マンパワー・ジャパンが2006年1-3月期雇用予測調査
「従業員増やす」と回答の企業が全体の20%
総合人材サービスのマンパワー・ジャパン(東京都千代田区、尾野博・代表取締役社長)は12月13日、2006年第1四半期(1-3月期)における企業の雇用計画を尋ねた「マンパワー雇用予測調査」の結果を発表しました。この調査は、世界で最も広範囲に亘る事前調査で、マンパワー社が四半期ごとに世界23カ国(地域を含む)で実施しているものです。世界45,000社の回答に基づいており、うち日本は東京・大阪・名古屋の864社の企業から回答を得ています。
【日本国内の調査結果概要】
調査は東京・大阪・名古屋に本社を置く国内企業に対して行われ、864社から回答を得ました。回答企業のうち、1-3月期に従業員(契約社員、派遣社員等を含む)を「増員」すると回答した企業は全体の20%で、前年同期に比べ3ポイント増加しました。「減員」すると回答した企業は5%で、「変化無し」と回答した企業は72%にのぼりました。その結果、純雇用予測* はプラス15%と高い評価を示しました。前年同期と比べると2ポイント増加、前四半期からは1ポイント増加しています。この調査が2003年に日本で始まって以来、今回は第1四半期で最も強い雇用意欲を表しています。業種別では「サービス」で純雇用予測が最も高く、プラス20%になっています。最も低いのは公共・教育のプラス6%でした。前四半期比では、運輸・公益の純雇用予測が6ポイントと最も大きく減少し、逆に最も増加したのは鉱工業・建設で、前四半期と比べてプラス8ポイントとなりました。前年同期で増加したのは全7業種中、「金融・保険・不動産」、「製造」、「運輸・公益」の3業種で、減少したのは2業種「鉱工業・建設」、「サービス」、残り2業種「公共・教育」「卸・小売」は同値でした。
*純雇用予測:「増員する」と回答した企業数の割合(%)から、「減員する」と回答した企業数
の割合(%)を引いた値。
※調査結果詳細は、同社URL< http://www.manpower.co.jp >をご覧ください。
【 マンパワー・ジャパン株式会社 代表取締役社長 尾野博氏 からのコメント 】
今回の調査結果をみると、全般的な雇用意欲は引き続き上昇傾向にあると言えます。当社のお客様も、「こういう人材を求めているので紹介して欲しい」というより具体的で強いご要望に変わってきています。特に、人材紹介や紹介予定派遣に対する要請は強く、当社もこれらの分野での事業を強化しております。来年以降、2007年問題に象徴される労働力減少のトレンドなどにより、優秀な人材の獲得競争は一段と激しさを増すことが予想されます。当社独自のサービスシステムと人材教育ツール等を駆使して、顧客企業及び就業希望者双方に満足度の高いサービスを提供してまいります。
【 調査結果 】
(1)2006年の第1四半期は「増員」と答えた企業が20%、前年同期に比べて3ポイント増加
「2006年1月〜3月の3カ月間において、貴社の雇用計画は今期(2005年10-12月期)と比べてどう変わると考えますか?」との質問に対し、全体の20%の企業が「増員」すると回答しました。
(2)業種別は、引き続き「サービス」業で雇用意欲が旺盛
業種別では、「サービス」で純雇用予測がプラス20%になっている他、2005年同期と比較すると「金融・保険・不動産」、「運輸・公益」各分野でも強い雇用意欲が表れています。
(3)地域別は、名古屋で活発な雇用意欲
3地域全てにおいて、全体的に増員傾向にあります。地域別では、名古屋での雇用意欲が最も強く、純雇用予測がプラス19%(前年同期比4ポイント増加)となっています。前四半期と比べると1ポイント下がったものの、3地域の中では最高値となっており、引き続き強い雇用意欲を表しています。東京でもプラス15%(前年同期比1ポイント増加)と前期比プラス2ポイントの活発な雇用意欲を示しています。
