中国・東南アジア・インドの求人・求職者動向レポート 2020年4-6月期
株式会社リクルートホールディングスのグループ会社であり、アジアを中心に人材紹介事業を展開するRGF International Recruitment Holdings Limited(本社:香港、 CEO:中重宏基)は、このたび、2020年4-6月期の中国・東南アジア・インドにおける日系企業を中心とした求人・求職者の動向をまとめました。
■中国大陸
採用市場は徐々に回復傾向。IT・通信、金融、医療領域は影響が少なく求人意欲が安定。
当社で取り扱う日系企業の4-6月期の求人案件数は、前年同期比で減少。しかしながら1-3月期と比べると減少幅は縮小した。ゆるやかではあるが経済に回復の兆しが見えはじめていることで、業界によってばらつきはあるものの、全体として企業の採用意欲は上向いてきている状況。
業界別には、新型コロナウイルスの感染拡大影響を大きく受けてきた商社、流通・小売、建築、不動産業界で引き続き採用活動が低迷しており、求人案件数も伸び悩んだ。一方でテレワークをはじめとした接触低減環境を確保するための技術需要が膨らんだこともあり、情報通信・ソフトウェア・IT業界の求人需要は他業界よりも高く、求人案件の減少幅も緩やかだった。また、機械設備投資のリース需要が少しずつ戻り始めており、金融業界では採用活動は前年同期並みまで回復。その他景気動向に影響を受けにくい製薬・医療業界も求人需要は安定しており、求人案件数も堅調に推移している。
求職者の動向としては、3月以降顕著だった、経済停滞による失業から再就職先を探すケースは、ここにきて減少傾向にある。一方、自発的な転職活動に対しては慎重になる傾向が続いており、全体として求職者の動きは鈍化している。
【転職事例】財務責任者(現地人材)/日系・医療機器/40代後半/約40万中国人民元(年収)
■香港
新型コロナウイルスの感染は一時抑え込まれたものの、第二波への緊張など不安定な状況が続く。
新型コロナウイルス感染症自体は一時抑え込まれたが、第二波、第三波への緊張も日々高まっており、不安定な状況が続く。香港政府は雇用に対する補助金等を立ち上げているものの、2019年のデモの影響から消極的だった転職市場の状況は変わらず、求人案件数も停滞。結果、前期(1-3月期)に引き続き当社4-6月の求人案件数は前年同時期と比べ減少した。
多くの日系企業で、積極的な採用は控えている状況が続いている。一方社内SEといった、IT・デジタル化に関する職種では、採用需要が継続している。また、人手不足の背景からこれまで経験が少なくても採用対象となっていた職種が、企業の生産性を上げるために、即戦力となる中途の採用を中心に行う動きがみられる。
日本人求職者の動きだと、新型コロナウイルスの影響で、積極的に国外から香港へ転職する求職者は少ないものの、物流やメーカー、コンサルなどさまざまな業種への、域内転職を希望する香港在住者は引き続き動きがある。募集企業側も香港在住者を優先に進める傾向にあるため、経験がマッチすると転職がスピーディに決まる。
【転職事例】ITスペシャリスト(日本人材)/日系・金融/20代/約32.5万香港ドル(年収)
■インド
新型コロナウイルスの影響を受け採用活動は鈍化。一方で日本人求職者の現地採用ニーズが高まる。
インドの転職市場は、例年4-6月が求人数増加に伴って一番活況となるが、今年は3月末からのロックダウンの影響で、求人数が減少。6月に一部の州を除きロックダウンが解除され、徐々に経済活動と採用活動が再開されつつあるが、感染拡大が継続するなか状況を不安視する声も挙がっている。
4-6月の間は緊急性の高い求人を除き、ほとんどの現地人材の求人が休止となった。一方で、日系企業においては駐在員を減らして現地採用することでコストを抑えるトレンドが続いており、経理や管理部門のマネージャー、技術系のマネジメントポジションなど、専門性の高い求人が増加した。そのため新型コロナウイルスの影響はありつつも、日本人求職者は一定程度需要がある状態が続いている。
業界別にみると、小売や飲食は引き続き業界としても厳しい状況が続き、採用活動は全体的に休止している状態。一方でITは開発拠点の設立に伴う求人案件や日本からのオフショア拠点における求人案件など一定の需要があり新型コロナウイルスの影響は限定的。
毎年4月から5月にかけては会計年度が変わるタイミングもあり、例年日本人の求職者が増えるトレンドがある。今年も新型コロナウイルスの感染拡大がありつつも、他の月に比べて1.5倍から2倍に増加。一方日本人以外の現地の求職者は減少。不況のなか転職に対して保守的になっていることに加え、政府が企業にロックダウン中の解雇や減給の禁止措置を出したことが大きな要因と予想される。
【転職事例】コーポレート部門責任者(日本人材)/日系・小売/40代後半/約430万円(年収)
■インドネシア
3月下旬より新型コロナウイルスの影響が出始めるなか、IT業界は堅調。
3月下旬以降からインドネシアも新型コロナウイルスの影響に見舞われた。社会的制限の発令により特定の事業以外の事業活動が停止した結果、企業の採用活動が鈍化した。6月に入り社会的制限が緩和され、事業活動の再開に伴って採用活動も回復基調にはあるが、年始の状態に戻るまではまだ時間がかかる見込み。
全体的に企業が採用活動の休止・見直しが行われているなか、業界別の動向として、 IT業界では継続して採用活動が行われており求人案件数は堅調に推移。また製造業界においては、鈍化傾向が継続しているものの、人事や経理といったバックオフィス系人材の欠員補充を中心に引き続きニーズがある。また、IT機能強化や、生産ラインの自動化を推進する動きがあり、IT人材の採用が他職種と比較すると増加傾向にある。
