問題が山積みの「等級制度」

 

いつもありがとうございます。生きがいラボの福留です。

 

 

前回は、従来の人事制度の根本原理である「アメとムチ」を捨てた

逆発想の人事制度の3つのポイントをお伝えしました。

 

1.等級制度をなくす

 

2.評価と給与を分離する

 

3.キャリア開発制度を中心に据える

 

 

今回は、「等級制度をなくす」という考えの理由となっている

等級制度がもたらす問題について考えていきましょう。

 

 

最も根本的な理由は、前回でもお伝えしたのですが、

「人が人を評価することの限界」に起因します。

 

等級制度が成立するには、

「人を格付けできる=点数化できる」ことが大前提となります。

 

しかし、突き詰めて考えていけば、

人に“正しく”点数をつけ、“正しく”格付けすることなど

不可能です。

 

 

能力の高さや役割・責任の大きさ、会社への貢献度などによって

処遇に差が生じるのは当然のことですが、

 

その根拠を評価制度による「評価=点数」にすることは、

客観的合理性、妥当性が担保できないのです。

 

等級制度はその大前提からして疑わしいと言わざるを得ません。

 

 

「人が人を評価することの限界」に関しては次回で詳しく扱い、

今回は等級制度の問題点に焦点を絞りたいと思います。

 

 

等級制度のねらいの1番目に挙げた、

「人事処遇の意思決定の合理性・納得性を高める」に関しては、

ほとんどの等級制度はまったく逆に機能しています。

 

等級制度が障害となって登用・異動を迅速かつ適切に実施できず、

柔軟な組織運営の足かせになっていることがほとんどです。

 

等級制度がもたらす組織運営上の代表的な問題としては、

次のようなものがあります。

 

 

等級制度がもたらす組織運営上の問題

 

●等級制度の通りに登用を行なおうとすると、

能力の高い有望な若手社員を登用できない。

 

●人事異動によって給与額が変わることを社員が嫌って、

柔軟な異動ができない。あるいは、それを回避するために

調整給を設ける付け焼き刃的な対応が増える。

 

●仕事の内容や質は変わらず等級だけ上がる社員が発生し、

仕事と給与にミスマッチが起こる。

 

●等級だけ上がった役職なしの社員を救済するために、

名ばかりの役職が生まれる。

 

要は、制度と実態が乖離を起こすのです。

 

 

何故このような乖離が起きるかというと、

これも「人が人を評価することの限界」が根本原因です。

 

そもそも人を格付けすることなど不可能であり、

その不可能なことを“無理やり”に形にしようとすると、

制度はドンドンと複雑な構造にならざるを得なくなります。

 

複雑になった等級制度は、

もはや組織運営の実態とはかけ離れてしまっています。

 

制度のつじつまを合わせることが目的となっているからです。

 

皮肉なことに、複雑な構造であるからこそ、

等級制度の設計には大変な労力と技術が必要となり、

人事コンサルタントや人事担当者の「腕の見せどころ」と

なってしまいました。

 

そして、ますます柔軟な組織運営を妨げる存在と

なっていったのです。

 

 

少し蛇足になりますが、

「職務分析」「等級制度設計」「評価と給与の連動」は

人事制度構築の山場であり、

人事コンサルタントや人事担当者がノウハウを発揮できる場です。

 

しかし、私の考えでは、詳細な職務分析など必要ありませんし、

等級制度も必要はなく、

給与制度も評価と分離し出来る限りシンプルにするべきです。

 

私は、複雑な人事制度は人事コンサルタントや人事担当者の

自己満足だと考えています。

 

 

少し長くなってしまいましたので今回はこれで終わります。

次回は等級制度の問題点を、さらに突っ込んでいきたいと思います。

 

 

  生きがいラボ株式会社 代表取締役 福留 幸輔

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生きがいラボは、新たなカタチの人事制度である「ノーレイティング型人事制度」の設計・運用コンサルティングを行っています。

アメリカのグローバル企業が導入を進めている人事制度である「ノーレイティング」。日本で広く認知される前の2010年から、点数づけや格づけ、正規分布調整などを廃止した「ノーレイティング型人事制度」の設計・運用コンサルティングを展開しています。

福留 幸輔(フクトメ コウスケ) 代表取締役

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