2018年賃上げの見通し、定昇込みで6762円・2.13%と予測。経営側の33.6%がベアを「実施する予定」~『賃上げ等に関するアンケート調査』:労務行政研究所
民間調査機関の労務行政研究所(理事長:猪股 宏)では、1974年から毎年、来る賃金交渉の動向を把握するための参考資料として、「賃上げ等に関するアンケート調査」を労・使の当事者および労働経済分野の専門家を対象に実施している。
これによると、18年の賃上げ見通しは、全回答者470人の平均で「6762円・2.13%」となった。賃上げ率は14年以降、5年連続で2%台に乗るとの予測である。労使別の平均値は、労働側6594円・2.08%、経営側6475円・2.04%で、両者の見通しは近接している。
また、自社における18年の定期昇給については、労使とも「実施すべき」「実施する予定」が9割前後に上る。一方、ベースアップについては、経営側では「実施する予定」33.6%、「実施しない予定」40.7%となり、3分の1がベア実施の意向を示している。労働側では、ベアを「実施すべき」が76.0%と4分の3以上を占めた。
【調査結果の概要】
1.実際の賃上げ見通し
・全回答者の平均:6762円・2.13%で、賃上げ率は2%台に乗るとの予測
・労使別の見通し:労働側6594円・2.08%、経営側6475円・2.04%
●額・率の見通し
18年の賃上げ見通しを、東証第1部・2部上場クラスの主要企業を目安とした世間相場の観点から回答いただいたところ、全回答者の平均で6762円・2.13%となった。厚生労働省調査における主要企業の昨17年賃上げ実績は6570円・2.11%で、これを上回り、賃上げ率は5年連続で2%台に乗るとの予測である。
労使別では、労働側6594円・2.08%、経営側6475円・2.04%となった。労使の見通しの差は119円・0.04ポイント。本調査における「実際の賃上げ見通し」は、企業業績の回復や政府の賃上げ要請等に後押しされ、社会的にも賃上げムードが高まる中、14・15年と労使の見通しに開きが生じていたが、16年以降は縮小に転じている。
賃上げ率の分布は、労使とも「2.0~2.1%」が最も多い(労働側29.9%、経営側37.2%)。なお、“3%”と回答したのは、労働側5.9%、経営側2.7%にとどまった。各種調査による大手企業の“定期昇給率”は平均で1.6~1.8%程度とみられ、今回の調査では前提として定昇率を「1.8%程度」と提示している。定期昇給制度がない企業もあるため一様には言えないが、調査結果から、定昇に幾らかのベアが上積みされるとの見方が多いといえる。
2.自社における2018年定昇・ベアの実施
※前項の「実際の賃上げ見通し」は、“世間相場”の観点から一般論として回答いただいたものであるが、ここでは自社における、来る交渉に向けた考えを尋ねた。
・定昇の実施:労使とも「実施すべき」「実施する予定」が9割前後と大半を占める
・ベアの実施:経営側の「実施する予定」33.6%に対し、労働側の「実施すべき」は76.0%
●定昇の実施
本調査では、賃上げ額・率の世間一般的な見通しに加え、自社における賃金制度上の定期昇給(賃金カーブ維持分を含む。以下、定昇)および業績等に応じたベースアップ(賃金改善分を含む。以下、ベア)の実施についても労使双方に尋ねた(なお、労働側・経営側の回答者は、それぞれ異なる企業に属しているケースが多い点に留意いただきたい)。
18年の定昇については、労働側で91.9%が「実施すべき」、経営側で88.5%が「実施する予定」と回答。経営側の「実施しない(凍結する)予定」は0.9%(1人)にとどまった。実質的な賃金制度維持分に当たる定昇については、労使とも大半が実施の意向を示している。
●ベアの実施
ベアに関しては、経営側では「実施する予定」33.6%、「実施しない予定」40.7%となった。一方、労働側では「実施すべき」が76.0%と4分の3以上を占めた。ベアに対する労使の見解には、大きな違いがある。
各年においてベアを「実施すべき」または「実施する予定」と回答した割合の推移を見ると、2010年以降、低迷する経済・経営環境から、労使ともベアの実施には否定的な傾向が続いていたが、労働側は14年に一転、実施派が主流となった。例年、ベア実施には慎重な姿勢を示してきた経営側も、14年16.1%、15年35.7%と「実施する予定」の割合は増加。16年は30.1%で15年に比べるとやや減少し、17年は23.7%とさらに低下したが、18年は33.6%と15年に次ぐ高い割合となった。
3.人事関連テーマへの対応予定(対応状況)/見通し
※人事関連のテーマ「2018年夏季賞与」「長時間労働の是正」「有期契約労働者の無期転換」について、労働側・経営側には自社の方向性が図表(リリース参照)のA・Bのどちらに近いか、専門家には企業の対応が同A・Bのどちらに近いと見込まれるか、それぞれ回答いただいた(集計対象:労働側221人、経営側113人、専門家136人)。
・2018年夏季賞与:労働側は37.1%、経営側は30.1%が「A(増える)に近い」との見通し
・長時間労働の是正:労働側77.4%、経営側85.8%が「A(対応済み・対応予定)に近い」と回答
●人事関連テーマへの対応予定(対応状況)
労使について見ると、「2018年夏季賞与」は3割台が「A(増える)に近い」との見通し。「長時間労働の是正」では7~8割台、「有期契約労働者の無期転換」では6~7割台が「A(対応済み・対応予定)に近い」としている。
◆調査要領
1.調査時期:2017年12月4日~2018年1月15日
2.調査対象:被調査者6440人(内訳は下記のとおり)
◇労働側 東証第1部および2部上場企業の労働組合委員長等2098人(労働組合がない企業は除く)
◇経営側 東証第1部および2部上場企業の人事・労務担当部長2458人
◇労働経済分野の専門家 主要報道機関の論説委員・解説委員、大学教授、労働経済関係の専門家、コンサルタントなど1884人
3.回答者数および集計対象:1月15日までに回答のあった合計470人。対象別内訳は、労働側221人、経営側113人、労働経済分野の専門家136人
4.集計要領・方法:賃上げ額・率は東証第1部・2部上場クラスの一般的な水準を目安に回答いただいたもので、定期昇給込みのものである。「賃上げ額」「賃上げ率」はそれぞれ別の項目として尋ね、具体的な数値の記入があったものをそのまま集計したため、両者の間には必ずしも関連性はない。
※本プレスリリースは厚生労働省記者クラブのほか、クラブ加盟社以外の媒体にもご案内しています。
※本調査の詳細は、当研究所編集の『労政時報』第3945号(18.2.9)で紹介します。
【本件に関するお問い合わせ先】
企業名:一般財団法人 労務行政研究所
担当者名:五林(ごばやし)・三宅(みやけ)
TEL:03-3491-1242
Email:editor@rosei.or.jp
◆本調査の詳細は、こちら(PDF)をご覧ください。
(一般財団法人労務行政研究所 http://www.rosei.or.jp/ /1月31日発表・同社プレスリリースより転載)