【後編】日本企業の管理職改革|持続的成長に向けた課題と展望
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前編目次
・大企業の中堅社員の賃金傾向
・就業者の人口ピラミッドから10年後の就業者数を予測する
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後編目次
・管理職改革3つのポイント
・HR Techの活用・推進
・AIとの役割分担を考える
・企業の持続的発展を支えるため
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管理職改革3つのポイント
現時点の人口ピラミッドのボリュームゾーンである45〜54歳は、上層部の方針を現場に浸透させ、現場の声を経営層に伝える重要な役割を果たしており、組織活力の源泉となっていると考えられます。
企業は、この45歳から54歳のボリュームゾーンに注目し、抜本的な改革に取り組む必要があります。本章では、管理職の改革を行う際の3つのポイントと企業の取り組み事例を紹介します。
■1.管理職の役割を定義する
管理職の役割は大きくわけると「業務の管理・改善」「部下の育成」「経営理念・方針の浸透」の3つです。それぞれの役割で求められるスキルは違いますが、時代の流れからすべてを同時にこなすことを求めている企業が多いように思われます。
管理職に求められる役割やスキルが多岐にわたるため、何をすればよいのかわからず、管理職は疲弊しやすい状況にあるといえるでしょう。
この課題を解決するためには、ジョブディスクリプション(職務記述書)に「役割や職務内容」「必要なスキル」で管理職の役割を明確化し、管理職の負荷を軽減することが有用だと考えられます。
また、これに加えて従業員に広く公開することで、管理職自身が自分に求められる範囲を把握できるだけでなく、部下や他部門にもその役割が明確に伝わります。そうすれば、管理職への無駄な要求が避けられ、管理職は本来の職務に専念できるようになるでしょう。また、経営層と管理職との役割認識のズレも解消できます。
このように、ジョブの定義を明確化し、社内で共有することで、管理職の業務効率化と、組織全体でのコミュニケーション改善も期待できます。
■2.役割ごとにポジションをわける
業務範囲が広く、山積みになっている課長職の役割を分業することで負荷を下げる手法を取る企業があります。たとえば、従業員育成は課長の仕事ではなく、専門の管理職を設置することで、従来の課長は育成業務から開放され、他の業務に専念できます。
出所:
日経ビジネス電子版 2023 年 10 月 11 日 掲載『双日「副課長」 、日東電工「チャレンジ」 管理職の役割を再定義』
日経ビジネス電子版 2023 年 10 月 12 日 掲載『 アフラックやマネーフォワード、全社員を管理職予備軍に』
■3.若手社員を計画的に育成する
若手社員の管理職への抵抗感を解消するため、将来の経営層を育成するための様々な対策を講じている企業もあります。部下育成の支援体制の強化や実践的な研修を通じて、若手社員に管理職のポジティブな側面を伝え、経営層を担う人材の確保・育成に力を入れている企業を紹介します。
HR Techの活用・推進
前述のポイントを押さえた管理職改革を進めるにあたり、タレントマネジメントシステムは非常に有用です。
タレントマネジメントとは、従業員一人ひとりの能力や適性を的確に把握し、最適な配置や育成計画を立案して事業戦略に必要な人材を確保・育成することが目的です。タレントマネジメントを進めるにあたりデジタル化したタレントマネジメントシステムが注目を集め、その市場も拡大し、企業に普及しています。
システムを活用することで、管理職の改革のポイントである「管理職の役割を定義する」「計画的な育成役割ごとにポジションをわける」「若手社員を計画的に育成する」の3つをスムーズに進めることが可能です。
AIとの役割分担を考える
近年のAIの急速な発展により、企業における管理職の役割と業務範囲を再定義する必要性が高まっています。AIが従来の管理職業務の多くを肩代わりできるようになれば、管理職の負荷は大幅に軽減されるでしょう。
しかし、AIが人間の能力を完全に置き換えることはできません。むしろ、管理職は戦略的な意思決定や部下の育成、モチベーション向上等の人間ならではの役割に専念することが求められます。
具体的には、組織のビジョンとミッションを明確に示し、部門間の調整役を担うことが重要です。また、AIツールを上手に活用しながら、部下一人ひとりの長所を引き出し、最大限に活かすことも管理職の重要な責務となるでしょう。
このように、管理職の役割は変革を迎えつつあります。企業が中長期的に持続可能な組織を構築するためには、管理職の役割と責任範囲を明確化し、AIとの最適な役割分担を図ることが不可欠です。管理職とAIがうまく連携することで、企業は生産性と競争力を高められるでしょう。
企業の持続的発展を支えるために
管理職の業務を適切に把握し、次世代の管理職候補を確保・育成し、持続的な組織にしていくために役割定義が必要となります。ジョブ型を導入することやジョブディスクリプションを作成することは目的ではなく、継続的に成長する組織であり続けるための第一歩です。
企業が必要としている職務が明確になることで、企業が提供できる成長機会が明確になり、従業員の自律した成長を促進できます。
また、役割を明確化するだけでなく、マネジメントを職能として定義することが必要です。管理職に求められるスキルセットを明確にすることで、スキルを習得した適性のある人材を配置することが可能です。
このような取り組みが、企業の持続的発展を支える基盤となるでしょう。
- 経営戦略・経営管理
- モチベーション・組織活性化
- 人事考課・目標管理
- キャリア開発
- 情報システム・IT関連
株式会社Works Human Intelligence / WHI総研
大手不動産会社にて企業の寮や社宅の運用支援を通じた業務改革に従事後、Works Human Intelligence入社。保守コンサルタントを経て、多くの企業を見てきた経験を活かし、人事全体の事例・トピックスの研究・発信活動を行っている。
袋瀬 淳(フクロセ ジュン) 株式会社Works Human Intelligence / WHI総研
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