評価制度の評価項目と職の資格制度の能力要件の違い(No.1)
評価制度での評価項目と職能資格制度での能力要件は原則同じものです。
しかし、実は似て非なる部分があります。
どちらも会社が求める人材像を表しているものなので違うはずがありません。
例えば、能力要件(能力要件表)に「課題対応力」といった要件(能力)が
整理されていれば、評価項目(評価基準書)にも「課題対応力」といった
評価項目(能力)があってしかるべきです。
もちろん、項目名称を変えたり内容の一部を変えたりする場合はあるでしょう
が、基本的には同じはずです。
しかし、実は似て非なる部分があります。以下の3つです。
①何を評価するか?~発揮能力と保有能力について
人事評価は、担当業務を実際に遂行した際のその成果・行動・マインドなどを
評価するものです。従って、「事実として行った仕事ぶりそのもの(発揮能力)
を評価する」ものです。
それに対して能力要件は、あくまでも保有してほしい能力のレベルを段階的に
整理したものであり、「現在どの程度能力を習得しているかを評価(判定)
する」ものです。従って、能力の保有レベル(保有能力)を表します。
②何に反映させるか?~昇給・賞与・昇格など
人事評価は、主として、「昇給・賞与の判定基準」となります。
加えて、昇格時の判定基準の一部にもなります。
それに対して能力要件は、主として「昇格」の判定基準となります。
③評価対象期間は?~ある期間、ある時点
人事評価は「評価対象期間」があります。あくまでもその期間内での仕事ぶり
を評価項目に基づいて評価します。
それに対して能力要件は、「ある時点」での能力の保有状態を判定するもの
です。期間を設定して、その対象とする期間の全体あるいは平均で判定する
ものではありません。
ちなみにこれは、決算書(P/L、B/S)の期間設定と同じ考え方です。
P/Lは、「一年間といった期間」で企業活動が利益を生んだのか損失を生ん
だのかを表しています。これは、人事評価も同様です。
B/Sは「年度末の最終日の時点」での資産・負債・資本の状態を表している
ものです。これは、能力要件、すなわち昇格も同様です。
ちなみに、「昇格」と「昇進」は違います。多くの方が混同して運用されて
います。
例えば、「あなたは課長の能力があるから課長に任用します」ではなく
「5等級の能力要件を保有しているあなたに課長の役割・責任・権限を付与
します」が正しい使い方なのです。
役職は能力ではありません。あくまでも役割・責任・権限なのです。
一方で、能力(すなわち等級)が処遇のモノサシになるのです。
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山藤 茂(サントウ シゲル) 経営支援部 取締役
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