人的資本経営とは?背景や求められる5つの理由を解説

近年、「人的資本経営」という言葉が急速に広まり、経営者や人事担当者の間で注目を集めています。
その背景には、ESG投資や人的資本の情報開示義務化、労働力人口の減少など、外部環境の変化があります。
「人的資本経営」を推進するため、2022年に経済産業省が主導で「人的資本経営コンソーシアム」が設立され、日本の上場会社や有名企業を中心に現在2025年5月27日現在で643社(※)が参画しています。
(※)参考情報
人的資本経営コンソーシアム「MEMBER」
https://hcm-consortium.go.jp/member_list
今回のテーマである、人的資本を経営の中核に据える動きは、もはや一部の企業だけのトレンドではなく、“国家レベルの戦略課題”として認識されつつあります。従来の「コスト」としての人材管理ではなく「資本」としての人材投資と捉え、企業が取り組むべき本質的な経営変革になっています。
この記事では、人的資本経営について背景や求められる5つの理由について解説いたします。
人的資本経営に関心のある経営者様・人事担当者様など組織の未来を考え施策を検討していらっしゃる方はぜひご覧ください。
1.人的資本経営とは?
人的資本経営とは、従業員一人ひとりを「価値を生む資本」として捉え、その能力や可能性に長期的に投資し、企業の持続的成長につなげる経営のことを指します。「人的資本経営」が提唱をされる前には、「ヒト・モノ・カネ」の“コスト”として捉えられていましたが、「人的資本経営」は人材を企業価値創出の中核と位置づける視点に基づいた考え方になっています。
2.なぜ今、人的資本経営が求められるのか?
それでは、なぜ「人的資本経営」が求められているのでしょうか。以下に理由を5点紹介します。
2-1.政府による「人的資本の情報開示」の義務化の影響
2022年8月30日、内閣官房の「非財務情報可視化研究会」から公表された『人的資本可視化指針』が、企業における人的資本情報の開示を強く促すきっかけになりました。この指針は、人的資本に関する資本市場への情報開示のあり方に焦点を当てたガイドラインとして、企業が人的資本経営を推進するための実務的な手引きとして位置づけられています。
国際的な開示基準(ISO30414、GRI、米SECのルールなど)との整合性を踏まえつつ、指針では企業が投資家や社会に対して人的資本の取り組みをどう「見える化」し、説明責任を果たすかを包括的に整理しています。この動きは、日本企業にとって単なる「開示義務」にとどまらず、自社のビジネスモデルや戦略に応じた独自の人的資本ストーリーの構築と発信を求めるものになっています。そのため、政府主導で「画一的な報告書」ではなく、企業自らが人的資本の魅力を伝え、企業価値の向上につなげていくという方向性が明確に示されています。
この指針の影響により、上場企業を中心に、人的資本の情報開示は“任意”から“実質的な義務”へとシフトし、企業の広報、IR、採用活動においても、その対応が強く求められるようになっています。
▼参考資料
内閣官房『人的資本可視化指針』(https://www.cas.go.jp/jp/houdou/pdf/20220830shiryou1.pdf)
2-2.国際的なESG評価に「人材」が組み込まれている
人的資本経営が必要とされる背景には、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資において「人材」が企業評価の中核になっているという国際的な流れがあります。近年、世界の機関投資家やESG評価機関は、人的資本への戦略的な取り組みを「社会(S)」の要素として明確にスコア化しています。
例えば、アメリカのSASB(サステナビリティ会計基準審議会)では、従業員の安全・育成・エンゲージメントなどが重要な開示項目として設定されており、ISO 30414の国際基準も、人的資本に関する定量・定性情報の開示を推奨しています。
人的資本の戦略的マネジメントと開示は、「社会的に望ましい」だけでなく、国際的な企業競争力を左右する評価基準となっているのも理由となっており、企業が人的資本経営を怠ることは、投資家からの信頼を失い、資金調達力や株主価値を毀損するリスクを意味します。
逆に、明確な方針と可視化された取り組みを発信できれば、ESGスコア向上だけでなく、採用ブランディングや従業員のエンゲージメント向上にも直結するといえます。
▼参考情報
人的資本報告に関する新しいISO国際規格(https://www.iso.org/news/ref2357.html#:~:text=ISO%2030414%2C%20Human%20resource%20management%20%E2%80%93%20Guidelines%20for,of%20the%20actual%20contribution%20of%20its%20human%20capital.)
2-3.投資家・株主が人的資本に注目している
人的資本経営は、企業の内部施策にとどまらず、資本市場からの評価や投資判断に大きな影響を与えるテーマとして注目されています。特に昨今は、財務情報だけでは企業の持続可能性や競争力を測りきれないという認識が広まり、人的資本の質と戦略性が、長期的な企業価値を左右するとして重視されています。
このような投資家の視点を背景に、人的資本に関する情報開示は「信頼性の証明」として機能し、特に人材育成・リスキリング・エンゲージメント・離職率・多様性といった指標が、企業の長期的成長力を可視化する材料として重視されているのです。言い換えれば、人的資本に戦略的に投資し、それをわかりやすく発信する企業は、投資家にとって「将来にわたって価値を生み出す企業」として選ばれる可能性が高まっており、対応すべき理由の一つになっています。
2-4.労働人口減少=「人材の獲得競争」が本格化しているため
日本では、2035年における日本の総人口について、厚生労働省の『働き方の未来2035』によると、現在約1.27億人から約1.12億人に減少すると予測されています。これは単なる「人手不足」ではなく、企業の競争力を根本から揺るがす深刻なリスクといえるのではないでしょうか。
このような状況下になると、さらに人材の獲得競争が激化することが想定できますので、「いかに魅力ある組織に見えるか」「どれだけ社員が長く働きたいと思えるか」が、成長戦略の柱になります。
▼引用資料
厚生労働省:働き方の未来2035報告書
(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000152713.pdf)
2-5.「企業文化」や「パーパス」に共感して働く時代への価値観が変化
現代では働き方に関する価値観が変化しているのも関係し、「給与」や「安定性」よりも、企業の理念や価値観、社会的意義=パーパスに共感できるかを重視して職場を選ぶ傾向にあるといわれます。特に、若年層は、働くことを「生き方の一部」と捉える傾向が高く、自分の価値観と合致する企業かどうかで企業選びをする学生が多いといわれ、「企業文化」や「パーパス」は働く上で重要な基準になっています。
そのため、企業側も単に待遇や制度を整えるだけでは不十分であるといえ、この変化に対応するためには、企業が何のために存在し、どのように社会と向き合い、どんな未来を築こうとしているのかを、明確かつ一貫性を持って伝える必要があるといえます。
そこで求められるのが、「人的資本経営」の視点です。たとえば、社員のキャリア支援やリスキリング、ダイバーシティの推進、柔軟な働き方の導入などは、単なる制度改革ではなく、企業文化やパーパスと強く結びついた「人を活かす戦略」そのものといえるため、その価値ある取り組みを、ただ数字として開示するだけでなく、動画や採用LP(ランディングページ)などのコンテンツを通じて、「物語」として伝えることで、より人材に刺さる採用広報になるといえます。
つまり、人的資本経営の推進は、「共感採用」や「企業ブランディング」に直結する経営戦略になるため、「人的資本経営」の推進は、企業が生き残るためには必要不可欠であるといえます。

