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【ヨミ】フォルトライン フォルトライン

「フォルトライン」とは、Fault(断層)とLine(線)から成る言葉で、日本語では主に「断層線」と訳されます。経営学では、一つのグループが属性の違いによって潜在的に複数のサブグループに分断されているとき、サブグループ間の境界線のことを、組織内の“断層”に例えて「フォルトライン」と呼んでいます。この概念は、1998年に加ブリティッシュ・コロンビア大学のドラ・ロウ氏と米ノースウェスタン大学のキース・マーニガン氏が提唱して以来、ダイバーシティ・マネジメントにおける新しい視点として注目されています。
(2017/1/27掲載)

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フォルトラインのケーススタディ

経営にマイナス効果を及ぼすダイバーシティとは
属性の違いが組織内を断絶、複数次元の多様化を

「ダイバーシティ=人材多様性が組織のパフォーマンスにどのような影響を与えるか」は経営学の重要なテーマであり、過去40年以上にわたって、数多くの実証研究が積み重ねられてきました。「多様性は組織にとって好影響」と結論づける研究もあれば、「むしろマイナス」とする研究結果もあり、学者の間でも最近まで合意が形成されていなかったのです。“必須の経営課題”と叫ばれて久しいダイバーシティ。いまや取り入れるのは当然との風潮もあるだけに、学術的な評価が定まらず、業績にプラスに働くどころか、マイナスの効果さえもたらしかねないという議論は意外かもしれません。

そもそも経営学でいう人材の多様性は、「タスク型の多様性」と「デモグラフィー型の多様性」に大別されます。前者は、実際の業務に必要な能力や経験、職歴などの多様性のこと。後者は、性別、国籍、年齢など、その人の“目に見える”属性についての多様性をいいます。最新の研究結果では、「タスク型の多様性は組織にプラスの影響を与えるが、デモグラフィー型の多様性は組織に何の影響も与えないか、むしろマイナスの影響をもたらす」ことが明らかになりました。つまり、組織にとって重要なのはあくまでタスク型の多様性であって、ただ「女性や外国人の“数”を増やせばいい」と安直にデモグラフィー型の多様性だけを追求しても、組織への好影響は期待できないというわけです。

なぜ、デモグラフィー型の多様性がマイナス効果をもたらすのか――それを考える視点として「フォルトライン」の理論が注目されています。ロウとマーニガンは、属性の違いが組織内グループを潜在的に分断することに着目し、この境界線を「フォルトライン」と呼びました。たとえば、6人のメンバーから成る組織があったとして、そのうちの3人が<男性・白人・50代>で、残り3人が<女性・アジア人・30代>だとしたら、組織内がそれぞれ3人ずつのサブグループに分断されるので、この組織には「フォルトライン」が存在することになります。

デモグラフィックな属性にはさまざまな“次元”がありますが、このケースのように、各サブグループが性別・人種・年代と複数の次元で共通しているとき、フォルトラインが“強い”といいます。フォルトラインが強いと、サブグループ間の縄張り意識から対立が起こりやすく、結果として組織全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼしかねません。男性3人の中にアジア人を入れたり、女性3人の中に20代を混ぜたり、どの次元においても多様性を担保し、属性が入り組むように人を配置すれば、サブグループを隔てるフォルトラインが弱まり、組織内コミュニケーションがスムーズになるのです。

これまで<男性・日本人>が主流だった日本企業が女性を増やす際は、年齢や人種・国籍、バックグラウンドの多様性にまで配慮しないと、フォルトラインを強めてしまうので、注意が必要です。

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