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主体性は"同じ言葉のまま別物になる"

企業の現場で「主体性」ほど頻繁に語られる言葉はないでしょう。しかし同時に、これほど解釈がバラバラな概念も珍しいのではないでしょうか。

問題の根は深く、経営陣・人事部・現場社員の誰もが、自分たちの理解する「主体性」が絶対的なものだと信じていることにあります。同じ単語を使いながら、実際にはまったく違うものを指して話している。これでは議論が噛み合うはずもありません。結果として主体性は育たず、現場の混乱だけが続いているのが実情ではないでしょうか。

 

主体性には「三つのレイヤー」がある

多くの企業では、主体性はひとつの概念として語られがちです。
しかし、現場を見ていると、どうしても三つの階層に分けて考えざるを得ません。

レイヤー1:枠内の主体性(与えられた指示の中で工夫する)

例)決められた業務フローの中で効率化を提案する、
与えられた目標をどう達成するか自律的に考える、など。

レイヤー2:目的の主体性(目的そのものを自ら設定する)

例)「そもそも何を目指すべきか」「この業務の本来の意味は何か」を問い直し、
必要であれば目標やプロセスそのものを組み替えていく動き。

レイヤー3:意味の主体性(何を成すべきかの世界観を持つ)

例)事業や会社の枠を超えて、「社会のどんな変化をつくりたいのか」という視点から、
事業そのものの方向性を構想するレベルの主体性。

この三つは、どれが正しくてどれが間違っているという話ではありません。
ただし、「どのレイヤーの話をしているのか」が共有されないまま議論が始まると、一気に噛み合わなくなります。

  • 現場社員の多くは、**レイヤー1を“主体性の完成形”**として捉えています。

  • 経営層は、レイヤー2〜3レベルの主体性を求めて語ります。

  • 人事は、その間で翻訳役を期待されながら、自分自身はレイヤー1の文脈でキャリアを積んできたというケースが少なくありません。

この「三つのレイヤーの混線」こそが、主体性をめぐる混乱の構造です。

 

現場社員の「主体性の誤解」はこうして表れる

現場社員は、決して怠けているわけではありません。
むしろ、彼らは自分の仕事に対してかなり主体的です。

例えば、面談でこんな会話が起こります。

「指示された範囲の中で、自分なりに工夫しています」
「業務改善のアイデアも出していますし、提案もしているつもりです」
「目標数値は毎年きちんと達成しています」
「これって主体性じゃないんですか?」

彼らは本気でそう思っています。
そして、その認識は レイヤー1の世界では正しい のです。

「与えられた枠組みを前提に、その中で最大限工夫する」
——これは、これまでの日本企業で最も評価されてきた“優秀さ”のあり方でした。

問題は、「主体性」という言葉が、レイヤー1だけを指しているのか、レイヤー2〜3までを含んでいるのかを、誰も明示しないまま話をしてしまうことです。

社員からすれば、こうです。

「指示の範囲で工夫もしている。改善もしている。
なのに『もっと主体的に』と言われる。
一体、何を求められているのかが分からない。」

この戸惑いは、「やる気の問題」ではなく、レイヤーの違いが共有されていないことから生まれています。

 

人事もまた、「レイヤーの外側」を知らない

では、経営の意図を理解し、現場に伝える役割を期待される人事はどうでしょうか。

経営陣からは、こんなオーダーが降りてきます。

「変革をリードできる人材がほしい」
「外でも通用する自律した人材を育てたい」
「新しい価値を創造できる人材を」

これは、明らかにレイヤー2〜3レベルの主体性を指しています。

しかし、人事自身もまた例外ではありません。
多くの場合、人事担当者もこうした環境でキャリアを築いてきています。

  • 上司や経営の方針の中で、制度を整え、運用し、成果を出す

  • 既存の評価制度・等級制度を前提に、改善提案をしてきた

  • 「枠組みを疑わずに、その中で最適解を出す」ことで評価されてきた

つまり、人事も社員と同じく、レイヤー1で高いパフォーマンスを発揮してきた人たちなのです。

その結果、こんな状態に陥ります。

  • 経営の言う「主体性」が、頭ではなんとなく分かる

  • しかし、自分自身がレイヤー2〜3の主体性を体験したことはほとんどない

  • だから「どう育てればいいのか」「どう評価すればいいのか」が、腹落ちしない

本音では、こう感じている人事も多いはずです。

「言っていることは分かるけれど、自分にも経験がない。
だから、具体的な育成策に落とし込めない。」

 

人事と社員は「同じ文化圏の住人」である

ここで重要なのは、人事と社員は対立する立場ではなく、同じ文化圏に属しているという事実です。

  • 与えられた前提条件を疑わず

  • そのなかで効率を上げ、成果を出すことが“正解”として育ってきた

この意味で、人事も社員も「レイヤー1の世界の住人」です。

だからこそ、

  • 経営が語るレイヤー2〜3の主体性は、どこか“きれいごと”に聞こえてしまう

  • 社員の「これだけやっているのに」という感覚も、痛いほど分かる

  • 結果として、どちらの気持ちも分かるが、どちら側にも踏み込めないという板挟みが生まれます。

ここに、「主体性」をめぐる組織内コミュニケーションの難しさがあります。

 

