整備費のイメージ

整備費の助成単価は、認可保育所整備費の単価と同一水準です。認可保育所整備費基準額の4分の3相当分を助成することになります。

基準額は、基本単価プラス各種加算で、基本単価は、地域区分、定員区分に応じた額、各種加算としては、環境改善加算、地域交流・一時預かりスペース加算、病児保育スペース加算などがあります。

次に、運営費については、以下の図をご覧ください。

運営費のイメージ
企業主導型保育事業:運営費のイメージ

運営費の保育単価は、子ども・子育て支援新制度の小規模保育事業などの公定価格をベースに設定されますが、基本分単価の設定に際して「企業自己負担相当分」として5%程度が差し引かれる点が公定価格とは異なります。また、助成額の計算上、基本分単価から「利用者負担額相当分」が差し引かれることになります。

基本分単価については、地域区分、定員区分、年齢区分、開所時間区分、保育士比率区分のそれぞれの区分に応じた単価が設定されます。保育士比率区分については、保育の質の向上のため、保育士の割合に応じて補助が増える仕組みを取っています。これに、延長・夜間保育加算、預かりサービス加算などの各種加算が行われる仕組みです。

―― 最後に、これまでに同制度による助成が決定した施設についてお教えください。

これまで305施設、利用定員数7,862人分についての助成が決定されました(2016年11月15日時点)。

従業員の多様な働き方に応じようと、各企業の創意工夫の下、住宅地や駅の近隣に設置、学校内への設置、大型施設内に設置し、各テナントが共同利用するなど、予想以上に特色ある設置パターンで利用されています。

今後も募集を行い、2017年度末までに最大5万人分の保育の受け皿整備を目指します。ご興味ある企業の皆さまはぜひお問い合わせください。

問い合わせ先
(1)制度について
内閣府 子ども・子育て本部  03-6257-1697
内閣府 子ども・子育て本部  03-6257-1697
(2)申請の受付先、助成の個別具体的内容などについて
公益財団法人児童育成協会 両立支援事業部 03-5766-3801
公益財団法人児童育成協会 両立支援事業部 03-5766-3801
助成決定企業へのインタビュー
「企業主導型保育事業」を活用し、
テナントで働く従業員の育児と仕事の両立を支援

神奈川・小田原市の大型商業施設「小田原ダイナシティ」を運営する、株式会社ダイナシティは、2016年に企業主導型保育事業の第1次募集に応募し、助成が決定。2017年4月から、同制度を利用した保育施設の運営を開始することになっています。企業主導型保育事業に応募した背景や応募から助成決定までのプロセスについて、浅石さんと大木さんにお話をうかがいました。

【インタビュー企業】
株式会社ダイナシティ 管理本部 本部長 浅石 文敏さん
株式会社ダイナシティ グッドヘルス事業部 部長 大木 俊幸さん

―― 貴社は人材確保に関してどのような課題をお持ちだったのでしょうか。

株式会社ダイナシティ 管理本部 本部長 浅石 文敏さん Photo
大木 俊幸さん

大木:「小田原ダイナシティ」には、アパレル、美容室、レストラン、映画館など、さまざまな業態のテナントが130店舗入っており、約1,700〜1,800人の従業員が働いています。従業員の年齢層はバラバラですが、その8割が女性。育児に直面している人もいます。テナントの営業時間は、一般店舗は10時から20時で、レストランなどは10時から22時ですが、従業員によって働く時間はさまざまです。

浅石:3年ほど前から景気が好転し、有効求人倍率も上昇するにつれて「小田原ダイナシティ」のテナントの人材確保が大きな課題となっていました。昔ほど商業施設で働くことがステータスにならない時代。女性の従業員が結婚して、子どもが生まれたら、働けなくなって辞めてしまう。新しい従業員を採用するのも難しい。そんな各テナントの声を聞き、女性が安心して長く働きたくなるような職場環境を整えないといけない、と考え始めました。

―― どのようにして企業主導型保育事業のことを知ったのでしょうか。

浅石:2015年ごろから「テナントと共同で事業所内保育所を作りたい」と市の保育課に相談していました。そんな矢先、2016年3月に「企業主導型保育事業という制度が始まる」と聞いたのです。助成申請先が公益財団法人児童育成協会だとのことで同協会に相談することにしました。

―― どのような経緯で応募したのでしょうか。

株式会社ダイナシティ 管理本部 本部長 浅石 文敏さん Photo
浅石 文敏さん

浅石:まず、5月に制度の説明会に参加しました。説明を聞くと、通常の事業所内保育所を作るよりもメリットがある、と感じました。整備費や運営費が助成され、テナントとの共同利用も可能。すぐに応募することを決め、6月の第1次募集に応募しました。保育事業専門の会社に相談しながら進めていたこともあり、書類申請などで特に困ることもなく、スムーズに手続きができました。その結果、9月に正式に助成が決定しました。

―― 実際に保育所の運営を始めるのはいつからですか。

大木:2017年4月から、「小田原ダイナシティ」の4階に保育所を設置し、運営を開始します。最初、テナントの従業員の子どもは、約20人を受け入れる想定です。地域住民の子どもを受け入れる「地域枠」も設けようと考えています。

子どもを預けられる時間は、従業員のさまざまな働く時間に合わせて、11時間と設定。保育料も安く抑えていますし、残業しても追加料金がかからないような仕組みにしています。

企業主導型保育事業の制度を利用することによって、テナントとの共同利用施設という形で実現した、当社の保育所。従業員のため、地域住民のために、安全・安心の運営を心がけていきます。


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