企業におけるリスキリング施策の実態調査(2025年6月版)
リスキリング施策で重視するスキルでAI活用が初めてトップに
「はたらいて、笑おう。」をビジョンに掲げるパーソルグループのパーソルイノベーション株式会社 Reskilling Camp Company(本社:東京都港区、ReskillingCamp Company代表:柿内 秀賢)が展開する、リスキリング支援サービス『Reskilling Camp(リスキリングキャンプ)』は、全国の企業にお勤めの方を対象に、「リスキリング施策」に関する定点調査を四半期ごとに実施しています。
10回目となる今回は、定点観測に加え、DX人材の獲得・育成状況や方法などを調査しましたので、その結果をお知らせします。
※本調査でいうリスキリングとは、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義しています。
調査サマリー
- リスキリング施策の実施率は、継続して全体で約40%の傾向を維持し、製造業では約60%超が実施
- リスキリングで重視するスキルとして「AI活用(ChatGPT等)」が初めてトップに
- リスキリングの対象となる部門は、「情報システム、ITシステム」がトップに
- リスキリング施策における主な失敗例として「研修内容と実務のミスマッチ」が浮き彫りに
- 50%弱の企業でDX人材の確保・獲得ができていない状況
- DX人材の確保・獲得方法としては「社内育成・研修」が最も多いことが明らかに
- リスキリング関連の社内異動・転職は「社内異動型リスキリング」の認知度がトップ
参考データ
- リスキリング施策の実施率(全体・企業規模・業種別)
- リスキリング施策において重視するスキル(全体・企業規模別)
- リスキリング施策の対象部門(全体・企業規模別)
- リスキリング施策の失敗例(全体)
- DX人材の確保・獲得状況(全体)
- DX人材の確保・獲得方法(全体・業種別)
- リスキリングに関連する社内異動や転職の認知度(全体)
調査結果
リスキリング施策の実施率は継続して約40%の傾向を維持
所属企業において、「直近1年の間で、従業員のリスキリング施策に関する取り組みを行いましたか︖」と尋ねたところ、「実施した」との回答は、前回の41.7%に比べ2.8PT上昇して44.5%となり、昨年同月と比較しても高くなっています。
企業規模別でみると、大企業では、「実施した」との回答が64.6%と前回の63.3%に比べ、1.3PT上昇し、中小/スタートアップ企業では、38.3%(前回33.4%)となり、4.9PT上昇しており、リスキリング施策は、引き続き大企業が先行して取り組んでいるものの、中小/スタートアップ企業でも取り組みを実施する企業が増えてきていることがうかがえます。
業種別でみると、「実施した」との回答は製造業において66.0%(前回61.8%)と4.2PT増加し、情報通信サービス業26.0%、その他42.7%と比較して、取り組み状況が高いことが分かりました。
リスキリングで重視するスキルとして「AI活用(ChatGPT等)」が初めてトップに
所属企業が取り組むリスキリング施策において、「重視されるスキルは何ですか?」と尋ねたところ、全体1位は「AI活用(ChatGPT等)」(33.3%) 、2位「セキュリティ」(30.5%)、3位「ITプロジェクトマネジメント」(30.2%)となりました。
今回の調査で初めて「AI活用(ChatGPT等)」が重視するスキルのトップとなり、生成AIの発達に伴って、それらを活用するためのリスキリングが重要視されていることが分かる結果となりました。
企業規模別でみると、大企業の1位は「ITプロジェクトマネジメント」(40.6%)、同率で2位「AI活用(ChatGPT等)」、「セキュリティ」(39.1%)に対し、中小/スタートアップ企業の1位は同率で「AI活用(ChatGPT等)」、「ビジネス構想」(27.8%)、3位「アプリケーション活用」(26.5%)となりました。
全体の調査結果同様、企業規模に関わらずAI活用がリスキリングを実施する上で欠かせないスキルの一つになっていることが分かりました。
リスキリングの対象となる人材の所属部門は、1位「情報システム、ITシステム」2位「経営企画」3位「人事」
所属企業が取り組むリスキリング施策において、「リスキリングの対象となる方は主にどのような部門に所属していますか?」と尋ねたところ、全体での1位は「情報システム、ITシステム」(45.3%)、2位「経営企画」(42.1%)、3位「人事」(35.8%)となりました。
企業規模別でみると、大企業の1位は「情報システム、ITシステム」(55.6%)、2位「人事」(39.1%)、3位「経営企画」(38.3%)に対し、中小/スタートアップ企業では1位「経営企画」(45.7%)、2位「情報システム、ITシステム」(36.4%)、3位「人事」(33.1%)となりました。