求職者の動きについては全体的に活発化。現地の日本人以外の求職者は例年ラマダーンの断食明けの季節は転職活動が活発化するが、今年は新型コロナウイルスの影響によって、より安定した雇用を求める動きもあり、例年以上に転職を希望する求職者が増えている。
【転職事例】ITコンサルタント(現地人材)/日系・IT/30代前半/約200万円(年収)
■シンガポール
9割以上の企業が在宅勤務を実施、IT・Eコマース業界のニーズが高まる。
政府のサーキットブレーカー措置(部分的な都市封鎖)を受け、4-5月の2ヶ月間は9割以上の企業が在宅勤務を実施。
どの企業も人員計画・採用計画について、慎重な姿勢を示している状況ではあるものの、在宅勤務・フレックスワークの導入が進むなかで、リモートワーク対応できる組織作りを支援できる社内IT人材の採用ニーズが増加。またインターネット・Eコマース業界での採用ニーズも増加。
ビザ発給の厳格化に加え、新規で赴任予定の日本人社員も赴任できない日々が続いている。今後外国人労働者の受け入れが制限されるなかで、組織体制や各スタッフの仕事の見直しを進めている企業が増え始めている。
日系企業も組織体制の見直しが進み、シンガポールの人事制度に明るい人事責任者や社内IT人材、ローカルスタッフのマネジメント人材のポストなど中長期戦略を見据えた採用活動を強化している企業もある。また在宅勤務が進んだことで、オンライン面接が急速に普及し、面接から採用まで全てオンラインで完結するケースが主流となってきている。
求職者の動向については、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って大きな打撃を受けている、旅行、宿泊などのサービス・観光業界、主要航空会社、イベント、飲食業界からの転職希望が例年に比べ大幅に増加。
【転職事例】エンジニア(現地人材)/日系・製造業界/30代後半/約700万円(年収)
■タイ
新型コロナウイルスの影響で駐在員の欠員補充のための人材需要が高い。
新型コロナウイルスの影響で求人数は減少しているものの、4月の状況と比較し、5月、6月は求人数が戻り始めており、徐々に回復の兆しが見えている。海外からの旅行者を受け入れる動きが本格化すれば、基幹産業の観光業の回復に伴う全体経済の活発化が期待できるが、年内の国外からの旅行者の受け入れは難しいのではないかとの見方もあり、今後の景気回復が不透明ななか、転職市場の活発化には時間を要することが想定される。
弊社で取り扱う求人としては、日本人駐在員の帰国とともに、日本からの新規駐在員の派遣が困難なことを受けて、現地人材のポストに切り替える日系企業が増加しており、補充採用の需要がみられる。特に現地在住の日本人の採用を積極的に行ってこなかった金融機関や大手自動車部品製造業が現地採用の強化を検討開始する動きがみられ、当社への相談も増加している。また、タイでは1ヶ月以上新型コロナウイルスの国内感染者が出ていない(7月中旬時点)が、継続して在宅勤務を行っている企業も多く、今後の働き方や福利厚生について再考を求められる企業が増えており、人事やITなど社内の働き方の見直しの業務においても一定程度需要がみられる。
求職者全体の動向としては、新型コロナウイルスの影響から雇用契約の早期終了・契約満了時で打ち切り、また業績悪化による解雇や減給などで転職を余儀なくされる現地在住の方の登録が増加。しかしながら求人数そのものの低迷により、転職活動が長期化している方が多い。
【転職事例】プロジェクトマネージャー(日本人材)/日系・IT/40代後半/約150万タイバーツ(年収)
■ベトナム
新型コロナウイルスの感染拡大は抑え込まれたが、経済への打撃は大きく企業の採用活動は縮小。
他の東南アジア諸国に比べ、ベトナムは政府の積極的な予防策もあって新型コロナウイルスの影響は限定的。しかし経済への打撃は大きく、企業の採用活動縮小、および停止を招いた。特にサービス業・観光業への打撃は大きく、失業者は増加し、ベトナム統計総局の6月29日の発表によると都市部の失業率は4%超へ上昇した。
弊社で取り扱う日系企業を中心とした求人案件数は前年同期比で減少となった。経済的な打撃の大きいサービス業を営む企業を中心に求人案件数が減少した。外国人のベトナム入国制限が未だに解除されない状態であり、採用権限を持つ一時帰国中の日本人駐在員がベトナム入国できないため採用活動が保留・延期・中止となっている企業も一定数ある。入国制限が継続する状況のなかで、ベトナム在住の日本人の採用を急ぐ日系企業も出てきた。
ベトナムへの転職を希望する求職者の半分以上が日本在住の日本人求職者であるが、ベトナム入国制限解除の見通しが立たないため、日本勤務も視野に入れながらベトナムでの転職活動を行う人材が増加した。そのためベトナムへの転職意欲は通期に比べ低い傾向があり、在ベトナムの企業から内定を受けても辞退するケースも見受けられた。
ベトナム現地の求職者については、転職に慎重な姿勢を見せる傾向と、就職先が見つかりにくいため希望給与を下げてでも内定を承諾する傾向で二極化している。
【転職事例】カスタマーオペレーター(日本人材)/日系・IT/20代半ば/約25,000 USD(年収)
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社リクルート / 7月28日発表・同社プレスリリースより転載)