「企業の『新卒採用動向』における調査 2025」を実施
採用時に求める水準と、採用学生の水準のギャップが最も大きかったのは「汎用的スキル」
大学との連携では「オープンカンパニー」に次ぎ、「汎用的能力活用型インターンシップ」に注目が高まる
株式会社ベネッセホールディングスとパーソルキャリア株式会社の合弁会社、株式会社ベネッセi-キャリア(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:風間 直樹)が運営するシンクタンク組織「まなぶとはたらくをつなぐ研究所」(以下:まなはた研)は、2025年6月16日から6月27日まで、企業の採用担当者を対象に、新卒採用の現状とその認識に関する動向調査「企業の『新卒採用動向』における調査 2025」を実施しました。
近年の就職活動では、「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方(以下:三省合意)」に基づくインターンシップの見直しや、「早期化」といった環境変化が見られます。
本調査は、昨年実施した「大学キャリアセンターの学生キャリア支援における調査 2024」(全国の大学キャリアセンターを対象とした「学生のキャリア支援」に関する調査)と対をなす内容として、学生を受け入れる企業側が選考にあたりどのような施策をもって学生を評価し、課題感を抱いているのかを明らかにすることを目的として実施しました。企業の採用担当者を対象に、新卒採用の現状やその認識に関する動向を把握し、「選考前の取り組み内容」や「選考時の学生の能力等に対する評価基準・観点」について調査しています。
■調査結果サマリー
1)採用手法の動向
- 採用数の最も多い手法は「一括採用(53.3%)」であり、次いで「通年採用(27.5%)」、「職種別・コース別採用(16.5%)」となった。
- 本来力を入れたい取り組みは、「大学との連携(20.9%)」が最も多く、次いで「自社広報(20.2%)」。
- 「大学との連携」に取り組んでいる企業は50.6%、従業員規模が大きいほど取り組む傾向が高い。
2)選考基準とそのギャップ
- 選考で重要視する項目は「人柄や性格(59.5%)」が最も多く、次いで「自社への熱意(43.5%)」「汎用的スキル(42.6%)」であった。
- 一方、採用時に求める水準と、採用学生の水準のギャップが最も大きかったのは、「汎用的スキル(14.3%)」であった。
3)選考時期・選考基準における大学の認識との比較(大学キャリアセンター調査との比較から)
- 企業のインターンシップ等のプログラムの選考開始時期は3年生4月-5月までが48.6%となり、大学の認識とほぼ一致している。
- 企業の「選考基準」と、大学の「学生の評価して欲しい項目」についても上位にあがるものはほぼ一致。
- 大学に対して、「企業の選考情報の提供(37.3%)」や「合同説明会の開催(29.4%)」といった、企業の採用に直結するような取り組みへの期待だけでなく、「業界や職種等のキャリア研究のカリキュラム(27.9%)」などの学生の視野を広げる取り組みへの期待も高かった。
【調査結果】
採用手法の動向
①選考方法の傾向
企業の新卒採用手法としては、従来から主流とされてきた「一括採用」(70.5%)」が最も多い一方、「通年採用(53.4%)」、「職種別・コース別採用(44.6%)」の比率も高まっており、新卒採用における手法の多様化が見て取れる。
採用数の多い手法としては、「一括採用(53.3%)」が過半数半数を超えた。ただし、「通年採用(27.5%)」や「職種別・コース別採用(16.5%)」とする企業も多くなっている。
②採用手法の動向_大学との連携について
大学と既に連携し、今後も継続するという企業は40.0%、今後連携することを検討している企業も23.7%であり、大学と何らかの取り組みをしていこうとする意向を持つ企業は全体の6割を超えている。今後、さらに拡大していくことが予想される。 規模別にみると、従業員規模の大きい企業ほど、既に大学と連携している傾向がみられる。
既に大学と連携している企業において実施されているプログラムでは、オープンカンパニー(タイプ1)と汎用的能力活用型インターンシップ(タイプ3)が50%を超えている。次いで、キャリア教育(タイプ2)も46.6%と多い。連携を検討している企業においても検討しているタイプは同様であることから、タイプ1と3が企業と大学で連携する際の主流になっていくと考えられる。
タイプについて:学生のキャリア形成支援に係る産学協働の取組の四つの類型(経済産業省)
2) 選考基準とそのギャップ
①インターンシップ等のプログラムと本選考における重視すべき項目
選考基準として、インターンシップ/本選考の両方で選択率が最も高いのは「人柄や性格」であり、次いで、「汎用的スキル」、「自社への熱意」、「採用ポジションへの適性」となっていた。「人柄や性格」は従来重視されてきたが、大学で学生が学んできた成果として成長させた能力も評価したいとする企業の意向が見て取れた。
②選考基準と採用学生のギャップ
「ギャップがあるものはない」と回答した企業は全体の12.2%にとどまり、多くの企業が採用学生の水準にギャップを感じている。最も改善したい項目は「汎用的スキル」で14.3%であった。「汎用的スキル」は企業の選考基準、大学の評価してほしい項目でも上位であり、大学時代に一定の水準以上に高めることが求められている。
