『中国・東南アジア・インドの求人・求職者動向レポート 2017年1‐3月期』:リクルートホールディングス
株式会社リクルートホールディングス(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 兼 CEO:峰岸真澄)の100%子会社であり、アジアを中心に人材紹介事業を展開するRGF Hong Kong Limited(本社:香港、President:葛原孝司)は、このたび、2017年1‐3月期の中国・東南アジア・インドにおける日系企業を中心とした求人・求職者の動向をまとめました。
中華人民共和国(中国大陸)
自動車・半導体関連の求人が堅調。外国人就業許可制度変更を前に日本人材向け求人は減少
・春節休暇後の日系企業の採用意欲は例年通り力強かった。小型車向けの減税幅縮小後も日系自動車の新車販売台数が好調に推移し、関連する製造業の求人が増加。また、中国政府主導による大規模投資を背景に、半導体関連業種の求人が堅調に推移した。
・日本人求職者は、35歳以下の若手層を中心に、日本に帰国して転職する事例が増えている。日本の求人倍率の高さ、人手不足が背景。
・外国人を対象とした新たな就業許可制度が2017年4月に施行されたが、現時点でも規定の詳細は固まっておらず、中国進出企業と、外国人求職者(日本人を含む)が動向を注視している。そのためか、1-3月期、日系企業の日本人材を対象とした求人は前年同期より減少した。
・中国の労働市場全体で、AIに携わる人材が希少なため、圧倒的な「売り手市場」になっている。関連する専攻で博士課程修了であれば、新卒でも年収100万元近くになる事例もあるようだ。
○転職事例:購買(現地人材)/日系・半導体/30歳代後半/97,000中国人民元(年収)
中華人民共和国(香港)
景気不安で現地人材は転職に慎重。フィンテック関連人材、日本市場担当人材のニーズあり
・毎年転職市場が活況となる春節後の人の動きは、例年と比べ落ち着いている。今年の昇給率を3%台とする企業が多く、過去6年間では最低水準。転職せずに現職に留まる傾向があるようだ。
・日系企業の新規進出や事業拡大は引き続き停滞気味で、増員計画のある企業は少ないが、不動産価格の下落にともないアパレルや飲食など小売業界が再び活性化している。
・日系企業の新規進出や事業拡大は引き続き停滞気味で、増員計画のある企業は少ないが、不動産価格の下落にともないアパレルや飲食など小売業界が再び活性化している。
・5月から大学新卒の就職活動が始まるが、今年は企業の採用枠が少ないため「買い手市場」になると見られている。過去10年以上継続して上昇してきた新卒初任給も減少すると思われる。
・フィンテック分野で外資系スタートアップがアジア統括拠点を香港に開設する動きがあり、フィンテック関連の求人が増加。また、日本マーケット担当者の採用が増加傾向。これに伴い日本人材に対するニーズも改善している。
○転職事例:日本/韓国地域セールスマネージャー(日本人材)/欧州系・金融情報サービス/30歳代/700,000香港ドル(年収)
インド共和国
「インド新幹線」関連の求人増加!ベテラン日本人材へのニーズも高い
・インドの転職市場は、1月の賞与支給や各社の昇給決定を受け、例年どおり1-3月に求職者の動きが活性化。
・日系企業では、3月末の人事異動に伴う求人が増える時期。今年は特に、日本からの駐在員をインド人材や現地採用の日本人材に置き換えて現地化を進めようとする日系企業が目立った。また、新規進出企業からの問い合わせも増加。日本連合の受注が決定した高速鉄道敷設に関連し、エンジニアリング会社やプロジェクトオフィスの立ち上げ、それに伴う採用も始まっている。当社でもプロジェクトマネージャー(インド人材)や、総務(日本人材)の採用を支援した。今後のプロジェクト進展に伴い、インド人材、日本人材ともにさまざまな職種での求人が増えそうだ。
・日本人求職者は、20~30歳代が多いものの、最近は50歳代以上の登録も目立つ。海外駐在経験後に日本に帰任、再び海外での就業に関心を持つ求職者など。希望する給与が600万円以上と比較的高いものの、新規事業や拠点の立ち上げに伴い即戦力を採用したい日系企業にとっては貴重な「グローバル人材」としてニーズが高い。
○転職事例:シニアエンジニア(現地人材)/日系・鉄道プロジェクトオフィス/40歳代前半/約480万インドルピー(年収)
インドネシア共和国
日系企業の進出拡大と現地化進展でインドネシア人材への需要継続。賃金上昇の動向には留意
・現地法人設立、新拠点立ち上げ、生産体制拡充を進める日系企業では、それに伴う採用ニーズがある。日本人材を対象とした求人は、営業、コンサル、通訳・秘書などで増えた。立ち上げフェーズの日系企業では、駐在員のリソースに限りがあるため、日本語能力のある現地人材を対象に、人事・総務・経理など管理部門の職種で需要が高い。
