責任の重さと賃金を連動させるために役職手当の活用を
私が今までお話を伺った社長の多くは、各社員の責任の重さと賃金を連動させたいとおっしゃっています。実際に、見込みのある社員をどんどん部門の責任者に登用し、給与も一気に上げるというケースも多いです。
年功主義的な要素が多く残る会社において、社員が不満を抱く大きな要因は、ポストが上がって責任が増えても、給与がほとんど変わらないということですから、そのように責任が増えたら一気に給与も上がるというのは、やる気がある若手社員のモチベーションを高く保つのに重要な要素の1つです。
ただし、問題もあります。
それは、期待通りに責任を果たせない場合です。そのような場合は、必然的にポストから外され、給与も下の水準近くに下げられることになります。
このとき、本人も自分の力不足を認識していれば、問題はありません。問題は、本人が一生懸命責任を果たしたと思っていても、上司がそう思っていない場合です。
給与を下げることについて、本人が納得せず、最悪の場合は労働条件の不利益変更ということで、労働基準監督署等に駆け込まれることになります。
こうした事態に陥るのを防ぐためには、まず人事制度をきちんと構築し、人事評価と賃金水準の決定ルールを明文化しておくことが必要です。
その際のポイントは、責任に応じて給与を一気に上げる際は、基本給自体を大きく上げるのではなく、役職手当を付けるという形で行うように制度設計をすることです。
役職手当の額は、ポストに付くことの責任を実感できるよう、例えば課長クラスでしたら、少なくとも5万円以上は必要です。
日本の場合、基本給自体を下げることは、うまくやらないと労使トラブルの原因になりやすいです。大きく上げるときは良くても、ダメだったら下げるということが難しいです。
そこで、責任と給与を連動させるためには、ポストから外れたら支給を止めることができる役職手当という形で行う方が良いのです。
当然、むやみにポストから外したりすれば、使用者の権利濫用ということで問題になりますが、そのポストに求められる責任を果たすことができないために別の社員が代わることに対し、ある程度合理的な理由があれば、ポストを外し、役職手当も外すことができます。
このような制度にしておけば、責任と給与水準を連動させることができます。
責任の重さと連動して給与が決まっていることが明確になれば、社員の間でも納得感が高まります。
あとは、ポストを外れることは退職勧奨ではなく、実力をつければ何度でもチャレンジできるという仕組みや風土づくりが重要です。一度ポストに就いて失敗したら退職するしかないとなると、誰もポストに就きたくなくなるからです。
実力とやる気がある社員がどんどんチャレンジできる一方で、失敗したら処遇も下がる。でも実力をつければ何度でもチャレンジできる仕組みや風土をつくることができたら、社内は活性化し、会社の発展へとつながるはずです。
そのために、役職手当を上手く活用してはいかがでしょうか。
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