いま注目の「健康経営」とは?

「最近、職場の雰囲気がどこか重い…」「採用活動に苦戦している…」という課題はお持ちでしょうか。実は、そのような状況は、一人ひとりの健康状態や職場の心理的安全性が影響を及ぼしているかもしれません。企業全体の活力を高めるため、多くの企業がお取り組みされているのが「健康経営」です。
厚生労働省の令和5年「労働安全衛生調査(実態調査)」では、労働者の82.7%が仕事に関して強いストレスや不安を抱えていると回答し、中でも「仕事の失敗、責任の発生等(39.7%)」「仕事の量(39.4%)」「対人関係(29.6%)」が、大きな要因となっています。これは新入社員から経営層まで、あらゆる世代に共通した課題です。
こうした背景から注目されているのが、企業が戦略的に健康を支援する「健康経営」です。企業ブランディング・採用力・定着率・ESGの評価の向上などにつながる取り組みとして、大企業でも導入が加速しています。
今回の記事では、「健康経営」の基礎から推進のフローと、実践企業の事例を3社ご紹介します。
“健康経営”に関してどんな取り組みを行うかご検討されていらっしゃいましたら、ご参考になりましたら幸いです。
1.なぜ今、「健康経営」が注目されているのか?
近年、「健康経営」という言葉がビジネスの現場で頻繁に耳にされるようになりました。その背景には、企業を取り巻く環境の大きな変化があります。
まず注目すべきは「人的資本経営」の加速です。上場企業は、人的資本に関する情報開示が求められるようになり、従業員の健康やエンゲージメントといった「人」にまつわる指標が、企業価値を左右する要素として認識され始めました。
健康経営は、この人的資本を“戦略的に管理・活用する”ための重要な手段とされています。
さらに、少子高齢化や働き方改革といった社会構造の変化も、企業にとって無視できない課題です。働き手の減少により、限られた人材の能力を最大限に引き出し、長く活躍してもらう環境整備が急務となっているため、健康経営はその解決策として注目されています。
また、メンタルヘルス不調や生活習慣病のリスク顕在化も深刻です。そのため、企業が社員の心身の健康に積極的に取り組むことが、離職防止や生産性向上につながるという認識が広がっています。
こうした取り組みは、単に“福利厚生”にとどまらず、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営の観点からも高く評価されるだけでなく、投資家からの評価対象にもなっています。
「人材の確保と活用」「生産性の向上」「企業価値の向上」の全てに直結するため、これからの経営戦略にも欠かせない要素といえます。
2.健康経営とは?
「健康経営」とは、従業員の健康を経営的な視点で捉え、戦略的に推進する取り組みを指します。この考え方は、経済産業省が提唱しており、企業の持続的な成長や生産性向上を実現するうえで欠かせない経営戦略の一つです。従来、従業員の健康管理は「福利厚生」の一環として位置づけられ、企業にとっては“コスト”という側面が強く見られてきましたが、健康経営は「コスト」ではなく、「未来への投資」として捉えることが特徴です。
それでは、企業が「健康経営」に取り組むべき理由を3つご紹介します。
2-1.人的資本の質の向上と生産性UP
健康経営に取り組むべき理由として、従業員が心身ともに健康で働ける環境を整えることで、パフォーマンスやエンゲージメントが向上し、結果的に企業全体の生産性や競争力が高まることが挙げられます。
従業員の健康状態は、そのまま業務パフォーマンスに直結するため、健康を維持・増進することができれば、集中力や判断力が向上し、プレゼンティーズム(出社はしているが十分に力を発揮できていない状態)やアブセンティーズム(欠勤)のリスクが低下します。
そのため、人的資本への投資対効果=人的資本ROIの向上が期待できます。
2-2.採用・定着率の改善と離職コストの削減
「健康経営」の姿勢や取り組みを打ち出すことで、企業の“働きやすさ”が可視化され、求職者への好印象にもつながります。それだけではなく、従業員の満足度やエンゲージメントも高まることで、定着率が上がり、結果として離職による再採用や育成のコスト削減にもつながる効果が期待できます。
2-3.ESG対応や投資家からの評価・企業ブランドの強化にもつながる
健康経営は、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営の「S(社会)」に直結する取り組みとしても注目されています。実際に、健康経営に積極的な企業が、外部からの信頼や投資家から良い評価を受けるなどの影響があります。
また、従業員を大切にする企業姿勢は、顧客や地域社会との関係性の構築にもプラスに働き、企業ブランドの価値向上にもつながります。
3.健康経営の推進フロー
健康経営を実践する際には、明確な戦略のもと、組織的・継続的に取り組むことが重要です。ここでは、企業が健康経営を推進するための基本的なフローをご紹介します。
3-1.経営層による宣言・コミット
まず始めに欠かせないのが、経営層からの明確なコミットメントです。健康経営は、現場レベルの施策ではなく、経営戦略の一部として位置づけられるべき取り組みです。そのため、CEOや役員などトップ層が方針を明文化し、社内外に対して公式に発信することが大事といわれています。
これにより、全社的な取り組みとしての土台が築かれ、社員への理解や協力を得やすくなります。
3-2.健康経営の推進のための組織体制の整備
次に、健康経営を担う体制の整備です。企業によっては「CHO(Chief Health Officer/健康最高責任者)」の任命や、専任の健康経営の推進チームを設置することで、継続的な運用が可能になります。
また、産業医や保健師との連携体制を構築することで、専門的な視点からの支援を受けらため、企業として健康経営を推進する際には、環境整備も大切です。
3-3.現状把握と課題の収集
施策を始める前に、まずは現状を正確に把握することが重要です。定期健康診断の結果やストレスチェック、社員アンケートなどを行い収集した情報を活用し、社員の健康状態や職場環境に関する課題を可視化しましょう。データに基づいた施策を検証することで、適切な課題設定や改善策の立案が可能になります。
3-4.計画・目標の策定

