従業員代表制
従業員代表制とは?
従業員の過半数で組織する労働組合がない事業所は、時間外労働に関する協定(いわゆる「36協定」)などの労使協定を締結する際、従業員の過半数を代表する者を従業員代表として締結することが定められています。また就業規則を作成・変更する際にも、従業員代表の意見を求めなければなりません。これを「従業員代表制」といいます。
管理監督者以外から民主的手続きで選出
朝礼での挙手や回覧、ネット投票もOK
従業員代表の選出については、労働基準法施行規則第6条の2に基づいて、(1)労基法の規定する監督または管理の地位にある者ではないこと、(2)代表選出の目的を明らかにした上で、投票や挙手など民主的手続きによって選出された者であること、という2つの要件を満たす必要があります。「監督または管理の地位」とは、経営者と一体的な立場にある状態を指し、肩書きや名称に関係なく、その実態で判断されるので、要注意です。また使用者は選出された従業員代表に対して、過半数の代表であること、あるいは過半数代表になろうとしたことを理由に、不利益な取り扱いをしてはいけません。
「投票や挙手などの民主的手続き」というと大げさな印象を受けますが、実際はそれほど面倒なことではありません。たとえば朝礼など全従業員が一堂に会する機会に、使用者側から「○○さんを、労使協定を結んだり、意見を聞いたりする従業員代表にしたいと考えています。賛成の人は手を挙げてください」というふうに、口頭で提案すればいいのです。その場で過半数の従業員が挙手すれば、それでOK。全員を集めるのが難しい場合は、回覧でも構いません。「従業員代表として○○さんを選出することに同意します」などと記載した用紙を全従業員に回覧し、○×やサイン、承認印をもらうといいでしょう。ただし使用者が個別に従業員を回り、同意を迫ったり、強要したりしてはいけません。また選出の経緯を資料として残しておくことが求められますので、その点でも文書による回覧方式は好都合といえます。イントラネットを活用した投票や、小規模の職場なら従業員間の合議によって選出する方法もあります。
こうして従業員代表を民主的手法で選出するのは、一義的には「法令で定められているから」であり、また「労使間の紛争やトラブルを適切に解決するため」です。しかしそうした“守り”のねらいだけでなく、過半数の代表を選ぶ過程を通じて、従業員に企業経営への参加意識を持ってもらうことにも大きな意味があります。従業員間はもとより労使間の風通しも良くなり、トラブルの未然防止というメリットも期待できるでしょう。一にも二にも、皆に信頼されている従業員を代表に選出することが肝要です。
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