3) 選考時期・選考基準における大学の認識との比較
ここでは、昨年行った大学キャリアセンター調査との比較により、企業と大学とでの選考時期・選考基準についての認識を比較した。
①インターンシップ等のプログラムの実施時期とキャリア教育観点での自己理解開始時期
企業のインターンシップ等のプログラムの選考開始時期は大学3年生4月から5月までが48.6%と、5割近くが集中する結果となった。それに対し、大学のキャリアセンターからの「学生に就職活動(選考影響のあるインターンシップを含む企業検討)を始めて欲しい時期」も3年生4月から5月までが53.4%となった。3年4月には主体的に企業を選択できるよう、低学年次から学生が主体的に時間を確保してキャリアを考えて欲しい、という大学の意向が読み取れる結果だった。
以上のことから、インターンシップ等のプログラムの選考時期が「3年生4-5月」であるとの認識は、企業と大学でほぼ一致しているものと捉えられる。
②企業の「選考基準」と大学の「評価して欲しい項目」
企業の「選考基準」と、大学の「学生を評価して欲しい項目」についても一致しており、以前から重視されている「人柄・性格(59.5%)」や「自社への熱意(43.5%)」に加え、「汎用的スキル(42.6%)」が上位に挙げられた。
③大学キャリアセンターへの期待
大学に対して、「企業の選考情報の提供(37.3%)」や「合同説明会の開催(29.4%)」といった、企業の採用に直結するような取り組みへの期待が高い一方、「業界・職種等のキャリア研究のカリキュラム(27.9%)」のような、学生の視野を広げる取り組みへの期待も高かった。
【解説者コメント】
まなぶとはたらくをつなぐ研究所 所長/岡安 亮
新卒採用のスケジュールは早期化し、インターンシップ等のプログラムも考慮すると3年生4月-5月までの動き出しが求められています。しかし、それまでに動き出せている学生は少ないのが現状です。また採用手法は「一括採用」以外のものの割合が高まりを見せ、従来とは異なるスケジュールでの活動や情報の整理が重要になっています。このような環境下において、企業・学生双方にとって納得度の高い新卒採用とするためには、学生が低学年次からキャリアを考えるための機会を充実させることが必要でしょう。大学・キャリアセンターが「キャリア教育の担い手」となることへの企業からの期待も高まっています。その際、近年の学生が「効率性」を重視するあまり、自分の興味のある業界や企業ばかりに注目してしまい、入社後にミスマッチが生じている事例も多くなっています。学生の「視野を広げる」という視点も持ち合わせながら、キャリア教育に産学で連携して取り組むことが重要です。
また、選考基準の選択率TOP3は、インターンシップ・本選考のいずれでも「人柄や性格」「自社への熱意」「汎用的スキル(思考力・問題解決能力等)」となっていました。前者の2つは以前から重視されていましたが、「汎用的スキル(思考力・問題解決能力等)」については、企業が「大学で学生が学んできた成果」として、評価基準の中での重視度を高めていると考えられます。一方、企業の採用水準と、実際に採用した学生の水準を比較して、そのギャップが最も大きいもの(改善したいもの)も「汎用的スキル(思考力・問題解決能力等)」でした。企業に求められるのは、選考基準として求める汎用的スキル等の言語化と、そこで求める水準を大学・学生に具体的に伝えることのようです。大学に対しても、学生の汎用的スキル等の育成を強化し、その成果を可視化することが求められていると考えられます。それらの実現のためには、産学でのデータやエビデンス、エピソードなどに基づいた具体性のある議論が必要ではないでしょうか。
そして、視野を広げてみると、今回の調査で浮かびあがった「就活スケジュールの早期化」「学生の視野を広げるキャリア教育の必要性」「汎用的スキルの育成の重要性」は、大学入学者選抜では既に起こっている事象であることがわかります。いわゆる「年内入試」の拡大を契機に、高校における進路指導や大学選択基準は大きく変化していますが、それを契機として、大学・高校では高大連携による出前授業や高大接続型入試の拡大、入学前教育の充実などが進んでいます。ミスマッチ防止、受験生確保、入学者の質的向上など目的は様々ですが、従来の選抜方式には無かった取り組みが数多く行われるようになっています。大学と企業においても、同様の流れになることが想定されます。早期からのキャリア観の醸成と、汎用的スキルの継続的な育成をベースとして、産学で連携して議論し、採用スケジュールの見直しや、新しい採用手法の模索が行われていくことになるでしょう。そのことが、企業と学生の双方が納得できる大社接続の実現に直結すると考えています。
【『企業の「新卒採用動向」における調査 2025』調査概要】
調査期間:2025年6月16日~6月27日
調査方法:インターネットを利用したアンケート調査
調査対象:企業の新卒採用の担当者
調査人数:823社
◆本調査の詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社ベネッセコーポレーション /12月17日発表・同社プレスリリースより転載)
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