3.まとめ(人的資本経営は「見える化」と「共感戦略」の両輪で実行することが大切)
人的資本経営は、単なる人事改革ではなく、投資家・求職者・顧客に対する“企業の人格”そのものを可視化する取り組みです。
そして、その価値を正しく伝えるには、「映像」や「採用LP」でのブランディングが不可欠であり、数値の開示だけでなく、ストーリーも両立して発信することで、より人的資本経営の取り組みが伝わるようになります。
ホープンでは、企業の「人的資本経営」の取り組みを推進する動画コンテンツの制作や、採用活動のためのパンフレットや会社紹介動画など様々なご提案が可能です。
「どのような動画を作ればよいかわからない」「動画を活用して採用ブランディングを強化したい」などのお悩みをお持ちの人事・採用ご担当者様のご支援が可能ですので、採用ブランディングに関するコンテンツ制作に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
このコラムを書いたプロフェッショナル
澁沢 舞
株式会社ホープン 次長
営業・制作経験と人事目線を武器に採用・研修・社内広報をホープンはトータルでサポート。採用・教育・社内施策を実現し「人事の悩み」を企画力とクリエイティブで解決。採用担当のリアルも踏まえながらお客様の課題を解決すべく専門チームを作り提案します。

澁沢 舞
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得意分野 | 人材採用、コミュニケーション |
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対応エリア | 全国 |
所在地 | 世田谷区 |
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