・2016年末前後には、賞与支給前のトレンドとして、例年通り求職者全体の動きが鈍化。年明け、各社の昇給情報が出そろい、求職者の活動も活気を取り戻している。今後は、6月の断食(レバラン)後の賞与支給を控え、再び、落ち着く見込み。
・2013年以降、日系企業が多く進出する地域では、州や県ごとに決定される最低賃金が年々上昇。労働集約型の事業を行う日系企業は、コスト増を販売価格に容易に移転できないため、賃金上昇を踏まえた慎重な採用計画策定が求められる。
○転職事例:営業(日本人材)/日系・ホテル/20歳代/420,000,000インドネシアルピア(年収)
シンガポール共和国
東南アジアハブ拠点としての成熟+外国人就業ビザ厳格化で「英語力+専門性」が一層問われる
・日系企業は、東南アジア進出・事業拡大の動きが続いている。東南アジア事業をとりまとめる拠点としてのシンガポールでは、特に専門職人材(会計士、弁護士、設計士、金融、IT)の需要が増加傾向にある。加えて、外国人の就業ビザ発給要件が厳格化したことにより、進出日系企業の日本人材採用要件は、「20歳代の若手でビジネス英語力のある人材」もしくは「30歳代以降のマネジメント職・高度専門職」が主流となりそうだ。相対的に、永住権を持つ日本人材が職を得やすくなっており、ビジネスレベルの英語力を持つ人材には、一般事務職や秘書職で就業機会は豊富。
・日本人求職者にとっては、相対的に給与水準の低い20~30歳代後半の層の就職は一層難易度が高まる。ビジネスレベルの英語力を身に付けることに加えて、専門性を磨くことが求められている。
○転職事例:コンプライアンスオフィサー(日本人材)/日系・金融/20歳代半ば/約800万円(年収)
タイ王国
日系企業の空調事業拡大に伴う採用増加。ベテラン日本人材へのニーズはサービス業にも広がる
・タイの転職市場は、例年どおり、12月の賞与支給後である1月後半以降活発化。緩やかな景気回復への期待もあり、タイ正月のソンクラン明けから8月頃にかけては、企業の採用活動、求職者の動きともに、昨年よりも活発になりそうだ。
・1‐3月、日系大手電機メーカーがタイの空調事業拡大を相次いで発表。生産やセールス・アフターセールスの人材ニーズが高まっている。タイの空調・省エネ技術の需要増や近隣諸国向けの生産ハブとして、今後も事業拡大が予想される。
・日系企業では、タイ市場を開拓する人材を欲している。現地人材を対象とした求人では、新規開拓を担う人材ニーズが高い。特に、日本語能力のある人材や若手・高スキル人材の給与は上昇傾向が続く。日本人材対象の求人では、ベテラン層を求める企業に広がりが出ている。従来の製造業に加えてサービス業でも、豊富な経験・コネクションを持つ人材を採用し、事業拡大に生かそうとしている。
・シンガポールのビザ取得厳格化の影響は、周辺国にも波及。シンガポールからタイに転職を希望する日本人材も出てきている。
○HRマネージャー(現地人材)/日系・製造(エレクトロニクス)/40歳代前半/1,350,000タイバーツ(年収)
ベトナム社会主義共和国
日系企業の進出拡大・業種多様化 → ベトナム企業の日本人求人も増加
・旧正月(テト)休暇、賞与支給期が過ぎ、ベトナムの転職市場は活況。2017年の事業計画に基づく企業の採用も積極的。
・日系企業では、既に進出している大手企業に加え、日本人がベトナムで立ち上げた中小企業の求人も出てきた。先に進出した日系企業が事業拡大の段階に入り、取引先を増やしていることに呼応した動き。また、企業規模にかかわらず、ハノイやホーチミンといった大都市以外にも、日系企業の進出が広がっている。さらに、農業関連の企業など、新規進出業界も多様化。ある企業では、日本の食品メーカーで商品開発を担っていたベテラン人材を経営陣として迎え入れた。
・現地大手企業では、増加する進出日系企業を顧客として獲得しようとする動きも活発。日系企業の窓口となる新規開拓営業職などで、日本人材を求めている。
・シンガポールや中国の外国人就業ビザ発給要件の厳格化の動きを受けて、ベトナム語能力不問・熟練者でなくても職を得やすいベトナムは、アジアの中でも就職先として日本人材に選ばれやすくなっている。
○転職事例:チーフアカウンタント(現地人材)/日系・商社/30歳代後半/550,000,000ベトナムドン(年収)
◆ 本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社リクルートホールディングス http://www.recruit.jp/ /4月28日発表・同社プレスリリースより転載)