キャリア段位制度
キャリア段位制度とは?
「キャリア段位制度」とは、個人の実践的な職業能力を職種ごとに、全国統一基準にもとづいた“段位”によって評価・認定するしくみのことです。政府の「新成長戦略」(2010年6月決定)における「実践キャリア・アップ戦略」の施策として実施される新制度で、12年中にも介護、温暖化対策、農漁業高度化の3分野を対象に段位の導入が始まる予定です。イギリスの職業能力評価制度(NVQ:National Vocational Qualification)をモデルとしているために「日本版NVQ」とも呼ばれます。
人材育成へ共通の物差しを国が設定
知識と実践の両面で能力を見える化
「キャリア段位制度」は、上述のとおり新成長戦略の一環として構想されたものの、2012年6月に行われた省庁版事業仕分けにおいて、「費用対効果が見えにくい」という理由から、いったんは廃止・抜本的再検討の判定を受け、計画が宙に浮いた経緯があります。その後、一転して事業は継続となり、同年秋から実施に向けた作業が再開されました。
キャリア段位制度は、企業や事業所の枠を超えて個人の働く力を測る“共通の物差し”を国が定めることで、企業の人材育成および労働者個人の自律的なキャリア開発に対する意欲を高めるとともに、円滑な労働移転を促し、成長性・将来性の高い分野の成長拡大に資するのがねらいです。同制度がモデルとするイギリスのNVQはおよそ700の職種を網羅する評価・認定制度ですが、“日本版NVQ”では当面、介護、温暖化対策、農漁業高度化の3分野を対象に先行整備し、以下の3職種について能力階層を示すレベルと職業能力の評価基準を認定します。
【介護】 「介護プロフェッショナル」
特別養護老人ホームや老健施設、認知症グループホーム、ホームヘルパーの事業所などで主に高齢者の介護を担当する
【温暖化対策】 「カーボンマネジャー」
企業の環境対策を担い、省エネや温室効果ガス削減・吸収などの取り組みに関する診断、アドバイス、実践を行う
【農漁業高度化】 「食の6次産業化プロデューサー」
生産(1次産業)、加工(2次産業)、流通・販売・サービス(3次産業)の一体化や連携により、農林水産物を活用した加工品の開発、直接販売、レストラン展開など新たなビジネスを創出し、地域の農漁業の経営力を高める
入門クラスの「レベル1」から当該分野を代表する人材であることを示す「レベル7」まで、キャリア段位には七つの段位が設けられます。既存の資格制度と大きく違うのは、労働者の職業能力レベルを「見える化」するために、試験によって知識や技能を認定するのではなく、実際に現場でどの程度の職務が遂行できるのかをみて、「わかる」(知識)と「できる」(職場での実践的スキル)の両面を評価するしくみになっていることです。例えば介護分野には介護福祉士という国家資格がありますが、本制度の対象職種である「介護プロフェッショナル」の段位を認定するにあたっては、入浴介助など介護士が習得しているべき介護技術だけでなく、高齢者や家族との対話能力や職場での指導力、事故の際の対応能力なども評価対象になります。
政府は、本制度を活用した事業者に補助を行うなどしてキャリア段位の浸透をはかり、2020年度までに3分野で22万人への授与を目指す方針です。
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