変形労働時間制
変形労働時間制とは?
変形労働時間制とは、時期や季節によって仕事量の差が著しい場合、従業員の労働時間を弾力的に設定できる制度。一定の期間について、週当たりの平均労働時間が労働基準法に基づく40時間以内であれば、特定の日・週で法定労働時間を超えても(1日10時間、1週52時間を上限とする)、使用者は残業代を支払わずに労働者を働かせることができます。1987年の労働基準法改正によって導入されました。
繁閑に応じて所定労働時間を設定
制度利用は年々増加、トラブルも
変形労働時間制には1週間単位、1ヵ月単位、1年単位の3種類があります。働き方に柔軟性をもたせるという意味では「フレックスタイム制」も変形労働時間制の一種とみなされますが、フレックスタイム制は1ヵ月以内の期間で始・終業時刻や各日の就業時間を、労働者一人ひとりが自由に決められる制度です。
これに対し他の3つの変形労働時間制は、業務の繁閑に応じて、使用者が所定労働時間を設定する点が大きく異なります。ただしその日の忙しさによって、使用者が就業時間を随時調整できるわけではありません。1ヵ月単位と1年単位の変形労働時間制は、どちらも事前に労働日と労働時間を、就業規則または労使協定で明示しておくことが導入要件として定められています。
具体的には次の通りです。
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1ヵ月単位の変形労働時間制
1ヵ月以内の一定期間を平均して1週間の労働時間が40時間を超えなければ、特定の日・週で法定労働時間を超えてもよいという制度。就業規則に、各週・各日の労働時間、始・終業時刻などを具体的に明記します。就業規則がない場合は労使協定による規定でも可(労働基準監督庁への届出が必要)。 -
1年単位の変形労働時間制
1ヵ月以上1年以内の一定期間を平均して1週間の労働時間が40時間を超えなければ、特定の日・週で法定労働時間を超えてもよいという制度。1ヵ月単位の変形労働時間制に比べると導入要件がやや厳しく、各週・各日の労働時間、始・終業時刻などを就業規則で具体的に定めた上、必ず労使協定を締結して監督官庁に届出をしなければなりません。
また業務の性質上、日によって繁閑の差が大きく、かつ事前の予測が難しい場合には、1週間の労働時間があらかじめ設定した所定労働時間内であれば、特定の日の労働時間を10時間にまで延長できる「1週間単位の非定型的労働時間制」が認められます。ただし利用できるのは、常時使用する労働者の人数が30 人未満で、かつ小売業、旅館、料理店および飲食店に限られ、就業規則および労使協定による規定が必要です。
厚生労働省の調査によると、2009年時点で変形労働時間制(フレックスタイム制を含む)を採用している企業の割合は、常用労働者が30人以上の企業全体の54.2%に達し、前年より1.3%増えました。
こうした中、制度利用をめぐるトラブルも目立っています。10年4月には、パスタ店でアルバイトをしていた東京都在住の男性が、同店を運営する会社に変形労働時間制を悪用されたとして、不払い残業代を求めた訴訟の判決があり、東京地裁は同社に時効分を除いた約12万円の支払いを命じました。判決によると、同社では1ヵ月単位の変形労働時間制を導入しながら、勤務表を半月分しか作成していなかったため、労基法の要件を満たしておらず、変形労働時間制は無効と判断されました。安易な制度利用の広がりに警鐘を鳴らす事例といえるでしょう。
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