4コマ漫画「1on1」あるある/1on1で相談しよと思えない

形式として「話させる」1on1から、「この人と話したい」と思える1on1へ。パートナーシップの視点から、信頼を育む関係性のつくり方を探ります。
「設定されたから話す」のではなく、「この人と話したいから1on1が生まれる」 そんな関係性があったなら、1on1はもっと豊かな時間になるのではないでしょうか。多くの企業で制度としての1on1は定着してきましたが、実際の現場では「話す内容に困る」「形式的に感じる」といった声も少なくありません。その背景には、育てる側と育てられる側という構図が、無意識に染みついてしまっていることがあります。
今、あらためて必要なのは、「上司と部下」という役割を超えて、パートナーとして関わり合う視点。本稿では、話させる1on1の限界と、話したくなる関係性の条件、そして関係性を育むための具体的な工夫をひもときながら、“関わりたくなる1on1”への転換のヒントを探ります。
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---------目次 ---------
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- 「育てる人」と「育てられる人」を超えて
- 話させる1on1の限界と、話したくなる関係の条件
- パートナーシップで育む1on1の3つの工夫
- 4コマ漫画はたらくわたし「1on1で相談しようと思えない」
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1. 「育てる人」と「育てられる人」を超えて
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多くの企業で定着しつつある1on1ミーティング。週に一度、あるいは月に一度、上司と部下が30分程度対話する。そんな風景が広がっています。業務の進捗確認、困りごとの共有、キャリアの相談など、目的は多様ですが、「実施すること」が日常化している点では一定の浸透が見られます。
しかし現場では、「話す内容に困る」「業務連絡で終わってしまう」「やらされ感がある」といった声も少なくありません。表面的には丁寧な対話でも、その裏に「本音は言わない方が安全」という無意識の距離感があることも。その背景には、1on1を「上司が部下を育てる時間」と捉える前提が影響しています。「育てる人」と「育てられる人」という役割が固定されると、関係は一方通行になりがちです。上司は成果を求め、部下は“正解”を返そうとする──そこでは本音や探究は生まれにくくなります。
だからこそ、今必要なのは“パートナー”という視点。
1on1の主語が「上司」から「私たち」になるとき、それは育てるための場から、“育ち合う”場へと変わります。形式を超えた対話が生まれるのは、「話すための時間」ではなく、「話したくなる関係」が育ったときなのです。
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2. 話させる1on1の限界と、話したくなる関係の条件
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1on1が価値ある対話となるかどうかは、“何を話したか”より“どんな関係で話したか”にかかっています。まずは「話させる1on1」が抱える限界を3つ挙げ、その対極にある“話したくなる関係”の条件を見ていきます。
■話させる1on1の限界
1. 話題を用意するプレッシャー
毎回ネタを探さなければならず、部下は無難な話題を優先しがち。
2. 評価を意識して本音が出ない
話す内容が「どう思われるか」に左右され、浅いやりとりになってしまう。
3. 対話が誘導的になる
上司が導く側になりすぎると、自由な思考や未整理な感情に触れにくくなる。
■話したくなる関係の条件
1. 未整理でも話せる安心感
うまく話せなくても否定されない空気が、本音を引き出す。
2. 上司も自分をさらけ出している
上司の人間らしさが見えることで、部下も心を開きやすくなる。
3. 一緒に探るスタンス
正解を求めず、「一緒に考えよう」という姿勢が関係性を深める。
設定された時間に、設定された役割として「話す」。それは形式上の1on1としては成立しますが、その中で心が動いているかは別問題です。一方で、「この人となら話してみたい」「話すと自分の考えが整理される」「話してよかったと思える」 そんな感覚を抱ける1on1は、制度を超えて、関係性の中に生まれます。話させる1on1は、制度によって“行動”を生みますが、話したくなる1on1は、関係性によって“変化”を生み出します。つまり、1on1の価値は「話したかどうか」ではなく、「どんな関係で、どんな時間を共有したか」に宿るのです。
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3. パートナーシップで育む1on1の3つの工夫
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1on1を「部下の成長のための場」から、「上司と部下が育ち合う関係性の場」へ。その転換において、パートナーシップという視点は欠かせません。ここでは、実際の対話のなかで上司が意識できる3つの工夫をご紹介します。