主体性は「理解」ではなく「環境との衝突」でしか立ち上がらない

研修の場で「主体性とは何か?」と聞くと、多くの社員はこう答えます。

「自ら考え、行動することです。」

定義レベルでは、全員が“正解”を言えます。
つまり、「理解」という意味では、すでに多くの社員が主体性を知っています。

ところが、彼らを一歩、会社の外に連れ出すと、状況は一変します。

  • 「正解がないのが怖い」

  • 「何から手をつけていいか分からない」

  • 「自分で決めていいと言われるほど動けなくなる」

これは能力不足ではありません。
レイヤー1の前提が外れた瞬間、身体がフリーズするのです。

主体性は、頭で理解して終わるものではなく、
自分の前提が通用しない環境とぶつかったときに初めて立ち上がる力です。

そして、その「前提の崩れる感覚」を知らないまま、「主体性を育てましょう」と言っても、どうしても机上の空論になってしまいます。

 

突破口は「人事自身がレイヤー2・3を経験すること」

では、この三層のズレを誰が埋めるのか。

  • 経営が自ら現場に降りてきて、試行錯誤を共にするケースは、ごく稀です。

  • 社員が自力でレイヤー1を超え、レイヤー2・3に踏み出すのは、一部の例外に限られます。

  • 外部コンサルタントは、構造設計はできても、組織の内側を変えるところまでは手が届きにくい。

現実的に考えると、構造を変えられる可能性が最も高いのは人事です。

ただし、その前提条件があります。

「レイヤー2・3の主体性を、
人事自身が一度は“自分の身体で”経験していること。」

体験していないものは、本当の意味では理解できません。
理解できないものは、設計できません。
設計できないものは、経営にも現場にも説得力を持って説明できません。

この連鎖を断ち切るには、
人事自身が一度、自社の枠の外に出てみることがどうしても必要になります。

翻訳者になるには、両方の「言語」を知る必要がある

人事はよく「経営と現場の橋渡し役」と言われます。
しかし、橋渡しをするには、両側の“言語”を理解していなければなりません。

  • レイヤー1の世界(社員の論理)

  • レイヤー2・3の世界(経営が本当に求めている主体性)

レイヤー1の言語は、人事もよく知っています。
問題は、レイヤー2・3の言語を、自分の体験として話せるかどうかです。

たとえば、こんな経験はあるでしょうか。

  • 明確な指示がない中で、目的を自分で設定し、動ききった経験

  • 会社名抜きの「一個人」として、価値を問われた経験

  • 既存の評価軸がまったく通用しない場で、手探りで進んだ経験

こうした経験なしに、
「主体性を育てる環境」を設計するのは、
地図を見たことのない土地のガイドをするようなものです。

 

人事が枠の外に出たとき、何が変わるのか

私たちが見てきた中で、自ら組織の外に出る経験をした人事は、明らかに変わります。

まず、言葉の解像度が変わります。

  • 「主体性」とは、どのレイヤーの話なのか

  • 「自律」とは、どのような行動として現れるのか

  • 「外でも通用する人材」とは、何が違うのか

これらを、抽象論ではなく、具体的なエピソードを交えて語れるようになります。

次に、設計の質が変わります。

  • どんな環境なら人が本当に変わるのか

  • どこまで任せるべきで、どこからは支援が必要なのか

  • どんな失敗を許容すれば、むしろ成長につながるのか

これらの判断が、“やってみた人の感覚”としてできるようになります。

そして何より、「人は本当に変わるのか?」という問いに、自分の体験で答えられるようになることが大きい。

この確信があるかどうかで、
制度設計も、現場へのメッセージも、驚くほど変わってきます。

 

三者の「誤解構造」をほどく起点としての人事

整理すると、今起きている構造はこうです。

  • 経営陣:レイヤー2・3レベルの主体性をイメージして「主体性」と言っている

  • 人事部:そのイメージをなんとなく共有しつつ、自分の体験としては持っていない

  • 現場社員:レイヤー1レベルの主体性を「自分なりに発揮している」と感じている

この三層の「ズレたままの合意」が、
日本企業で主体性が育たない根本原因になっています。

この構造をほどけるのは、
現場でもなく、外部コンサルでもなく、
経営と現場の間に立つ人事だけです。

 

最後に——「まず人事から外に出る」という選択

「主体性が大事だ」と語ること自体は、もう十分に行われてきました。
それでも事態が大きく変わっていないとすれば、
そろそろアプローチを変える必要があります。

  • 社員にだけ「主体的に」と言い続けるのか

  • 研修プログラムを入れ替えるだけで終わらせるのか

  • それとも、人事自身が一度レイヤー2・3の世界に出てみるのか

主体性は、「教え込む」ものではありません。
環境との衝突によって、初めて引き出されるものです。

そして、その環境を本気で設計できるのは、
自ら一度、その環境に身を置いたことのある人だけです。

まずは一人でも構わないと思います。
人事の誰かが、自社の枠を超える一歩を踏み出す。

そこから、三つのレイヤーのズレを言語化し、
経営と現場の間に、新しい対話の土台をつくっていく。

「主体性」という、あまりにも使い古された言葉を、
もう一度、意味のある言葉として組織の中に取り戻せるかどうか。

その鍵は、これからの人事の一歩に、確かに託されているように思います。

このコラムを書いたプロフェッショナル

田中 翼

田中 翼
株式会社仕事旅行社 代表取締役

2011年より、越境学習の専門家として累計3万名を支援。2つのHRアワード受賞。1日完結・約100種から選べるプログラムで、イノベーション・主体性・連携力の組織課題を同時解決。満足度4.6、モチベーション向上94%を実現。

2011年より、越境学習の専門家として累計3万名を支援。2つのHRアワード受賞。1日完結・約100種から選べるプログラムで、イノベーション・主体性・連携力の組織課題を同時解決。満足度4.6、モチベーション向上94%を実現。

得意分野 モチベーション・組織活性化、福利厚生、キャリア開発、リーダーシップ
対応エリア 全国
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