2021年コロナ禍の職種別「平均残業時間」を調査
ひと月の平均残業時間は20.8時間で昨年とほぼ同様
前回残業時間が最多の「教育/スクール」は、オンライン化で1位から55位に
建設業界は、労働力不足で残業時間が10時間以上増えた職種も
パーソルキャリア株式会社が運営する転職サービス「doda(デューダ)」(編集長:喜多 恭子)は、20~59歳のビジネスパーソン15,000人を対象に、職種別に残業時間を調査しましたので、結果をお知らせいたします。
【調査結果サマリー】
■第3回緊急事態宣言下(2021年4月~6月)の平均残業時間は、20.8時間/月
- 初の緊急事態宣言下だった前回調査(2020年4月~6月)の平均残業時間は20.6時間/月で微増
■前回から最も減少したのは「教育/スクール」、増加したのは「電機メーカーの営業」
- 教育/スクール:教育現場でのITC活用やクラスのオンライン化が進み、-19.2時間
- 電機メーカーの営業:半導体関連商品の急激な需要の高まりを背景に、+12.1時間
■少ない職種は「事務/アシスタント」系、多い職種は「建築/土木・モノづくり系エンジニア」
- 事務/アシスタント:これまで同様、全体的に安定して残業が少ない
- 建築/土木系エンジニア:インフラ整備や災害対策などの需要が高まるも、労働力不足で残業が増加
- モノづくり系エンジニア:コロナ禍で、ロボットやAI、自動化などの需要がさらに伸び残業が多い傾向
■平均残業時間は20.8時間/月で、前回から+0.2時間
コロナ禍での継続的なリモートワークなどにより、前回から大きな変化は見られず
2021年4月~6月の3カ月の平均残業時間は、全職種の平均が20.8時間/月で、前回の20.6時間とほぼ変わらない結果となりました。
残業時間が少ない職種TOP20の平均残業時間は、国内初の緊急事態宣言が出される前(2020年1月~3月)で20.7時間、コロナ禍で初の緊急事態宣言の期間を含む前回調査(2020年4月~6月)の14.7時間に比べ、今回はさらに減少し、13.5時間でした。
■平均残業時間が少ない職種
「教育/スクール」は残業時間が最も減少し、残業時間が多い職種55位に
TOP20には、11職種中10職種の事務/アシスタント系職種がランクインし、半数を占める結果に。この傾向はコロナ以前の2020年1月~3月、前回調査の2020年4月~6月でも同様に見られ、事務/アシスタント系の残業時間は全体的に安定して少ないことが分かります。
前回から最も平均残業時間が減ったのは「教育/スクール」で-19.2時間、今回90職種中55位になりました。教育現場ではITCの導入が進んでおり、これまで手作業で行っていた宿題やテストの作成、配布、回収、採点など一部業務のオンライン化で、業務の効率化が図られていることが要因と考えられます。フィットネスジムでは、営業時間の短縮を余儀なくされた一方で、「コロナ禍で運動不足を解消したい」「増える在宅時間を充実させたい」というニーズを追い風に、非対面でのライブやビデオレッスンの配信を導入。レッスン前後の準備や掃除などの後片付け、受講者対応の時間などが減り、残業時間に影響を与えたものと想定されます。
「教育/スクール」に次いで減ったのは、新型コロナの影響を最も受けた職種の1つ「調理/ホールスタッフ/フロアスタッフ」で、-9.4時間でした。営業時間の短縮に加え、支払いのキャッシュレス化や食洗器の導などにより一部業務が自動化されたこと、フードデリバリーのニーズ増加による接客の省人化が進んだことから、残業時間のさらなる減少につながったと想定されます。
■平均残業時間が多い職種
労働時間が長い傾向にある建設業の中で、「施工管理」のみ残業時間が減少
TOP20には、インフラ整備や災害対策の需要が高まる「建築/土木系エンジニア」、ロボットやAI、自動化などの需要がさらに伸びている「モノづくり系エンジニア」が最多4職種ランクインしました。
建築業界は、以前から慢性画的な労働力不足に陥っており、長時間労働者の割合が高い傾向にあります。耐震対策や建物の老朽化にともなうインフラ整備などのニーズが高まり続けているにも関わらず、手書き伝票などのアナログ業務がいまだに多く残っているため、残業時間が増えていると想定されます。建設業界は、2024年に「時間外労働の上限規制」が適応されます。残業時間の削減が急務の中、人員確保は待ったなしの課題といえそうです。
一方「施工管理」は、TOP20内で残業時間が減った唯一の建築系の職種です。工事現場の施工や予算、安全面など、工事に関わるすべての管理を担う「施工管理」は、昨年からクラウド型の施工管理システムの導入が急速に広がり、仕事のデジタル化が進みつつあります。図面管理や業務連絡の一斉送信などがタブレット上で可能となり、事務所への移動時間や事務作業が削減。さらにタブレット端末などを通じた現場監督が可能となったこともあり、今回、残業時間が-5.1時間減りました。「施工管理」は、「時間外労働の上限規制」適用に向け、改善の兆しが見えてきたといえるでしょう。
前回から最も平均残業時間が増えたのは、「電機メーカーの営業」です。この職種は、昨年、残業時間が少ない職種の20位でした。残業時間が大幅に増加した背景には、世界的な「半導体不足」があると考えられます。新型コロナの影響により、工場の停止や物流の停滞などで半導体の入手が困難になりました。加えて、リモートワークの急激な普及や巣ごもり需要により、PCやテレビなど半導体関連商品の需要が急拡大し、供給体制のひっ迫が生じました。「電機メーカーの営業」はこれらのトラブル、高まり続けるニーズへのイレギュラー対応が発生し、残業時間が増加したと推測されます。
【解説】
初の緊急事態宣言発出から1年、今回の調査期間中も多くの地域に緊急事態宣言が発令されていたこともあり、平均残業時間は前回から大きな変化はなく20.8時間/月でした。一方、残業時間が少ない職種TOP20を見てみると、2020年1月~3月は20.7時間、20年4月~6月は14.7時間、21年4月~6月はさらに減少し13.5時間でした。コロナ禍で続くリモートワークやオンラインサービスの普及、支払いのキャッシュレス化をはじめする業務の自動化などが、残業時間の減少に繋がっていると考えられます。このように、残業時間削減のカギを握るのは、仕事の「デジタル化」であることは言うまでもありません。
現に、従来労働時間が他産業と比べて長い傾向にある建設業界の中でも、仕事のデジタル化が進む「施工管理」は残業が減りつつあります。また、新型コロナによる巣ごもり需要の増加でニーズが急拡大している物流業界も、ロボットなどを活用した倉庫の自動化、さらには在庫管理システムの導入を進めた結果、企画/管理系の「物流/倉庫/在庫管理」は、前回よりさらに5時間残業が減りました。
一方で、残業時間の削減は収入に影響を与え、収入の減少が働く人々の仕事へのモチベーションを下げかねません。企業は、残業手当ありきの給与形態を見直すなど、制度の在り方自体の検討が必要かもしれません。(doda編集長 喜多 恭子(きだ きょうこ))
【調査概要】
調査対象:20歳~59歳の男女
雇用形態:正社員
調査方法:ネットリサーチ会社を利用したインターネット調査
(ネットリサーチ会社保有のデータベースを元に実施、doda会員登録の状況については不問)
実施期間:2021年8月19日~8月23日
有効回答数:15,000件
※ウェイトバック:正社員の地域・年代・性別に合わせて実施
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(パーソルキャリア株式会社 / 1月31日発表・同社プレスリリースより転載)