アンカリング効果
アンカリング効果とは?
「アンカリング効果」とは認知バイアスの一種で、情報量が限られている状況下において、先に与えられた数字や情報を基に検討を始めることにより、その後の意思決定に影響を及ぼす傾向のことをいいます。マーケティングにおいて、その手法が多く活用されています。アンカーとは日本語で「いかり」のことで、船がいかりを下ろしたように身動きの取りにくい状態になることを表しています。冷静な目で選択肢を見極めるためにも、その情報にどのようなバイアスがかかっているかを認識することが大切です。
さまざまな場面で使われるアンカリング効果
オンラインストアや店頭のPOP、スーパーのチラシなど、周囲を見渡すとさまざまなところにアンカリング効果を期待した仕掛けが見つかります。「先着順」「本日限定」「早い者勝ち」といったフレーズや、ECサイトによくある元の値段との差額を見せるような表示も、アンカリング効果を狙ったもの。これらを見た人は、「買うなら今日買わなければ」と購買意欲が高まったり、値引き額を見て「こんなに安くなっているのか」と背中を押されたりすることでしょう。
その後さまざまな選択肢と比較したけれど、最初に見た商品が印象に残り、最終的にその商品を購入したという経験は、誰しも一度はあるのではないでしょうか。後から冷静になって振り返ってみると、わざわざその商品でなければならなかった理由を思い出せないこともあることでしょう。
多くの情報が手元にあるときには、冷静に物事の良し悪しを判断することができます。しかし、判断できるだけの情報量を持たないとき、私たちはバイアスに左右されがちです。自分で何かを選んでいると思い込んでいても、さまざまな仕掛けによって「選ばされている」のかもしれません。
採用シーンなどビジネスの場面でも、知らず知らずのうちにアンカリング効果は発揮されています。転職活動をするとき、年収をまったく気にしない人はいないでしょう。ある会社の募集要項に同業他社よりも高い年収例が示されているとき、それが見込み残業代や住宅手当などの各種手当を含めた金額であっても、高い年収がアンカーとなり、求職者はその企業によりよいイメージを抱くかもしれません。
アンカリング効果の過度な活用には、注意が必要です。相手方が情報や判断力を十分に持ち合わせており、相場を十分に理解している場合、アンカリング効果を狙った施策により不誠実なイメージを植え付けてしまう可能性があるからです。実態以上に自社の待遇や商品をよく見せようとするのではなく、求職者や消費者の目線に立ち、適切に活用することが大切です。
用語の基本的な意味、具体的な業務に関する解説や事例などが豊富に掲載されています。掲載用語数は1,400以上、毎月新しい用語を掲載。基礎知識の習得に、課題解決のヒントに、すべてのビジネスパーソンをサポートする人事辞典です。