生産性を軸にコロナ後のテレワークを再構築する
5月8日より、新型コロナウィルス感染症の5類への位置付けが決定し、社会活動がコロナ前の日常に戻りつつあります。
感染拡大に伴って急増したテレワークも、ウィズコロナの働き方として広く定着してきた感がありますが、コロナ禍の本格的な「収束」を前に、今後のあり方をあらためて問い直す時期に来たと言えます。
一橋大学・森川正之教授が行った、コロナ禍(2020~2021年)における在宅勤務の実態調査によると、在宅勤務の生産性は職場に比べて平均2割ほど低く、在宅勤務者の6割がコロナ後も同程度の継続を希望するのに対し、8割の企業が対象者や日数の削減、または元の働き方に戻したいとしており、労使間の認識に大きなギャップがあります。
在宅勤務がワークライフバランスとの親和性から、労働者の生活と仕事の満足度を高めるアメニティ価値に優れているとしても、生産性を重視する企業側としては闇雲に継続できない、ということなのでしょう。
テレワークの実施率と労働生産性は、企業の業種や人数規模、雇用形態、職種などの属性によって大きく異なり、テレワーク継続の有無を二択で単純に括れないことは、各種調査からも明らかです。
とりわけ、組織または個人における生産性は、インフラや就業環境のほか、社内メンバーとのコミュニケーション機会の寡多により、高くも低くもなり得ます。
総論ではテレワークを認める方向としながらも、各論部分では導入促進や生産性を高めるため、デジタル化を中心とする様々な施策に取り組むことが、多くの企業に求められるのではないでしょうか。
その際、テレワークすべきかの判断を全社一律とせず、対象者・業務レベルできめ細かく見直し、不要な出社にかかる所要時間を削減できれば、テレワーク実施率を高めるだけでなく、生産性の低下を防ぐことができます。
一方で、完全な在宅勤務とせず、コミュニケーション目的の出社を取り入れたハイブリッド勤務や、サテライトオフィスとの併用を進めることで、人間関係の希薄化を防ぎ、アイデアの創出とコラボレーションに寄与する効果も期待できます。
ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授は、最新刊『リデザイン・ワーク 新しい働き方』の中で、生産性を高める4要素を定義し、自社の主要業務ごとに最適な要素を紐づけて、「働く場所と時間の組み合わせの最適解を考える」ことを提唱しました。
生産性を軸にコロナ後のテレワークを考えるとき、場所と時間に囚われず、優秀な人材が働きやすい柔軟な環境づくりが求められるでしょう。
著書でも述べられていますが、生産性の高まる自走した新しい働き方に繋げるため、企業組織と社員の間で「実現すべきパーパス」を共有できることが、カギになるのではないかと思います。
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古崎 篤(フルサキ アツシ) アクタスHRコンサルティング(株) /アクタス社会保険労務士法人 人事コンサルタント
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