予言の自己成就
予言の自己成就とは?
「予言の自己成就」とは、根拠のない噂や思い込みであっても、人々がその状況が起こりそうだと考えて行動することで、事実ではなかったはずの状況が本当に実現してしまうこと。アメリカの社会学者ロバート・K・マートンが提唱しました。同じくアメリカの社会学者W・I・トマスが説いた「もし人がその状況を真実と決めれば、その状況は結果において真実である」という定理を基に展開された理論です。
ネガティブではなく、ポジティブな
予言の自己成就を生み出すには
2020年春、新型コロナウイルス感染症の感染が広がる中、全国各地でトイレットペーパーが品薄になる事象が発生しました。マスクの品切れが相次いだことで、次はトイレットペーパーなどの紙製品が無くなるという噂が立ったのです。根拠のないデマでしたが、実際にドラッグストアから紙製品がなくなり始めると、噂を信じていない人も焦りを覚えて購入するようになり、入手することが困難になってしまいました。これも一種の「予言の自己成就」です。
人々の見方によって行動が変わり、噂や思い込みが真実になってしまうことは、規模の大小にかかわらず身の回りにあふれています。勉強や仕事のパフォーマンスに関しても同様です。受験生が不安から、勉強するための時間を「きっと受験に失敗してしまうだろう」と悩むことに割いてしまい、実際に悪い結果になることがあります。
会社での評価も同様です。ABC評価のうちAと評価された人は、自分自身への期待が高まり、パフォーマンスが向上することがあります。一方、Cと評価された人は自分のことに落胆し、パフォーマンスが下がってしまうかもしれません。
組織が「予言の自己成就」のネガティブな流れに飲まれないようにするためには、どうすればよいのでしょうか。また、査定面談などで部下に低い評価を伝えなければならないときは、どのように伝えるべきでしょうか。
ポイントは、相手への期待を伝えること。自分が相手をいかに信用しているか、どんな可能性を信じているかを伝え、フィードバックを受けた人が前向きで主体的でいられるよう、コミュニケーションをとるのです。「予言の自己成就」は、前向きな予言にも適用されます。リーダーや人事が、部下や従業員の未来を信じることがポジティブな結果を生むでしょう。
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