(4)世界23カ国(地域を含む)の純雇用予測
今期に調査を行った23カ国中、19カ国が2006年の第1四半期に前向きな雇用予測を示しましたが、11カ国が前年同期と比べて低い予測をしています。特にヨーロッパを筆頭に14カ国は、3カ月前よりも低い雇用予測となっています。インド、ニュージーランド、台湾、北米、オーストラリアは最も高い雇用予測を示しています。逆に、ドイツ、オーストリア、イタリアは最も低い雇用予測を示しました。
【 株式会社三菱総合研究所 武藤泰明主席研究員の論評 】
■ 日本企業の雇用計画は増加基調
日本企業の雇用計画は、依然増加基調である。今回の雇用予測調査でも、純雇用予測はプラス15%であり、対前期比プラス1ポイント、対前年同期比ではプラス2ポイントとなった。
地域別に見ると、名古屋がプラス19%で対前年同期比プラス4ポイント、東京が同じくプラス15%、プラス1ポイントと上向きであるのに対して、大阪はプラス9%、マイナス1ポイントと若干の減少になっている。とはいえ大阪も増加基調であることに変わりはなく、大都市主導の今回の好況が、雇用にもプラスの影響を与えていることがわかる。
業種別にみると、今回とくに伸びが顕著だったのは金融・保険・不動産である。対前年同期比でプラス6ポイントであり、純雇用予測の水準もプラス19%で、サービス業のプラス20%に次ぐ高い値となっている。運輸・公益の純雇用予測は、前四半期に比べ6ポイント減少した。これは、原油高で収益が低下したため、人員増を抑制しているのではないかと推測できる。
■ 金融・不動産では景気回復で雇用も活発
11月中旬以降、上場会社の9月中間決算が公表されはじめたが、注目すべき点は、銀行の収益力が急速に回復しはじめたという点である。銀行は本年3月期決算までは、収益力の不足をいわゆるリストラで補ってきたが、役務(手数料)収入が好調なことと、不良債権処理に目処がついたことで、久々に積極姿勢に転じている。利息収入は日が過ぎれば手に入るが、手数料はサービスという活動がなければ生まれない。銀行はこれから、人が動くことで収益を生む業態になっていく。人材需要も活性化していくものと思われる。
銀行と同様に収益力を高めているのが不動産業である。東京都心部の地価はすでに底を打った。17年度地下公示を見ると、地価上昇率上位10地点のうち8カ所を名古屋が占めており名古屋も堅調である。大阪は回復が遅れているが、地価下落率は地方圏より低くなっている。都市部の地下が安定してきたことが不動産業の収益力を支えている。住宅着工も2005年、2006年は久々に120万戸を超えると予想されている。このような環境変化が、不動産業の雇用を促進しているのである。
■ 人手不足解消には非常用雇用者の訓練を
こうなると、ますます気になるのが人手不足である。日銀短観によれば、雇用人員判断D.I.は2006年第1四半期予測ではさらに不足感が強まり、マイナス5%まで下がった。これは1992年以来の水準であり、人手不足で潜在的な経済成長力を実現できなくなることが懸念されるところである。
最近発行されたOECDの日本経済白書も日本の人出不足を指摘しており、またその対処として「労働時間延長」「定年延長」は余り効果がないとみている。日本はすでに労働時間が長く、引退年齢も高いからである。
有効だとみられているのは、非常用雇用者の訓練による生産性の向上である。ここ数年の景気と企業収益の回復は、低コストの非常用雇用者の増加によって実現されてきたが、労働需給がタイトになったことにより、このような方法を採ることは難しくなる。非常用雇用者の生産性を上げ、賃金上昇をこれによって吸収し、同時に定着率を高めるという好循環を実現する企業が、成長機会を自らのものとすることができるようになるはずである。
(マンパワー・ジャパン http://www.manpower.co.jp/同社プレスリリースより抜粋・12月13日)