現状分析を踏まえたうえで、具体的な目標やKPI(重要業績評価指標)を設定します。たとえば「定期健診受診率の100%達成」「メンタルヘルス研修の受講率向上」など、数値で追える指標を設けることがポイントです。目指すゴールを明確にすることで、施策の効果測定と改善につながります。
3-5.施策の実行
目標に基づいて、実際の施策を展開していきます。たとえば、運動習慣の促進、禁煙支援、メンタルヘルス対策の研修、定期健診後のフォローアップ制度など、課題に応じた多様な取り組みが考えられます。重要なのは、社員が参加しやすい・継続しやすい仕組みを設計することです。
3-6.評価と改善
施策は一度行えば終わりではなく、定期的な評価と改善のサイクルを回していくことが求められます。設定したKPIに対する達成度を確認し、社員からのフィードバックも取り入れながら内容をアップデートしていくことで、より効果的で持続的な施策になります。
4.社内外に伝えることで、社内浸透と持続性を生む
せっかく始めた健康経営も、社内での認知が低いままでは効果が十分に発揮されないため、施策の内容や目的、成果を社内にわかりやすく「伝えること」が大切です。
健康経営については、様々な訴求方法がありますが社外に発信をする際には、社内報やイントラネット、ポスターなどの告知だけでなく、動画やインタビュー記事を活用した“ストーリー性のある共有”によって、社員の共感と参加意識を高めることができます。
継続的に発信することで、「会社全体で取り組んでいる」意識が芽生え、健康経営の土台となる「心理的安全性」や「エンゲージメントの向上」にもつながっていきますので、インナーブランディングに留めておくのでは勿体ないです。
健康経営に関する取り組みを行っている場合は、対外的にもアピールすることで従業員を大切にする姿勢を伝えることができます。ぜひ取り組み内容を発信し、インナーブランディングだけでなく、アウターブランディングも併せて行ってみてはいかがでしょうか。
5.健康経営は“企業の未来への投資”です
働き方が多様化し、従業員一人ひとりの価値が企業の成長に直結する今、健康経営は単なる“福利厚生”ではなく、“経営戦略”としての重要性を増しています。
今回は「健康経営とは何か」という基本から、実践のステップ、さらに先進企業3社の事例、そして社内外への発信の重要性までをお伝えしましたが、今回事例でご紹介したお取り組み以外にも様々な事例があります。
健康経営の効果を持続・最大化するためには、「始めるだけで満足しない」ことがポイントです。健康経営を実施する際には、明確なKPIを設定し、PDCAサイクルを回しながら成果や想いを社内外にしっかり伝えていくことも大切です。
また、健康経営の活動は継続的な活動になります。継続することで、従業員の共感を呼び、組織に定着し、やがて企業価値そのものを高めていくことができるといわれていますので中長期的な取り組みとして進めていくのはいかがでしょうか。
ホープンでは、健康経営に取り組む企業様向けに、採用ページやインナーブランディング動画など、“伝える”ためのコンテンツ制作を幅広くご支援していますので、お気軽にご相談ください。
このコラムを書いたプロフェッショナル
澁沢 舞
株式会社ホープン 次長
営業・制作経験と人事目線を武器に採用・研修・社内広報をホープンはトータルでサポート。採用・教育・社内施策を実現し「人事の悩み」を企画力とクリエイティブで解決。採用担当のリアルも踏まえながらお客様の課題を解決すべく専門チームを作り提案します。

澁沢 舞
株式会社ホープン 次長
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得意分野 | 人材採用、コミュニケーション |
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対応エリア | 全国 |
所在地 | 世田谷区 |
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