AI-Readyな企業の条件とは~AIを活かすメタデータとガバナンス~
三菱UFJリサーチ&コンサルティング コンサルティング事業本部 ココロミルラボ
データサイエンティスト 岡﨑 寛貴氏
チーフデータサイエンティスト 石川 恵太郎氏

日本を「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」にすることを目的とし、内閣府は人工知能基本計画[1]を策定しました。同計画では、「AI利活用の加速的推進」が第1の施策に位置づけられ、企業にとっても喫緊の課題です。しかし実際はAI導入が思うように進まない企業も多いでしょう。これまでのコラム[2]でも、AIやデータの利活用を推進するには、その目的の設定やユースケースの共有が重要である旨を述べてきました。本稿では、AIやデータの利活用の前提となる企業内のデータの現状と課題に焦点を当て、実務上の論点を紹介します。
AIに適用可能(AI-Ready)なデータの重要性
経済産業省は現在、ITに関する国家資格である情報処理技術者試験に「データマネジメント」区分の新設を検討しています[3][4]。これは、企業におけるAI・データ活用が進まない原因として、AI-Readyなデータの整備不足がある現状を踏まえた施策といえます。
では、AI-Readyなデータ整備とそのマネジメントのために企業に求められることとは何でしょうか。本稿では日本経済団体連合会が公表したAI-Readyに関するガイドライン[5]に基づき、システムレベル・データ、専門家、従業員、経営層・マネジメント層の4つの観点でAI-Readyな企業の条件を整理します。なお、同ガイドラインは2019年に公表されたものですが、2022年の資料(経済産業省)[6]などでもAI・データ活用を全社視点で捉える上での有用性が引き続き言及されています。
AI-Readyなデータマネジメントとは
システムレベル・データの観点では、データに触れる前段階で、データの用途、信頼性、責任部門などを把握できる状態を整備することが重要です。例えばデータジャケット[7]のように、データの概要や特徴を自然言語で記述しておくと、AIモデルへの投入や適切なデータ選定、コンテキスト付与が容易になります。
特に重要なのは、基幹システム内の「メタデータ化」です。ここでいうメタデータとは、データの所在(システム名・テーブル名・保管場所)、取得目的、更新タイミング、責任部門、各項目の業務上の意味やコード値の解釈、品質指標(正確性・完全性・一貫性など)といった、「データを説明するためのデータ」を指します。例えばアンケートデータであれば、基本属性には最終更新日や責任部門、調査目的・方法・期間、各回答に対応する設問、コードの意味(10代は1、20代は2、30代は3など)、回収率や欠損率、自由記述の割合、高齢者率などの備考、年代別満足度の相関分析といった想定ユースケースなどの情報が該当します。これらの情報をメタデータとして一元管理することで、初めて人間とAIの間に「共通言語」が生まれます。この共通言語によって、企業の文脈を踏まえてデータを解釈できるようになれば、現場で使えるAI-Readyなデータ活用に近づきます。
また、そのようなデータを取り扱う専門家には、IT技術だけでなく、ビジネスの文脈におけるデータの理解が求められます。このような専門家が中心となり、従業員との対話からビジネス要件を引き出せるチームを組成することは、持続的なAI・データ活用の基盤となります。
例えば、多くの企業ではデータや情報が担当者に依存しており、異動や退職の際に各データが持つ意味が分からなくなるといった課題が生じます。これを防ぐには、上記のシステムレベル・データの整備と専門チームの構築を両輪で進める、持続的な体制づくりが要となります。
企業全体でAI-Readyを実現するために
企業全体がAI-Readyになるには、メタデータ化などの整備を一部の専門家に任せるだけでは不十分です。全ての従業員が安心してAI・データ活用できるようなガバナンスやガイドラインの整備が求められます。具体的には倫理、ルール策定、人材育成を一体化した継続的なAIガバナンスを全社で整備し、業務に落とし込むことが求められます。
全社的なAIガバナンスの整備と業務への実装において経営層・マネジメント層の役割とは、現場の自助努力に任せず、トップダウンで変革を促すことです。経営者らが積極的にAI・データ活用を実践し、その姿を従業員に発信する事例[8]もあります。経営層・マネジメント層が率先する姿が、日々の仕事に追われがちな従業員の動機づけにもなり、企業全体がAI-Ready化に向けて動き出します。
[1]内閣府「人工知能基本計画(令和7年12月23日 閣議決定)」(最終確認日:2026/1/21)
[2]三菱UFJリサーチ&コンサルティング「なぜ企業のデータ利活用は上手くいかないのか?」(最終確認日:2026/1/21)
[3]日本経済新聞「情報処理技術者試験に『データ管理」新設へ デジタル人材のニーズ変化に対応」(2025年5月22日)」(最終確認日:2026/1/21)
[4]日経クロステック「『ITパスポートの次』に受ける試験新設、情報処理技術者試験見直しでデータ管理など」(最終確認日:2026/1/21)
[5]日本経済団体連合会「AI活用戦略」(最終確認日:2026/1/21)
[6]経済産業省「AI原則実践のためのガバナンス・ガイドライン ver. 1.1」(最終確認日:2026/1/21)
[7]東京大学大学院工学系研究科大澤研究室「データジャケット入力方法」(最終確認日:2026/1/21)
[8]フルスイング by DeNA「DeNA南場智子が語る『AI時代の会社経営と成長戦略』全文書き起こし」(最終確認日:2026/1/21)
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三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、三菱UFJフィナンシャル・グループのシンクタンク・コンサルティングファームです。HR領域では日系ファーム最大級の陣容を擁し、大企業から中堅中小企業まで幅広いお客さまの改革をご支援しています。調査研究・政策提言ではダイバーシティやWLB推進などの分野で豊富な研究実績を有しています。未来志向の発信を行い、企業・社会の持続的成長を牽引します。
https://www.murc.jp/

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