OKR
OKRとは?
「OKR(Objective and Key Results)」は、直訳すれば「目標と主な結果」という意味のビジネス用語です。目標と達成度を測る指標をリンクさせ、企業やチーム、個人が向かうべき方向とやるべきことを明確にする目標管理手法として知られています。OKRと通常の「目標」とはどのように異なるのでしょうか。OKRの意味や目的、機能について解説していきます。
1. OKRとは?~「OKR」と単なる「目標」の違い~
一般的なOKRの意味
OKRを理解するために重要なのは、「目標と主な結果」という言葉のうちの「結果」の部分です。
一般にビジネスにおける目標というと、「業績をアップさせる」「シェアを拡大させる」といったことを思い浮かべるかもしれませんが、OKRは、このような目標だけのものとは異なります。「目標と主な結果」という言葉にある通り、OKRは単に目標だけではなく、「求められる主な結果」を明確に測定できる指標をもたせるからです。
例えば「業績をアップさせる」をOKRにするならば、「1万人の新規顧客を獲得する」のように数値で結果を管理できる事柄も同時に決めなければなりません。「シェアを拡大させる」ならば、「シェアをいつまでに何%拡大する」などの具体的な指標を盛り込む必要があります。
「OKR」は、ノルマとも少し異なる
OKRは、ノルマとも意味合いが異なります。ノルマは通常、クリアすべき最低の基準と考えられていますが、OKRの場合は、むしろ達成できるラインの少し上の目標を立てるべきだとされているからです。これを「ムーンショット」と表現することもあります(月という高いところに撃つという意味から)。
例えば、OKRを採用している企業として知られているGoogleでは、達成度が60~70%のOKRを立てることがよいとされているそうです。100%達成できるOKRを立てると、社員は挑戦心が失われてしまい、自身の能力を最大限に発揮しようと思わなくなるかもしれません。かといって、とても達成できないような目標を設けて、それを最低限達成すべきノルマとすれば、社員が逃げてしまうことも考えられます。挑戦的で結果を測定できる目標を立てることがポイントとなります。
OKRの発祥と目的
OKRは1970年代に米Intelが採用し、その後、GoogleやLinkedInなど、数多くのグローバル企業が採用したことで有名になりました。
OKRという考え方自体は、「MBO(目標管理:Management by Objectives and Self Control)」という管理方法をより効果的にするために、「目標(Objective)」と、その目標の達成度を測る「求められる主要な結果(Key Results)」を取り入れようというシンプルな考えからはじまったとされています。
その背景には、個人の目標と組織の目標を一つにし、高い目標を達成するために効果的な戦略を立てることができる組織をつくりだす、という企業側のニーズがありました。情報が次から次へと変化する中で、現状を打破するイノベーションを起こし、社員と企業が一体になって発展するような組織にしようと考えたのです。
目標と測定可能な結果をリンクさせ、達成度を測ろうとするOKRには、「目標の数値」を達成するためにはどのようなプランが必要か、達成できなかった場合の問題は何かなど、より論理的な思考に基づくことでビジネスを行いやすくする性質があります。この性質を利用して、社員をさらにプロジェクトにコミットさせ、論理的な思考の基に仕事を効率化させようとする企業もあるようです。
2. OKRを会社で運用する方法とそのメリット・デメリット
OKRを活用すると、組織の目標や達成すべきゴールが明確になり、個人のモチベーションアップにも役立つとされています。
反対に、社員一人ひとりが勝手に目標を立てて行動したり、「業績を上げる」などの達成度とリンクしない目標だけを設定されたりすると、目標を上司と話し合う際に不必要なコミュニケーションが発生したり、社員自身のモチベーションが低下したりすることになりかねません。
ここからは、OKRを運用する方法とそのメリット・デメリットを解説していきます。
OKRの運用と目標設定の方法
OKRは、1ヵ月や3ヵ月などと期限を決めて、目標とその達成度を測る指標を決めるという形で導入されることが多いようです。まずは、会社全体としてのOKR、そして部署ごとのOKRを決めていくといったように、トップダウン式に決めていくと効率よく決めることができるでしょう。
OKRを作成する際は、まず「目標(Objective)」を決め、それに付随するいくつかの「求められる主な結果(Key Results)」を考えていくと、比較的スムーズにいきます。「目標」を決める際には、漠然と「業績をアップさせる」でも構いませんが、OKRとして運営する場合は、「1万人の顧客獲得」といったように数値で測れる定量的な指標=Key Resultsを設けなくてはなりません。
各部署のOKRを決めるときには、この「1万人の顧客獲得」といった会社全体の「Key Results」とリンクするよう、決めていく必要があります。例えばWEB関連の部署であれば、「サイトのアクセス数で10万PVを獲得」といった目標になります。
重要なのは、各部署のOKR達成が、会社のOKR達成に直結しているかどうかです。場合によっては下部の部署が決めたOKRの内容によって、会社全体のOKRを修正する必要になる場合もあります。
会社全体が一つの目標に向かって進めるような体制を整えることで、一体感が生まれるでしょう。
「SMART」とは?~「OKR」作成の5原則~
OKRを決定する際に重要なのは、目標の具体性や達成可能性など。その目標設定に必要な要素を簡単に説明したのが、「SMART」です。SMARTは、1980年代にジョージ・T・ドラン氏が発表したもので、以下の要素の頭文字をとって命名されています。
- 明瞭であること(Specific)
- 測定可能であること(Measurable)
- 達成可能であること(Attainable)
- 関連性があること(Relevant)
- 期限があること(Time-bound)
「明瞭であること」とは、誰が聞いても同じことを想像できる、という意味にとらえるといいでしょう。さらにOKRのポイントとして「測定可能であること」が重要であり、現在の業務にとって最も重要度が高い事柄を目標にすることも、「関連性があること」という点から大切といえるでしょう。
OKRの具体例~どんな目標を立てればいいの?
