従業員エンゲージメント市場に関する調査を実施(2024年)
2023年の従業員エンゲージメント診断・サーベイクラウドの市場規模は、前年比135.8%の91億円
~人的資本の情報開示義務化によりスコア化需要が拡大も、今後問われるのは可視化以上の価値提供~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内の従業員エンゲージメント市場を調査し、参入企業の現況や動向、市場の課題と展望を明らかにした。ここでは、従業員エンゲージメント診断・サーベイクラウドの市場規模予測について、公表する。
1.市場概況
従業員エンゲージメント診断・サーベイクラウドの市場規模は、事業者売上高ベースで2022年が67億円、2023年は前年比135.8%の91億円と推計した。
2020年以降はコロナ禍でリモートワークが増えたことから、大手企業の従業員エンゲージメント向上を支援するサービスへのニーズも一気に高まった。その後、企業がサービスを選別する姿勢が強まることで市場は踊り場に向かうとみられたが、2022年度(2023年3月期)決算からの人的資本情報の開示義務化が市場を活性化させている。義務化当初は人的資本情報として何を開示すべきか手探りの企業が多かったものの、義務化2年目の2023年度(2024年3月期)決算においては、多くの上場企業がエンゲージメントスコアを開示情報として選択する結果となり、従業員エンゲージメント診断・サーベイクラウド市場拡大の要因となっている。
2.注目トピック
日本企業のコンサルニーズは強いも、サプライヤーは自走型サービス強化へ
日本企業においては、従業員はゼネラリストが大半であり、人事部に所属していても従業員エンゲージメントサービスに対する知識や専門性が乏しい場合が多い。そのため、診断・サーベイ結果をエンゲージメントや企業価値の向上に繋げることが出来ず、サービス事業者が提供するコンサルティングへ依存する傾向が強い。
さらに、人的資本情報の開示義務化によって、従業員のエンゲージメントスコアを如何に高めていくか、そのためには診断・サーベイ結果を受けて、どのような対策をとっていけばよいか、その方法について知りたいという企業のニーズがより強まっており、コンサルティングの需要が高まっている。
一方、従業員エンゲージメント診断・サーベイクラウドを提供する企業はコンサルティングサービスを提供しつつ、SaaS型サービスとしてエンゲージメントスコア向上や組織改革まで自動化できるサービスを追求する動きもみられる。特に、近年AIの進化が目覚ましいことから、これらを利用してユーザー企業の自走を促していこうとする動きも多い。
3.将来展望
2024年の従業員エンゲージメント診断・サーベイクラウド市場規模は前年比129.7%の118億円の見込みである。2024年度(2025年3月期)決算においては、人的資本情報としてエンゲージメントスコアを開示する上場企業が引き続き増加するとみられる。ただし、タレントマネジメントシステムや従業員エクスペリエンスプラットフォームの導入との競合があることから、伸び率は2023年実績をやや下回る見通しである。
■調査要綱
1.調査期間: 2024年4月~6月
2.調査対象: 日本国内の従業員エンゲージメントに関連したプロダクト、サービスを展開している企業
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mail等によるヒアリング調査、アンケート調査、ならびに文献調査併用
<従業員エンゲージメントサービスとは>
本調査では、従業員エンゲージメント向上に関わるプロダクト・サービスである、従業員エンゲージメント診断・サーベイツールやサービス、心理的安全性/ウェルビーイングサーベイツールやサービス、コンディションサーベイ、1on1運用支援ツールやサービス、タレントマネジメントシステム、社内SNS、データ分析ツール等を対象とした。
<従業員エンゲージメント診断・サーベイクラウド市場とは>
従業員エンゲージメント診断・サーベイを実施できるサービスは、次の3つのタイプに分けられる。
①従業員エンゲージメント診断・サーベイツールを単独のサービスとしてクラウドで提供し、年間契約などによる継続サービスを提供しているもの
②従業員エンゲージメント診断・サーベイをタレントマネジメントシステムの中の一部の機能として提供しているもの
③従業員エンゲージメント診断・サーベイを単発のサービスとして提供しているものである。
なお、これらのサービスにオプション等によって、コンサルティングなどのサービスを付加できる商品設計が一般的である。
本調査における従業員エンゲージメント診断・サーベイクラウド市場規模は、上記のサービスのうち①を対象として、クラウドサービス事業者の売上高ベースで算出した。
※ 従業員エンゲージメントは、従業員が持つ感情や認知のことで、一般的には従業員の企業への愛着心や信頼、企業に対する自発的な貢献意欲を指す言葉と言われている。これらを問う観点で作成されたサーベイを用いて、従業員エンゲージメントのスコアが測定される。
<市場に含まれる商品・サービス>
従業員エンゲージメント診断・サーベイツール/サービス、心理的安全性/ウェルビーイングサーベイツール/サービス、1on1運用支援ツール/サービス、OKR(Objectives and Key Results)運用支援ツール/サービス、タレントマネジメントシステム、健康管理システム、社内SNS、コーチング研修、人材育成サービス、データ分析ツール/サービス等
■お問い合わせ先
株式会社矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム
〒164-8620 東京都中野区本町2-46-2
電話番号 03-5371-6912
メールアドレス press@yano.co.jp
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社矢野経済研究所 / 8月26日発表・同社プレスリリースより転載)