『日米欧社外取締役報酬比較』2020年調査結果を発表
企業に対するコンサルティング業務、保険のブローカー業務、各種ソリューションを提供する業務における世界有数のグローバルカンパニーであるウイリス・タワーズワトソン(NASDAQ:WLTW)は、日米英独仏の5カ国における売上高等1兆円以上企業の社外取締役の報酬について、調査を実施しました。
《 調査結果 》
社外取締役の総報酬水準(取締役会議長や筆頭等の役職を有さない社外取締役)
※個人別報酬額の開示情報より集計、日本のみ社外取締役・社外役員の総額開示より一人当たりの平均報酬額を算定して集計
日米欧社外取締役報酬比較(2020年調査結果)
●米国:3,270万円
●英国:1,690万円
●ドイツ:2,290万円
●フランス:980万円
●日本:1,430万円
社外取締役に対して株式報酬を支給する企業の割合
●米国:株式報酬あり 99% / 株式報酬なし 1%
●英国:株式報酬あり 20% / 株式報酬なし 80%
●ドイツ:株式報酬あり 4% / 株式報酬なし 96%
●フランス:株式報酬あり 0% / 株式報酬なし 100%
●日本:株式報酬あり 10% / 株式報酬なし 90%
取締役会議長を務める社外取締役の総報酬水準
※個人別報酬額の開示情報より集計
●米国:5,480万円
●英国:7.960万円
●ドイツ:4,930万円
●フランス:6,090万円
【出 所(2020年調査について)】
2019年度にかかる調査対象国における各企業の各国開示資料よりウイリス・タワーズワトソンのGlobal Executive Compensation Analysis Team(GECAT)が分析のうえ作成。なお、調査対象は以下のとおり:
米 国: Fortune 500かつS&P 500のうち売上高等1兆円以上の企業137社
英 国: FTSE 100のうち売上高等1兆円以上の企業46社
ドイツ: DAX構成銘柄のうち売上高等1兆円以上の企業23社
フランス: CAC 40のうち売上高等1兆円以上の企業33社
日 本: 時価総額上位100社かつ売上高等1兆円以上の企業72社のうち、分析時点での有報未提出企業2社を除く70社における連結報酬等の中央値
※米国(Outside Directorを集計)、英国、ドイツ、フランス(それぞれNon-Executive Directorを集計)については、個人別報酬額および報酬の方針の開示情報を分析して集計。取締役会議長や筆頭等の役職を有さない社外取締役については、対象となる全ての個人別報酬額の平均値を算出し、1社につき1サンプルとして中央値を集計している。取締役会議長についてはその個人別報酬額の中央値を集計
※各国のデータサンプルにつき、在籍期間等により年額が得られないデータサンプルは異常値として集計上除外
※日本については、社外取締役報酬の総額開示より一人当たり平均報酬額を算出し、1社につき1サンプルとして中央値を集計(社外取締役としての総額開示の区分がない企業12社については、社外役員の総額開示より一人当たり平均報酬額を算出。)
※円換算レートは2019年平均TTM(1ドル=109.05円、1ポンド=139.26円、1ユーロ=122.07円)
《 コメント 》
ウイリス・タワーズワトソン
コーポレートガバナンス・アドバイザリーグループリーダー 兼
経営者報酬プラクティスリーダー / シニアディレクター 櫛笥隆亮
日本における社外取締役の報酬水準は、中央値を見る限り、昨年の調査結果とほとんど変わらない結果となった。売上高1兆円以上の大手企業においては、引き続き年間1,500万円程度が相場となっている。社外取締役に対して株式報酬を支給する企業は、昨年と同様に1割程度と少なく、特段の変化は見られなかった。
報酬水準について更に見ると、中央値は変わらずとも、水準の分布自体は昨年と比べて上方に拡大していた。これは、昨年から水準を大きく増額させた企業が少なからずあったことが背景にある。支援の現場で見ている実感としても、一部の企業の社外取締役は、指名・報酬委員もしくは委員長として年間6~8回程度の委員会へ出席する、筆頭社外取締役として機関投資家との対話を担う、取締役会議長として議題の設定をリードするなど、役割や責任がこれまでより明らかに重くなっている。事前準備までを含めると、企業に費やす時間も以前とは比べ物にならないほど長い。こうした役割を担う社外取締役には、手当等の金額を上乗せして報酬を決める実務がグローバルで一般的である。事実、欧米では取締役会議長や指名・報酬委員もしくは委員長の報酬水準は、そうした任務を負わない社外取締役よりも高く、責務に応じた適切な格差がついている。今後、日本の社外取締役に対しても、報酬方針の開示や決定プロセスの客観性・透明性を高めながら、期待される役割や重責に適切に報いるような、フェアな報酬水準のあり方を模索していく必要があるだろう。
株式報酬については、社外取締役が企業の持続的な企業価値の創造を監督の側面から支える役割を期待されていることからすれば、株式報酬を通じて長期の株価意識を涵養していくことにも合理性はある。ただし現状、多くの機関投資家は社外取締役の独立性をより重視し、業務執行役員と同じ目線を持つことを肯定的に判断していない。この点、昨今では資本市場のパラダイムシフトが急速に進み、企業の存在意義(パーパス)の重視、広範なステークホルダー利益の重視、ESG経営の重視が持続的な価値創造のキーワードになっている。こうした中で、社外取締役に期待される役割も変化することが想定される。単なる株主と経営陣の間に立つお目付け役に留まらず、外部から世間常識や多様な価値観を持ち込んで、社内の経営陣と一体となって価値を共創していく役割の発揮も求められてくるだろう。独立性だけではなく多様性が重要となり、社会価値の創出という共通目標に向け、社内外を問わず全ての取締役の目線を合わせることが重視されるのであれば、社外取締役に対する株式報酬の支給の是非も再考される余地が生じてくるだろう。
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(タワーズワトソン株式会社 / 8月24日発表・同社プレスリリースより転載)