アジア太平洋地域の2020年昇給予算は+5.7%で前年同水準を維持 - ウイリス・タワーズワトソン
~2020年の日本の昇給予算は+2.5%と、昨年比微増の見込み~
グローバルにコンサルティング業務、保険のブローカー業務、各種ソリューションを提供するリーディングカンパニーであるウイリス・タワーズワトソン(NASDAQ:WLTW)が実施した最新の昇給率調査レポート(2019年Q3 アジア太平洋地域版)によると、アジア太平洋地域では経済成長の鈍化に伴いコスト削減が課題になっているところ、2019年の平均昇給率は5.6%と堅調な結果がみられました。これは昨年時点の予測である5.9%を若干下回る結果となっています
<アジア太平洋地域における過去5年間(2014年-2020年)の昇給率推移>
-2015年:実績昇給率-6.6%
-2015年:実績昇給率-6.1%
-2016年:実績昇給率-5.8%
-2017年:前年度予測昇給率-5.9%, 実績昇給率-5.6%
-2018年:前年度予測昇給率-5.7%, 実績昇給率-5.6%
-2019年:前年度予測昇給率-5.9%, 実績昇給率-5.6%
-2020年:前年度予測昇給率-5.7%
調査参加企業の2/3は、本年の業績は昨年並みと見込んでいますが、業績が改善する見通しと回答した企業は25%にとどまり、2018年の結果からは10%の減少となっています。政情不安や経済見通しの悪化、グローバル規模での需要減によるアジア太平洋地域の輸出の伸び悩みなどを受け、各企業は高まるリスクに直面している状況といえます。
アジア太平洋地域では、2020年の昇給予算について、「昨年水準の踏襲」が基本路線となっています。調査対象の20の国・地域のうち、2020年の昇給予算が前年を上回っているのは9つの国・地域(バングラデシュ、カンボジア、中国、インド、日本、パキスタン、スリランカ、タイ、ベトナム)で、うち、前年水準を0.2%以上上回っているのはバングラデシュ、カンボジア、スリランカといった新興3か国のみとなっています。
他の国・地域*における予測昇給率は、本年水準を維持する(増減なし)という結果となっています。
*オーストラリア、香港、インドネシア、マカオ、マレーシア、ミャンマー、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、韓国、台湾
日本の昇給予算は、2019年実績が+2.4%であったのに対し、2020年度の見通しが+2.5%と微増となっています。ウイリス・タワーズワトソン リワード部門(日本)を統括する森田 純夫は、「景気動向に各社とも敏感にはなりつつあるものの、業績は比較的堅調に推移していることや、企業の人材への需要が引き続き旺盛であることを背景に、日本市場における昇給率は過去水準を維持しています。しかしながら、米中貿易摩擦に伴う景況感の冷え込みなどはまだ十分この数値に織り込まれていない可能性がある点には注意が必要でしょう。また、日本における上昇幅は直近年度の好業績からすればわずかであると捉えることもでき、企業側のコスト抑制の姿勢が根強いことを示しています。」と述べています。
いわゆる「デジタル人材」を筆頭に、専門性を有する人材を積極的に活用する動きは加速する一方です。市場で「値札」がつくこうした外部の高度専門人材を招き、確保するうえでは、旧来の「給与テーブル」に基づく対応のみでは限界が生じています。これに対応するため、1)職務・スキルをベースとした給与体系(いわゆる「ジョブ型賃金」)への移行、2)高度専門人材を対象とした特別な給与体系・水準の適用、といった動きが見られています。 ただし、こうした動きは全体においてはまだわずかといえる比率にとどまっており、全体の賃金水準の動向にまで影響を与える状況には至っていません。
森田は、今後に向けた見通しとして次のように述べています。「短期的には、企業の景況感や業績がどのように推移し、それが各社の昇給予算の判断にどのような影響を及ぼすか、目を離すことができません。中期的には、定年後の継続雇用を終える団塊世代が大量に人材市場を退くことが予想されるなかで、労働力の需給関係の変化が賃金水準に影響を与えるかどうかが注目されます。また、若年層を中心として、雇用に対する意識や志向が徐々に変化しているといわれますが、こうした変化を受け世代を越えて人材の流動性がさらに高まるかどうかが、賃金決定における市場原理の浸透、ひいては賃金上昇の鍵を握っているといえます。ただし、そうした変化が現れるにはまだ時間がかかるとみています。」
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(ウイリス・タワーズワトソン/ 12月17日発表・同社プレスリリースより転載)