「新型コロナウイルス感染症の感染拡大下における労働者の働き方の実態に関する調査」結果
独立行政法人 労働政策研究・研修機構は、「新型コロナウイルス感染症の感染拡大下における労働者の働き方の実態に関する調査」結果(労働者調査、企業調査)を発表しました。
■調査結果のポイント
◎新型コロナ感染拡大下における労働者を取り巻く環境
<労働者調査:新型コロナ下において、職場での感染リスクを感じた労働者は、「医療業」が8割弱、「社会保険・社会福祉・介護事業」が7割強、「生活関連サービス業」が7割弱、「小売業」が65%前後、「宿泊・飲食サービス業」が6割強と、相対的に高い>
新型コロナ下での労働者が感じた感染リスクの推移をみると、感染リスクを「感じた・計」の割合は、「通勤時」では45%前後、「職場(勤務時)」では60%前後で推移している。調査対象期間を通じて、労働者が感じる感染リスクは低下していない。職場(勤務時)の感染リスクを「感じた・計」の割合を業種別にみると、調査対象期間を通じて、「医療業」が8割弱、「社会保険・社会福祉・介護事業」が7割強、「生活関連サービス業」が7割弱、「小売業」が65%前後、「宿泊・飲食サービス業」が6割強と、相対的に高くなっている。
<企業調査、労働者調査:新型コロナ下において、迷惑行為を受けた労働者は、「医療業」「生活関連サービス業」でともに7.4%、「社会保険・社会福祉・介護事業」で5.4%と相対的に高い>
企業調査では、「緊急事態宣言下(2020年4月~5月)」において、事業所に対していやがらせ、誹謗中傷などの迷惑行為を受けた経験がある企業割合は3.4%となっている。業種別にみると、「宿泊・飲食サービス業」が9.7%と最も高く、次いで、「生活関連サービス業」(7.8%)、「医療業」(5.2%)、「社会保険・社会福祉・介護事業」(3.2%)などが続いている。迷惑行為を受けた相手としては、「事業所のある地域の住民」が45.9%と最も高く、次いで、「事業所の利用者」(36.8%)、「従業員の関係者」(15.7%)などとなっている。
一方、労働者調査では、「自身が迷惑行為を受けた経験がある」とする労働者の割合は4.2%となっている。業種別では、「医療業」(7.4%)、「生活関連サービス業」(7.4%)、「社会保険・社会福祉・介護事業」(5.4%)で相対的に高い。迷惑行為を受けた相手については、「顧客や利用者」(46.3%)が半数弱を占め、次いで、「勤め先の地域住民」(31.9%)、「自宅の地域住民」(20.1%)などとなっている。
<労働者調査:新型コロナ感染拡大とともに精神的負担が大きいと感じる労働者が5割以上まで上昇>
労働者の仕事に対する肉体的負担について、「負担が大きい・計」」(「非常に大きい」「やや大きい」の合計)をみると、「平時」の34.3%に対し、緊急事態宣言以降やや上昇傾向で推移している。一方、仕事に対する精神的負担については、「負担が大きい・計」とする割合は、「平時」の41.6%に対し、緊急事態宣言以降、5割以上にまで高まっている。
性・雇用形態別にみると、正社員、非正社員にかかわらず、男性に比べ女性のほうが、肉体的負担、精神的負担いずれも、「負担が大きい・計」の割合が高い。特に「女性正社員」では、肉体的負担で「負担が大きい・計」が41.9%、精神的負担で「負担が大きい・計」が63.6%となっている。
精神的負担で「負担が大きい・計」とする割合を業種別にみると、「社会保険・社会福祉・介護事業」(70.7%)、「医療業」(67.7%)、「生活関連サービス業」(61.2%)、「宿泊・飲食サービス業」(58.4%)、「小売業」(56.5%)などで高くなっている。
<労働者調査:仕事の満足度の低下は、緊急事態宣言以降、「宿泊・飲食サービス業」「生活関連サービス業」で高い>
労働者調査によると、仕事を通じた満足度は、「平時(2020年1月以前)」では、「満足度が高い・計」(「非常に高い」「やや高い」の合計)が18.8%、「満足度が低い・計」(「やや低い」「非常に低い」の合計)が21.9%と、両者は拮抗している。それが、「緊急事態宣言下(2020年4月~5月)」において、「満足度が低い・計」の割合は32.4%と上昇し、「2020年9月~10月」でいったん28.8%に低下したものの、「直近(2021年1月)」(32.0%)で再び上昇している。
これを業種別にみると、「緊急事態宣言下(2020年4月~5月)」において、「満足度が低い・計」の割合は、「宿泊・飲食サービス業」(46.1%)、「生活関連サービス業」(45.6%)で他に比べて高く、その後の推移をみても、「宿泊・飲食サービス業」「生活関連サービス業」の割合が他に比べて高いことに変わりはない。
<労働者調査:労働者の給与に対する不満の割合は満足の割合を大きく上回っている>
労働者調査によると、正社員の給与について、「平時」では、「満足・計」(「非常に満足」「やや満足」の合計)の割合が16.5%、「不満・計」(「やや不満」「非常に不満」の合計)の割合が30.7%となっており、「不満・計」が「満足・計」を上回っている。
「緊急事態宣言下(2020年4月~5月)」では、「平時」に比べ、「不満・計」の割合は34.8%に上昇している。その後の推移をみると、「不満・計」の割合は、「2020年9月~10月」「直近(202年1月)」においてほとんど変わりがない。
◎営業時間、労働時間
<企業調査、労働者調査:緊急事態宣言下(2020年4~5月)で、営業時間の短縮や休業を行った企業は約3分の1、宿泊・飲食サービス業では8割弱。影響を受けた労働者は4分の1以上>
企業調査によると、前年同時期と比べての営業時間の変化は、「緊急事態宣言下(2020年4月~5月)」においては、「ほぼ同じ」が64.8%に対し、営業時間の短縮や休業を行った企業は33.5%と約3分の1となっている。
業種別にみると、「宿泊・飲食サービス業」(26.9%)、「生活関連サービス業」(18.2%)で休業割合が高い。その後は休業割合が低下し、「直近(2021年1月)」では「宿泊・飲食サービス業」(6.5%)以外の業種ではほとんど休業はみられなくなっている。
労働者調査による勤め先における前年同時期と比べての営業時間の変化は、「緊急事態宣言下(2020年4月~5月)」においては、「営業時間に変化はない」が70.4%に対し、「営業時間を減らした」が16.1%、「営業時間を大幅に減らした」が5.8%、「営業は取りやめた」が4.5%となり、合計で26.4%となっている。
◎企業の収益環境
<企業調査:緊急事態宣言下(2020年4~5月)の前年同時期と比較した収益は、62.5%の企業で減少。今後の業績は45%の企業で悪い見通し。特に、宿泊・飲食サービス業、生活関連サービスで厳しさが目立つ>
企業調査によれば、前年同時期と比較した収益の変化は、「緊急事態宣言下(2020年4~5月)」では、64.9%の企業で減少している。「減少・計」の割合は、「2020年9月~10月」に低下した後、「直近(2021年1月)」では、再び上昇している。
今後の業績の見通では、「悪い・計」(「非常に悪い」「ある程度悪い」の合計)は45.6%と半数弱を占める。業種別にみると、「悪い・計」の割合は、「宿泊・飲食サービス業」(72.6%)、「生活関連サービス業」(60.1%)、「製造業」(53.5%)、「運輸業」(51.9%)などで高い。
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(独立行政法人 労働政策研究・研修機構 / 7月9日発表・同法人プレスリリースより転載)