大企業ではIT関連部門が変革のけん引役として位置づけられ、中小/スタートアップ企業では「経営企画」がトップとなるなど、経営陣との距離が比較的近い中小/スタートアップ企業特有の結果であり、限られたリソースの中で経営判断に関わる中核人材としてのリスキリングであることがうかがえます。
リスキリング施策における主な失敗例として、「研修内容と実務のミスマッチ」が浮き彫りに
所属企業におけるリスキリング施策の失敗例について尋ねたところ、全体の1位は「研修・学習内容が実務にマッチしていなかった」(45.6%)、2位「従業員任せになり、成果に繋がらなかった」(37.2%)、3位「対象者が学習を完了できなかった」(35.1%)となりました。
これらの結果からリスキリング施策を効果的に実施するためには、現場ニーズの詳細な分析、学習効果を企業側が把握し成果につなげるための仕組み、そして学習者が継続できる環境整備が重要であることが分かりました。単に研修プログラムを用意するだけでなく、戦略的かつ包括的な取り組みが重要であると考えられます。
50%弱の企業でDX人材※の確保・獲得ができていない状況
所属企業においてDX人材を確保・獲得できているかについて尋ねたところ、「はい」と回答した方は39.0%、「いいえ」と回答した方は46.6%で、半数弱の企業でまだDX人材の確保や獲得ができていないことが明らかになりました。
※DX人材の定義:経済産業省デジタルスキル標準を参照
DX人材の確保・獲得方法としては「社内育成・研修」が最も多いことが明らかに
所属企業においてどのようにDX人材を確保・獲得しているか尋ねたところ、1位「社内育成・研修」(62.8%)、2位「出向・転籍」(53.2%)、3位「中途採用」(42.4%)となりました。
業種別でみると、製造業においては1位「出向・転籍」(61.4%)、2位「社内育成・研修」(54.2%)、3位「中途採用」(44.8%)だったのに対し、通信情報サービス業では1位「社内育成・研修」(84.6%)、2位「中途採用」(41.1%)、3位「出向・転籍」(41.0%)となりました。
製造業では人材の最適配置に重点を置く一方で、通信情報サービス業では、人材の能力開発に注力していることが推察されます。
効果的なDX人材戦略において、業界の事業特性や技術環境と密接に連動している必要があることを示唆しており、業界特有の課題に応じた人材育成・獲得の戦略立案の必要性が考えられます。
リスキリング関連の社内異動・転職は「社内異動型リスキリング」の認知度がトップ
リスキリングに関連する社内異動や転職について、尋ねたところ1位「社内異動型リスキリング」(34.8%)、2位「個人主導型リスキリング転職」(27.0%)、3位「新卒育成型リスキリング」(23.2%)の順番で世の中に認知されていることが明らかになりました。
まとめ
パーソルイノベーション株式会社Reskilling Camp Company代表 柿内 秀賢
10回目となる本調査では、定点観測的な項目に加え、リスキリングにおける失敗事例やDX人材の獲得・育成状況や方法、リスキリングに関連する社内異動や転職についても調査しました。
今回の調査の結果でも継続的に4割の企業がリスキリングを実施しており、重要視するスキルでは、AI活用が初めてトップとなり、リスキリングの対象部門でも「情報システム、ITシステム」に所属の方がトップとなるなど実際に『Reskilling Camp』へお問合せをいただく企業の方の声とも密接にリンクしており、現場からの反響を裏付ける形となりました。
リスキリング施策を成功させるには、企業が経営課題を踏まえた上で、現場のニーズに応じた具体的な取り組みを行い、部門間の連携を強化し、学習環境を整備することが不可欠です。また、業界特性や課題に応じた人材育成・獲得の戦略を立案し、DX人材の育成や獲得に向けた取り組みをさらに強化することが求められます。
調査概要
調査手法 ︓ インターネットリサーチ Fastask(株式会社ジャストシステム提供)でアンケート調査を実施
調査対象 ︓ 全国の企業にお勤めの方
調査期間 ︓ 2025年5月1日(木)~2025年5月8日(木)
対象人数 ︓ 660
企業属性 ︓ ※大企業︓従業員数が300人以上の企業
※中小企業とスタートアップ︓従業員数が300人未満で、新規事業開発と成長を経営の主軸に置かない企業と従業員数が300人未満で、新規事業開発と成長を経営の主軸に置く企業。大企業の子会社やグループ会社は含まれない。
※ 製造業:電子部品・デバイス・電子回路製造業、情報通信機械器具製造業、電気機械器具製造業(上記に含まれないもの)、その他製造業
※通信情報サービス:通信業、情報サービス業、その他の情報通信業
◆本調査の詳細は、こちらをご覧ください。
(パーソルイノベーション株式会社/7月2日発表・同社プレスリリースより転載)
- 参考になった0
- 共感できる0
- 実践したい0
- 考えさせられる0
- 理解しやすい0
無料会員登録
記事のオススメには『日本の人事部』への会員登録が必要です。