ここからは、OKRの具体例を見ていきます。例えば、スーパーの食品売り場で「1ヵ月の売り上げを伸ばす」という目標に基づいて、OKRを作成したケースです。
スーパーの食品売り場におけるOKR
求められる主な結果:
- 来店人数をXX人にする
- 一人当たりの購入額をXXXX円にする
- 売れ残りをXX%削減する
オンラインゲームに力を入れている企業などでは、次のようになるかもしれません。
ゲーム開発会社におけるOKR
求められる主な結果:
- 登録者数をXX人にする
- 一人当たりの課金額をXX%に引き上げる
- 常時ログイン者数をXX人以上に引き上げる
OKRとMBO、KPI、KGIの違い~それぞれのメリット・デメリット~
目標管理や達成度管理の手法には、OKR以外にもいくつかあります。ここでは、その主要な手法の特長や、それぞれの違いを見ていきます。
MBO
MBOとは、一般的には「目標管理(Management by Objectives and Self Control)」のことで、一定期間(通常は半期、または四半期)ごとに、個人に対して達成すべき「目標」を設定し、事業や組織の運営にあたるマネジメント手法です。上司からの指揮命令系統によるマネジメントではなく、本人の自主性や自己統制に基づいて目標を達成する点に、大きな特長があります。
KPIとKGI
KPIとは、一般的に「重要業績評価指標(Key Performance Indicator)」のことです。企業の目標達成やビジネス戦略の実現に向けて、業務プロセスが適切に実施されているかどうかをモニタリングする目的で設定される定量的な指標です。OKRでも定量的な指標が用いられますが、KPIの場合はもっと具体的です。
例えば、OKRが「来店人数をXX人にする」というものだとすれば、KPIは「ビラ配り一人XX枚」「呼び込みXX人」といった具合に、OKRを達成するためのカギとなる行為一つひとつに具体的な指標を設けることになります。
KGIとは、一般的に「重要目標達成指標」(Key Goal Indicator)のことで、「何をもって成果とするか」を定量的に定めたものを言います。「KPI」と混同されやすいものですが、KPIが個人や小さい部署の行動に対する目標達成度として用いられることが多いのに対し、KGIはプロジェクトや業務全体の目標達成指標となるので、「売上高」「営業利益率」「EVA(経済的付加価値)」などが主な参照物になります。
まとめると、KGIは「何をもって成果とするか」を定量的に定めたもの。業務プロセスにおける目標(ゴール)とそれが達成されたか否かを判断する評価基準です。これに対して、KPIはプロセスの実施状況を計測するために、組織や個人のパフォーマンスの度合いを定量的に表す指標を意味します。その意味では「KGI」はOKRでの「目標(Objective)」、「KPI」はOKRでの「主な結果(Key Results)」といえるかもしれません。
正式な名称 | 特長 | メリット | デメリット | |
OKR | 「目標と主な結果」Objectives and Key Results | 大きな目標とともに、定量的に測ることができる「求められる結果」を定める | 会社と社員が一体になりやすい。目標が明瞭になって行動しやすい | 適切な目標を立てにくい |
MBO | 「目標管理」Management by Objectives and Self Control | 個々人に必要な目標を設定するため、社員が積極的になりやすい | 個人に合わせて目標を立てるので、個人のやる気が上がる | 各人の能力によって、目標がばらばらになってしまう |
KPI | 「重要業績評価指標」Key Performance Indicator | OKRのような大きな課題を解決するために必要な、具体的な行為の定量的な指標を定める | 適切な指標を立てれば、各個人が目標を意識して取り組みやすい | KPI数が増えすぎると、社員が混乱してしまう |
KGI | 「重要目標達成指標」Key Goal Indicator | プロジェクトや業務など、より大きな目標達成の指標を定める | 成果を測定しやすくなることで、計画的に行動しやすくなる | KGIを増やしすぎると、社員が混乱してしまう |
3. OKRによる目標管理
会社の規模が大きくなってくると、それぞれの社員の意識も目標も異なってくるため、まとめ上げることが難しくなっていきます。しかし、OKRを定めて、具体的な行動指針を明確にすることで、社員の一人ひとりが何をすればいいのか、あるいは何をすべきなのかが明確になるため、自主的に動いてもらえるようになると考えられています。
漠然とした指標では、その効果を数値化することはできません。適切なフィードバックが得られない可能性もあります。ライバル企業が、結果を定量的に測定し、顧客からの適切なフィードバックを受け、常に論理的に導かれたトライアンドエラーを繰り返すといった経営体制を整えているのに、自社ではそうでなかった場合、苦戦するのは当然の流れといえます。企業が激しいビジネス環境の中で生き残っていく上で、重要な手法の一つといえそうです。
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