無自覚なハラスメントはなぜ起こる?加害者の心理と対策
企業の人事総務担当者の方々とお話をしていると、こんな悩みをよく耳にします。
「ハラスメント防止研修は実施しているのに、現場ではトラブルがなくならない」
「本人は悪気がなかったと言い張るケースが多い」
実際の職場では、「自分はハラスメントをしているつもりはなかった」という“無自覚な加害”が大きな問題になっています。
今回は、無自覚なハラスメントがなぜ起こるのか、その心理的背景と、未然に防ぐために必要なアプローチについてご紹介します。
●なぜ「無自覚」なのか?加害者の心理背景
1. 指導とハラスメントの境界線が曖昧
役職者の多くは「部下を育成する責任感」を持っています。
そのため、成果を出させたい一心で厳しく指導することがありますが、受け手の状況によっては過度なプレッシャーや威圧と感じられます。
「自分はただ厳しく教えているだけ」という感覚が、無自覚なハラスメントにつながります。
2. ストレスや疲労による余裕のなさ
上司自身が多忙でストレスを抱えていると、言葉や態度に余裕がなくなります。
本来なら配慮できる場面でも、「つい強い言葉で叱責してしまった」「感情的に反応してしまった」というケースが増え、本人は“自分が追い込まれていた”ことしか意識できていません。
3. 過去の価値観や成功体験にとらわれている
「自分の時代はもっと厳しくされて育った」
「これくらいは当然の指導だ」
そうした過去の経験が、無意識のうちに現在のマネジメントに影響を与えています。
時代や価値観の変化に気づかないことが、無自覚な加害を生み出す要因です。
4. メンタル不調への理解不足
部下のちょっとした変化やサインに気づけず、「やる気がない」「努力が足りない」と短絡的に判断してしまう。
実はその裏にメンタル不調が隠れている場合でも、理解不足から誤った接し方をしてしまうのです。
●無自覚なハラスメントがもたらすリスク
本人が悪気なく行った言動でも、受け手が傷つき、職場に不信感や恐怖感が広がります。
その結果として、
・離職率の上昇
・メンタル不調者の増加
・生産性の低下
・企業の評判リスク
といった深刻な影響を招きます。
つまり、「無自覚だから仕方がない」では済まされないのです。
●未然に防ぐために必要な視点
無自覚なハラスメントを防ぐには、「行為そのものを禁止する」だけでは不十分です。
大切なのは、役職者一人ひとりが「自分の状態を整える」「部下との信頼関係を築く」という視点を持つことです。
1. 役職者自身のセルフケア力を高める
ストレスや疲労がたまっていると、無意識に強い言葉や態度が出てしまいます。
だからこそ役職者には、自分の心を整えるスキルが欠かせません。
弊社のハラスメント×メンタルヘルス研修でもお伝えしていますが、「感情を溜め込みすぎない」「解消と解決を区別する」「自分を整える3ステップ」といった実践的な方法を学ぶことで、余裕ある関わり方が可能になります。
ハラスメント研修においては、メンタルヘルス(セルフケア)の方法を学ぶことが効果的な対策に不可欠なのです。
2. 部下との信頼関係を築く
ハラスメントの本質は人間関係にあります。
「課題の分離」や「クッション言葉」「サンドイッチパターン」「感謝の表現」といったスキルを活用することで、部下との対話がスムーズになり、誤解や摩擦が減ります。
3. メンタルヘルスとハラスメントを一体で捉える
「ハラスメント防止」と「メンタルヘルスケア」を別々に研修する企業は多いですが、両者は切り離せません。
役職者が自分のストレスに気づき、整え、部下と健全な関係を築くことこそが、無自覚なハラスメントの最大の予防策です。
弊社のハラスメント×メンタルヘルス研修の一般的なプログラム例を紹介しますので、必要に応じて参考にしてみてください。
●無自覚なハラスメントの兆候
無自覚なハラスメントをなくすためには、知識の習得だけでなく、実際に使えるスキルを学び、体験的に理解する場が必要です。
当社がご提案する研修では、
講義で「なぜ無自覚なハラスメントが起こるのか」を理解する
ワークで「自分の状態を整える方法」を体験する
グループディスカッションで「実際の現場でどう防ぐか」を考える
といった構成を取り入れています。
これにより、「知っている」で終わらず、「できる」へと変化させることができます。
そして以下の行動や雰囲気が職場で見られる場合、無自覚なハラスメントが起きている、あるいは起きるリスクが高いサインかもしれません。
このチェックリストを、ぜひ御社で参考にしてみてください。
<無自覚なハラスメントの兆候>
□部下への注意や指導の際に「人格そのもの」を否定する言葉が使われている
□「自分の時代はもっと厳しかった」といった過去の価値観を頻繁に持ち出している
□ 部下が質問や相談をためらっている雰囲気がある
□ 会議や面談で一方的に話し続け、部下の意見を聞く姿勢が乏しい
□ 上司自身が疲れていてイライラしやすく、声を荒げる場面が増えている
□ 「やる気がない」「根性が足りない」と精神論で片づける傾向がある
□ 指導の場で感謝や承認の言葉がほとんど使われない
これらの兆候が複数当てはまる場合、無自覚なハラスメントが発生する可能性があります。
●まとめ
無自覚なハラスメントは、本人に悪意がなくても職場に深刻な影響を与えます。
その背景には「指導との境界線の曖昧さ」「ストレスや価値観の影響」「メンタル不調への理解不足」があります。
だからこそ、企業としてはセルフケアと信頼関係づくりをセットで学べる研修が欠かせません。
チェックリストを参考に現状を振り返りながら、ぜひ対策を検討してみてください。
本日も最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
このコラムを書いたプロフェッショナル
伊庭 和高
株式会社マイルートプラス代表取締役
「若手社員の休職・離職」「管理職のメンタル不調」「自律社員の育成」「カスハラ・クレーム対策」「パワハラ対策」…これらすべて、7,000名以上のお客様をサポートする中で導き出した自力でメンタルを立て直す3ステップで解決できます。
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得意分野 | モチベーション・組織活性化、安全衛生・メンタルヘルス、マネジメント、コーチング・ファシリテーション、コミュニケーション |
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対応エリア | 全国 |
所在地 | 品川区 |
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