ベネヴォレント・セクシズム
ベネヴォレント・セクシズムとは?
「ベネヴォレント・セクシズム(Benevolent sexism)」とは、善意や配慮からくる一見ポジティブに思える言動が、実際には差別を助長していること。「好意的性差別主義」「慈悲的性差別」などと訳されます。「ベネヴォレント」は「親切な」「善意のある」「慈悲深い」といった意味であり、「セクシズム」は「性差別」。この概念の背景には「女性はか弱いため、男性から守られなければならない」という考えがあります。「女性を大切にする」という姿勢は一見すると良いことのようですが、「伝統的なジェンダーロールに準ずる女性のみを肯定し、それ以外を排除している」という点で、性差別の一種に分類されるのです。
その「配慮」、もしかしたら差別かも
職場の多様性を阻むアンコンシャス・バイアス
「女性だから転勤は負担になると思って、別の人に行ってもらうことにしたよ」
「男性社員が代表で話すから、女性のあなたは横で笑っていてくれれば大丈夫」
「子どもがいて大変だと思うから、メイン担当から外しておいたよ」
職場において、このような「配慮」を見聞きしたことはありませんか。発言者が良かれと思ってやったことでも、本人の意向を確認することなくこうした決定をするのは性差別に当たります。
ベネヴォレント・セクシズムはなぜ問題なのでしょうか。「男性は女性を守るべき」といった考えの前提には「女性は男性より劣った存在」という思想があるからです。また、この考えがベースにあると性差別を正当化し、ジェンダー不均衡を助長する可能性も生じます。女性をか弱い存在、サポーティブな存在、家庭的な存在として扱うことは、女性を尊重しているように見えるかもしれません。しかし、実際には女性を依存的な存在とみなしているため、リーダーシップなど能力開発の機会を奪うことにつながります。
ベネヴォレント・セクシズムに対比的なものとして、「敵対的セクシズム(敵意的性差別)」があります。敵対的セクシズムとは、異性に露骨な敵意を見せること。敵意的セクシズムも周囲に悪影響を及ぼしますが、実はベネヴォレント・セクシズムのほうが厄介です。敵意的セクシズムのような明らかな差別は、受け手が「差別」として処理することができます。しかし、ベネヴォレント・セクシズムのようなやんわりとした差別にさらされると、受け手は従属的な存在であることを刷り込まれ、挑戦を阻害されてしまうのです。
配慮のつもりが差別となってしまうのは、本人にとっても受け手にとっても不幸なこと。ベネヴォレント・セクシズムは、多くが無意識に行われます。担当者に人権意識がなかったために、施策がSNSで炎上した例は枚挙にいとまがありません。公平な職場・社会を実現するためには、それぞれが持つアンコンシャス・バイアスを自覚し、克服する努力が必要です。
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