役割等級制度
役割等級制度とは?
役割等級制度とは、それぞれの役職や仕事に求められる「役割」の大きさに応じて等級を設定し、その役割を担当する社員の格付けを行う制度のこと。「同一役割・同一賃金」を前提として、年齢やキャリアに関係なく、難易度・期待度の高い役割で成果を上げれば、それに見合う報酬が得られます。
進む等級制度の見直し
“人”基準から“仕事”基準へ
企業組織内の序列構造や社員の格付けを確定して評価・報酬の根拠となす「等級制度」は人事の基本システムであり、大きく「職能資格制度」「職務等級制度」「役割等級制度」の3種類に分かれます。
職能資格制度は、社員一人ひとりの能力や経験、キャリアといった属人的要素を基準にして、賃金(職能給)や格付け(職能資格)を決めるもの。かつて日本企業の多くはこの制度を採用してきました。しかし職務遂行に必要な能力の向上・低下は客観的に判断しにくいため、実際には職能給が年功的に運用されがち。能力と賃金の深刻なミスマッチが生じ、経営の足枷となっているケースが少なくありません。
これに対して属人的な能力要件ではなく、現在その社員が就いている仕事=職務の内容を判断し、その重要度や困難度にもとづいて社員等級を設定するのが職務等級制度です。担う仕事の価値によって賃金(職務給)が決まるため、同じ職務であれば、誰が行っても賃金は変わりません。制度体系としてはきわめて明快ですが、いざ実施するとなると難しいのは、全社の職務をすべて洗い出し、一つひとつ定義して価値づけなければならないこと、そしてそれを組織改編の度に更新しなければならないということです。また、個々の職務を厳密に定義することでかえって業務分担が硬直化し、組織の風通しが悪くなったり、異なる職務間の人事異動が難しくなったりする弊害も――。合理的でありながら、職務等級制度の採用が進まないゆえんです。
そこで、“人”基準ではなく、“仕事”基準の人事制度のメリットを活かすために注目されているのが役割等級制度です。「役割」とは、職責を果たすために進んでとるべき行動を簡素化し、大くくりにしたもの。そこには定型化・細分化された職務だけでなく、たとえば管理職なら、事業の拡大・革新に向けて「日常的に業務プロセスの改善を行う」「社内のみならず社外の関係者とも調整を行い、解決策を導き出す」といった、ポジションに応じて期待される非定型な業務も含まれます。
役割等級制度に、統一的な仕組みやスタンダードな形はありません。導入が進んでいるとはいえ、内実はさまざま。企業の目標を達成するために自社では何を社員に求めるのか――制度の見直しは、それを問い直すことから始まります。
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