労働契約申込みみなし制度
労働契約申込みみなし制度とは?
「労働契約申込みみなし制度」とは、派遣先企業が違法派遣と知りながら派遣労働者を受け入れている場合、違法状態が発生した時点から、派遣先が派遣労働者に対して直接雇用を申し込んだものとみなす制度のことで、「みなし雇用制度」ともいわれます。申込みの実体がなくても、自動的に派遣先が派遣労働者に対して労働契約の申込みを行ったことになり、派遣元と当該労働者が契約している雇用条件と同一条件で雇用する義務が生じるのです。ただし、派遣先などが違法派遣に該当することを知らず、かつ知らなかったことに過失がない場合、この制度は適用されません。2012年成立の改正労働者派遣法で定められ、3年間の実施猶予期間の後、昨年10月から施行されました。
違法派遣の受け入れで派遣先に直接雇用義務
コスト負担増など制度適用の影響は侮れない
「労働契約申込みみなし制度」は、違法派遣を受け入れた派遣先の会社に民事的なペナルティーを科し、派遣規制の実効性を担保することをねらいとして、2012年の派遣法改正に盛り込まれたものです。同制度の適用対象となる“違法派遣”の内容には、次の四つが挙げられています。
(1) 港湾運送、警備、建設など派遣禁止業務に従事させた場合
(2) 無許可の派遣会社から派遣を受け入れた場合
(3) 派遣可能期間を超えて派遣を受け入れた場合
(4) 派遣法等の適用を免れる目的で、いわゆる偽装請負を行った場合
このうち(3)に関しては、かねて期間制限の基準となる業務区分の定義があいまいであるとの批判がありましたが、15年9月成立の改正派遣法で、同法創設以来続けられてきた業務区分による期間制限が撤廃され、派遣先事業所単位の派遣受入期間の期間制限と派遣社員個人単位の期間制限(いずれも原則3年)の2本建てに改められたため、違法か否かの判断が明確にできるようになりました。
こうした違法派遣であることを知りながら、その状態を是正しないと、派遣先企業は、自社の意志と無関係に直接雇用の申込みをしたものとみなされます。違法派遣が終了してから1年間はその申込みを撤回することはできず、派遣労働者が申込みを承諾した時点で、派遣先はその労働者を派遣元の労働条件と同一条件で雇用しなければなりません。
つまり、「労働契約申込みみなし制度」が適用されると、自社が“正社員”に求めるスキルや知識、経験を十分に有していない人材であっても、本人が望む場合は、直接雇用しなければならないわけです。派遣社員を直接雇用することにより、当然、これまで発生していなかったさまざまな人件費コストが加わることも考えられます。多数の派遣社員がいっせいに直接雇用への転換を選択すれば、派遣先企業には最悪の場合、経営を揺るがすほどの負担がのしかかることもありえるでしょう。
「労働契約申込みみなし制度」の内容や影響について正しく理解せず、現場の違法派遣を放置していると大変な事態に。「知らなかった」ではとてもすまされません。
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