ストレスチェックを組織支援に活かすために
ストレスチェックの機能には、個人支援(従業員支援)と組織支援(職場環境改善)の二つの側面があります。
一般的に、ストレスチェック後の対応は個人支援が中心になりがちですが、
組織支援の取組みをしっかりしていくことで、
根本的なストレス状況の改善、不調者発生の予防につなげていける可能性があります。
集団分析結果が出た後の組織支援において、よくありがちなのは下記二つです。
1管理職層を集めて、座学でストレスチェック集団分析結果の読み方研修を実施し、
組織改善の取組みについては部署各自に任せている
2人事総務・安全衛生管理部門だけが全組織の集団分析の結果を把握し、
大きな課題が見られる個別部署のみ取り上げ、管理職者に改善を促している
1の場合、集合形式の読み方研修を実施することによって、
必要最低限の知識を管理職層全員にインプットすることができる点は良いのですが、
組織改善については現場任せとすることで、重要度はそれほど高くないと考えられてしまう可能性があります。
また、現場管理職者はメンタルヘルスの専門家ではないので、
結果から課題を掘り下げて考えたり、具体的な改善策を立てることは難しい場合も多く、
結果的にデータ上では毎年結果は大きく変わらず、課題は課題のままとなっている組織はよく見られます。
2の場合、取り上げられた部署はネガティブな評価をされたと受け止めやすく、「犯人捜し」をしたり、結果自体への不満を挙げるなど、
改善のための取り組みが行われないだけでなく、組織へのマイナスの影響が生じてしまう恐れが出てきやすくなります。
こういったことを避け、集団分析の結果を組織支援に効果的に活かすために、
部署ごとに集団分析の結果をフィードバックし、意見交換する面談の取組み(以下、部署フォロー面談)をお勧めします。
ここで、部署フォロー面談の5W1H(When、Where、Who、What、Why、How)を紹介します。
■When(いつ)
弊社がお勧めする実施タイミングは二つあります。
一つは、ストレスチェックの集団分析結果が出た後、できるだけ速やかな実施です。
1~3か月以内を目安に設定し、翌年のストレスチェック実施までに改善活動の時間を十分確保できるようにするのが良いでしょう。
もう一つは、管理職交代のタイミングです。
部署の状況をストレスチェック集団分析のデータを通して知ることで今後のマネジメントの参考になると思われます。
■Where(どこで)
多忙な管理職との面談設定のため、オンライン実施が調整しやすいでしょう。
もし対面で実施する場合は、専門職が該当部署に訪問する形をとります。
オンラインと対面、いずれの方法をとるにしても、管理職の方が安心安全に話す場の提供を心掛けていきます。
■Who(誰が/誰と)
集団分析結果の良し悪しを問わず、部署ごとに全部署の管理職が参加する形で実施します。
面談は社内外の専門職が担当します。
■What(何を)
この取組みは、ストレスチェックの集団分析結果をもとに、職場環境の改善を目的とした組織支援の一環と位置づけしています。
面談では、管理職と専門職が協力して、職場ごとのストレス要因や改善の方向性について意見交換を行います。
■Why(なぜ)
組織課題を確認するためには、定量データ(ストレスチェック集団分析結果)と定性データ(フォロー面談内容)を統合して、考えていくことが有効です。
ストレスチェック集団分析の定量データのスコアは平均値であるため、おおよそ、組織の全貌を掴むことができる一方、
組織課題が形成されたプロセスや文脈は漠然とした仮説になってしまいます。
フォロー面談では、職場のストレス要因が仕事の量、質、人間関係のどこにあり、
どうしてそのような状況が生まれているのか、
といった組織課題の背景にあたる情報を得ることができるため、
定量データから推測されていた仮説の裏付けができたり、
見えていなかった課題について広げて分析していくことが可能になります。
■How(どのように)
部署ごとに実施します。
フォロー面談では主に
・集団分析結果の読み方解説
・管理職とともに結果の確認
・上記の定量データと定性データを統合し、部署の強み/弱みの把握
・職場改善のための具体的な立案
などの内容で実施します。
ストレスチェック後のフォロー面談は、一度実施して終わりとするのではなく、
職場環境改善の取組みの効果を検討するために、毎年実施していくことが望ましいです。
評価や見直しをすることでPDCAサイクルに沿った職場改善を継続することが大切です。
以上、部署フォロー面談の5W1Hについて簡単に説明しましたが、
企業ごとに規模、構成、体制など異なりますので、
その都度進め方の調整が必要と考えられます。その際は是非専門家を活用しましょう。
(コラボレーター 張 磊)
- 安全衛生・メンタルヘルス
公認心理師/臨床心理士/キャリアコンサルタント
【専門領域】産業精神保健、復職支援、海外赴任者支援、在日中国人メンタルヘルス支援
東京大学心理教育相談室、日本家族カウンセリング協会での臨床経験を経て、東京大学学生相談所に勤務。2011年よりEAP事業会社にて、中国におけるメンタルヘルス事業の立上げ、運用体制の構築及びEAP業務全般に従事。現在は休職者の職場復帰を支援。
張 磊(チョウ ライ) コラボレータ―

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