平均収入は増加・高収入夫の妻の就業が一層進む。正社員女性の3割弱に短時間勤務制度の利用経験~『第4回(2016)子育て世帯全国調査』:JILPT
労働政策研究・研修機構は平成28年11月、子育て中の男女の仕事に対する支援策のあり方を検討するため、母子世帯(693)、父子世帯(86)とふたり親世帯(1,380)等計2,159子育て世帯の生活状況およびその保護者の就業実態や公的支援についての要望などを調査しました。このほど、調査結果がまとまりましたので公表します。
《調査結果のポイント》
<平均世帯収入は増加、貧困率は改善>
子育て世帯の平均年収は683.2万円で、引き続き増加傾向にある。税込収入が300万円未満の低収入世帯は全体の8.6%、調査開始以来もっとも低い割合である。可処分所得が貧困線未満の世帯の割合は、子育て世帯全体10.2%、ふたり親世帯6.0%、ひとり親世帯43.0%、いずれも前回調査時より改善されている。
<平均消費額は減少、貯蓄率は上昇>
家計費の月額平均は、子育て世帯全体26.5万円、ふたり親世帯27.5万円、ひとり親世帯18.0万円となっており、いずれも前回調査時より減少している。子育て世帯の平均貯蓄率は、子育て世帯全体28.3%、ふたり親世帯31.0%、ひとり親世帯5.7%、いずれも前回調査時より上昇している。
<夫が家計を管理する世帯が増加>
日々の家計の管理方法について、「妻が管理」と回答した世帯は、全体の61.2%でもっとも多いが、前回調査時より4ポイント低下している。専業主婦世帯においては、「妻が管理」の割合は低下傾向が鮮明で、57.3%となっている。一方、「夫が管理」と回答した世帯は12.9%となっており、割合が引き続き上昇している。
<高収入夫を持つ女性の就業が一層進む>
高収入男性の妻ほど無業率が高いというダグラス・有沢法則が弱くなっている。妻の無業率は、夫の所得が第I、第II、第IIIと第IV四分位層においては、それぞれ24.6%、24.2%、35.7%と31.1%となっている。上位25%収入層(第IV四分位層)夫を持つ女性の無業率は、前回調査時より8ポイント下がり、調査開始以降はじめて順位が1位ではなくなった。
<専業主婦は有業主婦より幸福感が強い>
母親の56.0%が「高幸福度」状態にいると自己評価している。「高幸福度」状態にいると評価した母親の割合は、貧困層35.0%、中低収入層52.5%、中高収入層以上59.2%となっている。妻の就業有無別でみると、「高幸福度」状態にいると評価した母親の割合は、妻が無業のグループ61.7%、妻が有業のグループ51.7%となっている。
<父親の家事・育児参加は緩やかに増加>
家事時間ゼロである父親の割合は、32.2%であり、前回調査時より4ポイント低下している。夫婦が行っている家事・育児の総量を10割として、父親がその5割以上を分担していると回答した世帯の割合は、前回調査時の8.2%から9.7%までに上昇している。
<正社員として働く母親が増加>
無業である母親の割合は28.2%で、前回調査の結果とほぼ同じである。一方、正社員である母親の割合は24.6%で、前回調査時より3ポイント上昇している。正社員割合は、短大以上の高学歴母親が28.8%で、低学歴母親に比べて11ポイント高い。
<「非正規・パート主婦」の約7割は、配偶者控除の収入限度額以内で働いている>
非正社員として働く有配偶の母親、いわゆる「非正規・パート主婦」の68.2%が、 配偶者控除の収入限度額である103万円以内で働いている。「第3号被保険者」の収入限度額である130万円以内で働く者と合わせると、「非正規・パート主婦」の約8割がいずれかの限度額内に収まる収入額で働いている。
<正社員女性の3割弱に短時間勤務制度の利用経験>
これまでに短時間勤務制度を利用したことがある母親の割合(時短経験率)は、10.8%である。正社員女性の「時短」利用がとくに進んでおり、時短経験率は、第2回(2012)調査時の19.3%から27.5%に上昇している。
◆ 本調査の詳細は、こちら(PDF)をご覧ください。
(独立行政法人労働政策研究・研修機構 http://www.jil.go.jp/ /9月14日発表・同機構プレスリリースより転載)