1. 上司もさらけ出す
上司が悩みや迷いを適度に共有することで、対話は一気に対等になります。単なる雑談ではなく、「関係性をつくる意図を持った共有」が信頼を育てます。 例:「実はあの件、自分もちょっと迷ってて…」
2. 問いは持ち寄る
「どう思う?」と一方的に問うのではなく、「自分も考え中なんだけど」と未整理の問いを共有することで、対話は共創になります。 例:「最近の○○の動き、どう感じてる?私もまだ迷ってて…」
3. 結果よりプロセスを聞く
「できた/できない」より、「なぜそう考えたのか」「何に迷ったのか」といった過程に関心を向けることで、語りは深まり、学びも共有されます。 例:「それを選んだ背景って何かあった?」
1on1の目的は、ただ“話すこと”ではありません。「この人となら話してみたい」と思える関係を育むことこそが、最大の成果です。パートナーシップとは完成された関係ではなく、日々の対話を通じて育まれるもの。上司に相談予約が自然と入る。そんな構図が生まれるとき、1on1は「設定されたからやるもの」ではなく、「関わりたくなる関係」の中で機能し始めるのではないでしょうか。
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4. 4コマ漫画はたらくわたし「1on1で相談しようと思えない」
※ダウンロード資料(PDF版)では漫画の小さな文字もクリアにご覧いただけます。
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~4コマ漫画筆者コメント~
「やりたくて」1on1をやっているのか…「やらなければいけないから」1on1をやっているのか…その目的や意義が、自分の中で結びつかない。それでも、運用上の理由で定期実施されているケースは少なくない。
「とりあえずやる」という、やらされ感と実施事実。「本音は言わない方が安全」という、忖度や距離感。これでは一方通行で、心は動いていない…。
「この人に相談してみたい」という、信頼。「話すと自分の考えが整理される」という、実感。こうした感覚があってはじめて、1on1は「生きた時間」になる。
「話してよかった、また話したい、次が楽しみだ」と思えるような…「またお願いしていいですか?」と予約が入るような…それこそが、ほんとうに機能している1on1なんじゃないかな。
「話させる1on1」は、制度によって「行動」を生むかもしれない。でも、「話したくなる1on1」は、関係性によって「変化」を生む。そして、変化に根ざした行動こそが、本質的な成長につながるのだと思う。
話したいと思える相手かどうか…相談したいと思える相手かどうか…そこが、1on1の第一関門なのでは?
by サンボンガワ
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また、価値観やビジョンを言語化し、納得感のあるキャリア形成を支援するプログラムとして、キャリア開発プログラム「じぶん戦略」をご提供しています。
掲載している4コマ漫画と社内周知用テキストは、ダウンロードしてすぐにご活用いただけます。 資料では、漫画内の細かな文字もクリアに読めますので、ぜひお気軽にご活用ください。
※当プロフェッショナルコラムは4コマ漫画「はたらくわたし」の作者でもある中川が、株式会社エイチ・ティーが運営する『SIMBA UNIVERSITY』で連載している記事を転載したものです。
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企画・編集:『SIMBAUNIVERSITY』編集部
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このコラムを書いたプロフェッショナル
中川 絵美
株式会社エイチ・ティー(HxT) コンサルタント
これまで人材紹介、研修企画、人事評価コンサル等、HRサービスに従事。現在は、キャリア自律プログラム「じぶん戦略」の研修提案・運営サポートを担当。その他、"仕事あるある"にまつわる4コマ漫画や"人事課題"に関するトーク動画を制作し発信している

中川 絵美
株式会社エイチ・ティー(HxT) コンサルタント
これまで人材紹介、研修企画、人事評価コンサル等、HRサービスに従事。現在は、キャリア自律プログラム「じぶん戦略」の研修提案・運営サポートを担当。その他、"仕事あるある"にまつわる4コマ漫画や"人事課題"に関するトーク動画を制作し発信している
これまで人材紹介、研修企画、人事評価コンサル等、HRサービスに従事。現在は、キャリア自律プログラム「じぶん戦略」の研修提案・運営サポートを担当。その他、"仕事あるある"にまつわる4コマ漫画や"人事課題"に関するトーク動画を制作し発信している
得意分野 | モチベーション・組織活性化、人材採用、人事考課・目標管理、キャリア開発、コーチング・ファシリテーション |
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対応エリア | 全国 |
所在地 | 京都市下京区 |
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