2013年問題
2013年問題とは?
2001年から厚生年金の定額部分(老齢基礎年金)の受給開始年齢が65歳まで段階的に引き上げられたのに続き、13年からは残る報酬比例部分(老齢厚生年金)についても引き上げが始まるため、同年以降、60歳で定年退職を迎える人には、給料も年金支給もない収入の空白期間が生じます。これを「2013年問題」といい、政府は対応策として企業に対する雇用延長の義務付けを検討していますが、そのあおりで新卒者や若者の就職機会が奪われかねないと波紋を呼んでいます。
年金受給開始の引き上げが若者の就職を直撃
“定年延長”の徹底で高齢労働者33万人増
次から次へ取り沙汰される「20XX年問題」には食傷気味の感もありますが、日本の社会システムの行き詰まりがそれだけ深刻だということでしょう。変化に対応できなくなったさまざまな制度の矛盾が、ここへきて一気に表面化しているのが現状です。「2013年問題」も年金制度の抜本改正を先送りし続け、修繕策を積み重ねた結果であり、単に年金の問題というだけでなく、企業の人事戦略から日本の雇用全般にいたるまで重大な影響を及ぼしかねないといわれています。
年金受給開始年齢の引き上げによって収入が不足する“年金難民”の発生を防ぐため、政府はこれまでも、希望者に対する65歳までの雇用継続を企業に義務づけてきました。(1)定年年齢の延長(2)定年制そのものの廃止(3)定年後継続雇用制度(再雇用制度)の導入のいずれかを求められ、多くの企業は65歳を限度とする再雇用制度の導入で対応してきた経緯があります。要は「国は財政がもたないから企業のほうで65歳まで面倒を見てくれ」というわけです。
2013年問題を見据え、厚生労働省はさらに要求の度合いを強めてきています。現行の高齢者雇用安定法は定年後の再雇用について、労使間の合意があれば、企業が選定基準を設けて対象者を絞り込むことを認めていますが、厚労省はこの“基準”を撤廃し、希望者全員を65歳まで継続雇用させるためのルールづくりを検討。今年6月に出された厚労省研究会の報告書でも同様の指摘が行われました。
こうした政府方針に対して、即座に異論を唱えたのが日本経団連です。翌7月に提言を発表し、必要以上に高齢者の雇用を増やせば若者の雇用にしわ寄せがおよび、企業の国際競争力が損なわれると訴えました。提言によると、60歳以上の希望者全員を雇用すると17年には高齢労働者が33万人程度増加。仮に給料を相当減額したとしても、企業の負担増は変わらないため、その分は新卒採用を抑える、あるいは失くすなどして調整を図る企業が現れても不思議ではありません。
先の厚労省研究会の報告書では、ヨーロッパの事例を引いて「高齢者に早めに引退してもらう施策を進めたが、若者の失業解消に効果は見られなかった」と指摘。定年の引き上げ・下げと若者の雇用との間に必ずしも相関関係はないとしていますが、“逆の例”をもちだして「だから大丈夫」といわれても、現下の雇用情勢の厳しさを考えればそう簡単には納得できないでしょう。
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